2006年1月10日火曜日

ジェットとプロペラ

ジェットとプロペラが推力を得るの原理はまったく違う.

最近のプロペラは,タービンで回している(ターボプロップ)ので,回転力はジェットエンジンの回転力を使っているわけだし,旅客機のジェットエンジンは巨大なファンを回して,燃焼ガスだけでなく空気の噴射も推進力にしているので,プロペラとジェットの違いがわかりづらい.
わかりづらいが,原理はまったく違う.

プロペラは,それが空気を切るときに発生する進行方向への「揚力」が推力になる.
つまりプロペラでも後方への空気の流れはできるが,その反動で進むわけではない.空気を切った瞬間に,プロペラが空気から受ける力が推力になる.
そういう意味では,プロペラ機の空気の流れは,空気をかき回すだけで,エネルギーが無駄になっているといえる.(かといって,プロペラ機程度の低速運行をジェットだけで実現するのも効率が悪いのではあるが)


ターボファンジェットもコンプレッサーのブレードで空気を切るが,そのときに羽根が受ける力を利用するというよりも,その名の通り「空気圧縮」が主な仕事.
ファンの回転数もプロペラと大差ない.
たとえば,GE90-115B エンジンのファンを回す低圧系回転数は2,602rpmと,プロペラと大差ない.

回転数こそプロペラ機と大差なくても,あれだけの枚数のブレードで空気を切るには大変なパワーが必要.
そして空気は圧縮され,細く絞った噴出口から噴射して,流速は軽く音速を超え,その反動で推進するのがジェット.
たとえば,1000kgの質量を300m/秒で投げた運動量は 1000×300=300,000kg・mである.それを300,000kgの機体から投げたなら運動量保存則から,機体が300,000÷300,000=1m/秒で動くことになる.
ジェットは,大質量の空気や排気ガスを連続的に噴射(加速)して,その反動を得るのである.

たくさんのブレードとそれを回す強力なタービン,そして出口を絞って流速を増す.これがジェット.
羽根で空気を切るだけで推力を得るプロペラとはまったく原理が違うことがわかる.

2 件のコメント:

  1. プロペラの話に目からウロコです。
    だからプロペラは断面形が大事なんすね。
    てっきり、押し出す空気の反動で進むもんだとばかり思ってました。
    うすうすおかしいとは思ってたんすよ。そんなんで600キロとかだせるんかいなって。

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  2. そうそう,自分自身が効率よく力を受けなければいけないプロペラの断面は翼と同じなんですよね.
    力を受けるより,空気の流れを作り出す目的のファンの断面は板と同じです.

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