2008年11月27日木曜日

卵焼きの失敗と,2円の重なり部分の面積

右手はまだいろいろ不自由である.

とりあえず,手術してからは重いものも持てる様になったが,大根を切るのに力が入らない.刃を立てたら左手で上から押さなければならないのである.

先週の入院前,右手はまったく使えないので,卵焼きを返すのに,左手でやってみた.
そうしたら,失敗して半分ぐらいがフライパンから落ちてしまったorz

退院後は右手でできる.
大根は切れないが,フライ返しは問題ない.

ここで疑問.
円形の卵焼きの半分とは,どのように切り取った大きさだろうか.

もちろん,直径で切れば面積が半分になるが,フライパンから外れたのであるから,円で切り取っている.
直径の半分の位置で切り取った場合は,39.1%しか切り取らないから,もう少し覆わないと,半分を切り取れない.
直径の半分だけ覆う
ここでは簡単のために,卵焼きの直径とフライパンの直径は同じとしている.

簡単に言うと,皆既日食のときに,月が太陽の半分の面積を覆うときの月の位置は,円の直径のどれくらいずれたときだろうかということである.

計算したら,直径の59.6%程度(約6割)覆えば,面積が半分になることがわかった.
直径の6割を覆う

これらの計算は,数値積分のできるソフトで計算した.
原点が中心の単位円(半径1)の方程式は,$x^2+y^2=1$より円の上半分は,
$y=\sqrt{1-x^2}$
である.
円の上半分
これとx軸に囲まれた部分の面積は,
$\int_{-1}^{1}\sqrt{1-x^2}\,dx$
より,円の面積はその2倍の
$2\int_{-1}^{1}\sqrt{1-x^2}\,dx=\pi$
となる.

単位円の重なり部分の長さを a とすれば,(0<a<2)
重なり
重なった部分の面積の半分は,
重なり
先ほどの積分の $1-\frac{a}{2}$ から 1 までの積分
$2\int_{1-\frac{a}{2}}^{1}\sqrt{1-x^2}\,dx$
となり,重なり部分の面積はさらに2倍の
$4\int_{1-\frac{a}{2}}^{1}\sqrt{1-x^2}\,dx$
となる.これと円の面積π=3.14159 との比が 0.5 に近いところを探ったのである.

この部分の面積は,円の関数の不定積分で,それは逆三角関数などを用いてあらわされる.
$\int\sqrt{1-x^2}dx$
において,$x=\sin t$ とすれば,$dx=\cos t\,dt$ であり,$\sqrt{1-x^2}=\sqrt{1-\sin^2 t}=\sqrt{\cos^2 t}=\cos t$ より,
$ =\int\cos^2 t\, dt \\ =\int\frac{1+\cos 2t}{2}\, dt \\ =\frac{1}{2}\int(1+\cos 2t)\, dt \\ =\frac{1}{2}(t+\frac{1}{2}\sin 2t) \\ =\frac{1}{2}(t+\frac{1}{2}2\sin t\, \cos t) \\ =\frac{1}{2}(t+\sin t\, \cos t) \\ =\frac{1}{2}(\arcsin x + x\sqrt{1-x^2})$
より,求める面積は
$ =2\left(\arcsin 1 + 1\sqrt{1-1^2}\right) - 2\left(\arcsin(1-\frac{a}{2}) + (1-\frac{a}{2})\sqrt{1-(1-\frac{a}{2})^2}\right) \\ =2\left(\frac{\pi}{2}\right) - 2\left(\arcsin(1-\frac{a}{2}) + (1-\frac{a}{2})\sqrt{1-(1-\frac{a}{2})^2}\right) \\ =\pi - 2\arcsin(1-\frac{a}{2}) - \left(1-\frac{a}{2}\right)\sqrt{(4-a)a}\\ =2(\frac{\pi}{2} - \arcsin(1-\frac{a}{2})) - \left(1-\frac{a}{2}\right)\sqrt{(4-a)a}\\ =2\arccos(1-\frac{a}{2}) - \left(1-\frac{a}{2}\right)\sqrt{(4-a)a}\\$

これは次のように積分を使わずに求められる.

初等的
まず単位円の扇形の中心角が$\theta$のとき,扇形の面積は$\frac{1}{2}\theta$である.

たとえば,単位円(面積π)を4等分した90度=π/2 の扇形の面積はπ/4である.単位円を12等分した30度=π/6 の扇形の面積はπ/12である.このように単位円では,扇形の面積は常に「角の半分」である.

さて,重なった部分の面積は扇形から,三角形OABの面積を引いたものの2倍となる.
三角形OABの底辺をOA,高さをOCと考える.
高さOCは半径1から重なりの長さ a/2 を引けばいいので,
$\mathrm{OC}=1-\frac{a}{2}$
であるから,底辺の半分ACは三平方の定理で
$\mathrm{AC}=\sqrt{1^2-\left(1-\frac{a}{2}\right)^2}=\frac{1}{2}\sqrt{(4-a)a}$
より底辺の長さは
$\mathrm{AB}=\sqrt{(4-a)a}$
となり,三角形OABの面積は
$\frac{1}{2}\left(1-\frac{a}{2}\right)\sqrt{(4-a)a}$

扇形の面積は$\frac{1}{2}\theta$であるが,このθをa の逆三角関数で表す.
三角形OACについて,角AOC はθ/2 であるから,
$\cos\frac{\theta}{2}=\frac{\mathrm{OC}}{\mathrm{OA}}$
ここで,OA=半径=1,$\mathrm{OC}=1-\frac{a}{2}$より,
$\cos\frac{\theta}{2}=1-\frac{a}{2}$
したがって,
$\frac{\theta}{2}=\arccos\left(1-\frac{a}{2}\right)$
よって,扇形の面積は,
$\frac{1}{2}\theta=\arccos\left(1-\frac{a}{2}\right)$

これから三角形の面積を引いたものは,
$\arccos\left(1-\frac{a}{2}\right)-\frac{1}{2}\left(1-\frac{a}{2}\right)\sqrt{(4-a)a}$
これは2円の重なり部分の半分であったから,重なり部分の面積は,
$2\arccos\left(1-\frac{a}{2}\right)-\left(1-\frac{a}{2}\right)\sqrt{(4-a)a}$

たとえば,重なり部分の長さが,半径と同じ 1 のとき,重なる面積は,
$2\arccos\left(1-\frac{1}{2}\right)-\left(1-\frac{1}{2}\right)\sqrt{(4-1)1}$
で,これは1.2283697となる.>google電卓
これは円の面積π=3.14159 の0.391002219倍,つまり39.1%となることがわかる.>google電卓

重なる部分が円の面積の半分になるのは,重なる長さが,1.192054493(直径の59.6%)のときである.>google電卓

この位置で,卵焼きを受け止めてしまったのだ・・・

積分の記事

3 件のコメント:

  1. 卵焼きの失敗でここまで書けるのはやはり数学の先生ならではですにゃん

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  2. あ、名前忘れた!
    と言っても多分ログと字の色でわかっていると思いますが (^^ゞ

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  3. 授業でも話しました.
    「左手で卵焼きしたら,失敗してさぁ・・・」

    >ログと字の色でわかっていると思いますが
    いえ,はじめに語尾でわかりましたw

    返信削除

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