$\large\frac{e^x-e^{-x}}{2}$,$\large\frac{e^x+e^{-x}}{2}$,$\large\frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}$をそれぞれ双曲正弦(hyperbolic sine)関数$\sinh$,双曲余弦(hyperbolic cosine)関数$\cosh$,双曲正接(hyperbolic tangent)関数$\tanh$として定義されていて,windows の電卓(表示(V)→関数電卓(S))で,□Hypにチェックを入れてから「sin」などのボタンを押せば値が計算されるようになっている.
まぁ定義だから「覚えてしまえばいい」わけだが.>wikipedia
単独の$\cosh$は「カテナリー曲線」といって,電線のたるみの曲線で有名でもある(高校の数学IIIにも出てくる).>wikipedia
でもなんでまた,$\large\frac{e^x-e^{-x}}{2}$のような指数関数の組み合わせに,三角関数の名前がついたかという歴史的な経緯の考察.
ここにまたオイラーの公式が出てくる.つまり複素数である.オイラーは偉大だ.
複素数の値を計算して,複素数が出てくる関数,つまり複素関数を考える.大学1年後期レベルかな.
$z=x+yi$,$w=u+vi$に対して,$"w=f(z)$つまり$u+vi=f(x+yi)$となる関数である.
たとえば,$w=\frac{1}{z}$などという関数である.
これは高校レベルの計算で簡単に性質が突き止められ,この関数によって,$z$平面の直線$z=x+i$(つまり直線$y=1$)が$w$平面の円に写ることがわかる.
実際,高校の数学IIやBレベルの計算で
$w=\frac{1}{z}=\frac{1}{x+i}=\frac{x-i}{(x+i)(x-i)}=\frac{x-i}{x^2+1}=\frac{x}{x^2+1}+\frac{-1}{x^2+1}i$
となるので,$w=u+vi$と対応させると
$u=\frac{x}{x^2+1}$,$v=\frac{-1}{x^2+1}$
この式から$x$を消去する.
$u=\frac{x}{x^2+1}=\frac{-1}{x^2+1}(-x)=-vx$
両辺2乗し
$u^2=v^2x^2$
$x^2+1=\frac{-1}{v}$より$x^2=\frac{-1}{v}-1$を代入して,
$u^2=v^2\left(\frac{-1}{v}-1\right)$
$u^2=-v-v^2$
$u^2+v^2+v=0$
これは円である.平方完成して,
$u^2+v^2+v+\frac{1}{4}=\frac{1}{4}$
$u^2+(v+\frac{1}{2})=\frac{1}{4}$
より中心$(0,-\frac{1}{2})=-\frac{1}{2}i$半径$\frac{1}{2}$とわかる.
この式変形は実は数学Bの複素平面の図形の知識を使えば,もっと簡単.
つまり,直線$z=x+i$は2点$2i$から等距離にある図形なので,
$|z|=|z-2i|$
と書ける.$w=\frac{1}{z}$より$z=\frac{1}{w}$と置き換えれば,
$|\frac{1}{w}|=|\frac{1}{w}-2i|$
$\frac{1}{|w|}=\frac{|1-2iw|}{|w|}$
$1=|1-2iw|$
$|2iw-1|=1$
$\frac{|2iw-1|}{|2i|}=\frac{1}{|2i|}$
$|\frac{2iw-1}{2i}|=\frac{1}{2}$
$|w-\frac{1}{2i}|=\frac{1}{2}$
$|w+\frac{1}{2}i|=\frac{1}{2}$
より$w$の表す図形は点$\frac{-1}{2}i$からの距離が$\frac{1}{2}$である図形.つまり円であることがわかる.
さて,この直線$z=a+iy$(つまり$x$軸に垂直な直線$x=a$)を三角関数で写すと,双曲線や楕円になるのである.(ちなみに指数関数では円や直線)
$w=\sin z$
という関数で直線を写してみる.
