2006年1月14日土曜日

キャブレターとチョーク

最近のモーターバイクはオートチョークになっていて,自分でレバーを操作するということはないようだ.
自分の GB250XJR1300とも,チョークレバーがあり,モーター始動でレバーを引く.

choke とは「ふさぐ」という意味.
ふさぐと空気が流れなくなってモーターが止まる.正確に言うと,chokeバルブには小さな穴が開いていて,全閉でもちょっとだけ空気が流れる.
スロットルバルブも混合気の流れをバルブの開閉で調節している.完全にふさいでもアイドリングするくらいに隙間が空いている.
チョークとスロットル,両者の違いを理解するには,キャブレターの原理を知らねばならぬ.

キャブレターは空気の中にガソリンを霧状に混合する.

原理は「2個のりんごを数ミリの隙間になるよう糸で吊り下げ,隙間に息を吹きかけるとりんごは隙間に吸い寄せられる」というベルヌーイの定理.>旧車レストア

つまり流速が増すと気圧が下がる(負圧という).そして,流速が高いところに横から管を差し込むと,負圧で管から空気が吸い出される.管のもう一方の端を液体をつけると液体が吸いだされ,流速の速いところで霧状になる.

空気中とガソリンが混ざった混合気がモーターで燃焼するのだが,モーターの出力をコントロールするためにその流量を調整するのがスロットルバルブである.これは混合した場所とモーターの間に存在し,バルブを開閉して混合気そのものの流量を調整する.ガソリンの混合比はアクセルの開閉によって変わらない.
ただし,急にアクセルを開けると流速が落ちるため負圧が下がり,混合比が薄くなるのを防ぐために,アクセルの動きが大きいときだけガソリンを強制噴射する加速ポンプというものはあるが,スロットルバルブは混合した後でその流量を調整するから,スロットルで混合比が変わることはない.

チョークは,スロットルとバルブのついている位置が異なる.

気温が低いと,霧状のガソリンの霧粒がなかなか蒸発せず,うまく空気と混合しない.
ということはたくさんガソリンを送り込めば,液体のままのガソリンも増えるが,蒸発量も増える.つまり寒い朝は混合比を上げればよいわけだ.
混合比を一時的に上げるのがチョークで,そのバルブは混合する前,空気の入り口に取り付ける.
空気の入り口をふさげば,その分たくさんのガソリンが強制的に吸いだされ,混合比が上がる.
さらにアイドリングが低いと寒い日は回転が安定しないので,チョークレバーはスロットルにも連動して,アイドリングの回転数が上がるようにできている場合が多い.

とまぁこれが原理だが,厳密にいうとスタータプランジャといってチョークではない.でもそれはキャブレターに別経路の濃い燃料を送る機構で,昔の自動車のチョークと同じ働きをするので,今でもチョークと呼ばれている.

現在本当に経路をふさぐ「チョーク」が使われるのは,チェーンソーや草刈機などの簡単なモーターである.
これは,スロットルとは連動していない.とても簡単な構造でエアクリーナーのところにレバーがついていて,弁が直結しているだけである.
ということは,スロットルは自分でちょっとだけ開けなければならず,かなりコツが必要.>チェーンソー

チョークをふさいでスロットルを全開だと,大量にガソリンが吸いだされ,プラグを濡らし火花が飛ばなくなってしまうのだ.いわゆる「吸い過ぎ」というやつ.そうなるとプラグをはずし,乾燥させなければならなくなる.
自分は,チョークもアクセルも全開にして何度もスターターグリップを引き,乾燥させる.汗だくになる.

また,モーターが暖まったのにチョークを戻し忘れると,混合気が濃いままとなり,燃え残りのガソリンがススとなる.それがプラグに付着すると,炭素は電気を通すので,これまた火花が飛ばなくなる.いわゆる「モーターがかぶる」という状況.こうなると,プラグ清掃が必要となる.
そこまで行かなくても,戻し忘れていると「あれ?回転が伸びない・・・?」となる.空気をふさいでいるのだから当然だ.年に数回,戻し忘れたチョークをあわてて戻すことがある.そのときはプラグを焼いてススを飛ばすためモーターを高回転で回す.
高速道路を走るとモーターの調子がよくなることがあることがあるのはこういうことらしい.

こうした面倒な作業を一気に解決するのが,オートチョーク.(実際はスタータプランジャ)
寒い日はいつでもチョークを操作するなら,温度センサーをつけてモーターの温度を監視すればいいだけのことである.
そして,温まれば勝手にチョークが戻る.

オートチョークでは勝手にモーター回転数が上がるので,オートマチック車に使うと始動直後Dレンジだとどんどん走ってしまう.したがって四輪車ではPかNレンジじゃないとモーターが始動しない.昔,Dでもモーターが始動できて,オートチョークのために急発進して死者が出たことを覚えている.
自動化するということはそれだけ,人間の介入が無くなり,厳しい安全性が求められるわけだ.

最近の四輪車ではキャブレターは使わない.コンピュータ制御の燃料噴射であるから,寒くてモーターの回転が高くなることはなくなった.
モーターバイクのATは,車で言えば常にDレンジだから,寒い朝はオートチョークで動いてしまう.

自動化(便利さ)と安全,ハイテク旅客機の人間と機械の難しい問題をも思い出す.

4 件のコメント:

  1. スロットルとキャブについてはなんとなく知っていたんですが、チョークと併せて今回理解することができました。
    そういうことだったんですね。ありがとうございます。

    今日、路地からでてきた車をよけようとして、急ブレーキ。
    ロック起こしました。
    「やべ、死んだ!!」って思いましたが、なんとか、こけずにすみました。
    一瞬ふんばった右のつま先が、いまも痛いです…。

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  2. ロックしてよく大丈夫でしたね.怪我が無くて何より.
    左から何が出てくるかわからないので,私はつねにセンターライン寄りを走ります.原付はそれができないからつらいですよね.
    私はこけそうなときは,踏ん張りません.そのままバイクだけ転倒させて,自分だけ助かります.

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  3. 前輪がディスクで後輪がドラムブレーキなんです。
    前輪はロックしてなかったんすかねぇ。
    ほんと、こけなかったのが不思議です。

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  4. 前輪がロックしても,必ずこけるわけではないです.車体が立っていればこけません.
    よく考えたら,自分も白線の上とかで年に数回,前輪ロックします.すぐにブレーキ緩めれば大丈夫ですね.
    カーブではダメですが.
    以前,テレビで白バイ隊員の,時速100キロからの前後輪ロック停止を見たことがあります.完全にホイールが止まったまま,アスファルトにタイヤ痕をつけながら滑ってました.すごい.

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