複素数の三角関数はオイラーの公式を頼りに式変形する.
オイラーの公式:$e^{ix}=\cos x+i\sin x$
公式の$x$を複素数$z$と$-z$で置き換えた式を作る.
$e^{iz}=\cos z+i\sin z$
$e^{-iz}=\cos(-z)+i\sin(-z)$
$\sin(-\theta)=-\sin\theta$,$\cos(-\theta)=\cos\theta$なので,
$e^{iz}=\cos z+i\sin z$ ……(1)
$e^{-iz}=\cos z-i\sin z$ ……(2)
(1)+(2),(1)-(2)で,$\cos z$,$\sin z$が残る.
(1)-(2)より
$e^{iz}-e^{-iz}=2i\sin z$
$\sin z=\large\frac{e^{iz}-e^{-iz}}{2i}$
$\sin z=\large\frac{-e^{iz}+e^{-iz}}{2}i$
これでx軸に垂直な直線$x=a$つまり,任意のyのとき直線$z=a+iy$がどう写るか.$iz=i(a+iy)=ai-y$を代入して,
$\sin z=\large\frac{-e^{ai-y}+e^{-ai+y}}{2}i$
$\sin z=\large\frac{-e^{ai}e^{-y}+e^{-ai}e^y}{2}i$
定数を計算する.
$e^{ai}=\cos a+i\sin a$,$e^{-ai}=\cos(-a)+i\sin(-a)=\cos a-i\sin a$
ここで計算を簡単にするために定数$a=\frac{\pi}{4}$とする(つまり直線x=a)と,
$e^{ai}=e^{\frac{\pi}{4}i}=\cos\frac{\pi}{4}+i\sin\frac{\pi}{4}=\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i=\frac{1}{\sqrt{2}}(1+i)$
$e^{-ai}=e^{-\frac{\pi}{4}i}=\cos\frac{\pi}{4}-i\sin\frac{\pi}{4}=\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i=\frac{1}{\sqrt{2}}(1-i)$
よって,
$\sin z=\large\frac{-\frac{1}{\sqrt{2}}(1+i)e^{-y}+\frac{1}{\sqrt{2}}(1-i)e^y}{2}i=\normalsize\frac{1}{2\sqrt{2}}(-(1+i)e^{-y}+(1-i)e^y)i$
これを実部と虚部に分ける.
$\sin z=\frac{1}{2\sqrt{2}}(-(i-1)e^{-y}+(i+1)e^y)$
$\sin z=\frac{1}{2\sqrt{2}}(e^y+e^{-y})+i\frac{1}{2\sqrt{2}}(e^y-e^{-y})$
つまり$w=u+vi$と対応させれば,
$u=\frac{1}{2\sqrt{2}}(e^y+e^{-y})$,$v=\frac{1}{2\sqrt{2}}(e^y-e^{-y})$
となる.$y$を消去する.
$u^2=\frac{1}{8}(e^{2y}+2e^ye^{-y}+e^{-2y})=\frac{1}{8}(e^{2y}+e^{-2y}+2)$
$v^2=\frac{1}{8}(e^{2y}-2e^ye^{-y}+e^{-2y})=\frac{1}{8}(e^{2y}+e^{-2y}-2)$
より,
$e^{2y}+e^{-2y}=8u^2-2=8v^2+2$
$8u^2-8v^2=4$
$2u^2-2v^2=1$
これは双曲線(高校の数学C)である.
そして,この双曲線の$\sin\frac{\pi}{4}$などに由来する定数を除いた横軸のパラメータを表す,$\large\frac{e^y+e^{-y}}{2}$を双曲余弦関数$\cosh$,縦軸の$\large\frac{e^y-e^{-y}}{2}$を双曲正弦関数$\sinh$と名づけたのだろう.
ちなみに$\sin z$に$y$軸に垂直な直線$x+ai$などを食わせると,楕円になる.そのかわり$\cos z$の方が双曲線になる.
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