数学Bの数列をはじめのところ,教科書に
-1,1,-1,-1,・・・
と繰り返す数列が出ていた.
一般項は $(-1)^n$
これを使えば,2個ずつ繰り返す数列を表すことができる.
3,4,3,4,3,4,3,4,・・・
は
3.5-0.5,
3.5+0.5,
3.5-0.5,
3.5+0.5,
の繰り返しと考えることにより,一般項は
$3.5+(-1)^n\times0.5$
といえる.
こんなことを授業でやっているとき,
「3つの繰り返しの式も,面倒だけどできるよ.」
なんていう話もした.もちろん,数列のはじまりの授業でさらっと扱える内容ではない.
たとえば,
1,2,3,1,2,3,・・・
といったもの.
理屈は知っていたが,実際に求めてみたことはなかったので,作ってみた.
とりあえず,三角関数を使って,くるくる回すのが簡単.1周を3等分した角をn倍してやる数列
$\left\{\sin\frac{2\pi}{3}n\right\}$
が基本になる.
$\frac{\sqrt{3}}{2},\ -\frac{\sqrt{3}}{2},\ 0,\frac{\sqrt{3}}{2},\ -\frac{\sqrt{3}}{2},\ 0,\ \cdots$
これを$\frac{2}{\sqrt{3}}$倍した数列
$\left\{\frac{2}{\sqrt{3}}\sin\frac{2\pi}{3}n\right\}$
は,
1, -1, 0, 1, -1, 0, ・・・
これに2を足した数列
$\left\{2+\frac{2}{\sqrt{3}}\sin\frac{2\pi}{3}n\right\}$
は,
3, 1, 2, 3, 1, 2, ・・・
1からはじめるには,番号をずらせばよいから,
$2+\frac{2}{\sqrt{3}}\sin\frac{2\pi}{3}(n+1)$
とすれば,
1, 2, 3, 1, 2, 3, ・・・
という数列となる.
三角関数を使わなければ,1の原始3乗根を使うのがよい.
1の原始3乗根は $x^3=1$の解で,
$x^3-1=0$
$(x-1)(x^2+x+1)=0$
$x-1=0,\ x^2+x+1=0$
$x=1,\ x=\frac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$
より,
$\omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$
とすれば,
$\omega^2=\left(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^2=\frac{1-2\sqrt{3}i+3i^2}{4}=\frac{1-2\sqrt{3}i+3(-1)}{4}=\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}$
$\omega^3=\omega\omega^2=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\times\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}=\frac{1-3i^2}{4}=\frac{1-3(-1)}{4}=1$
$\omega^4=\omega^3\omega=1\omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$
$\omega^5=\omega^3\omega^2=1\omega^2=\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}$
$\omega^6=\omega^3\omega^3=1\times 1=1$
なので,$\left\{\omega^n\right\}$は
$\omega,\ \omega^2,\ 1,\ \omega,\ \omega^2,\ 1,\ \cdots$
と3つの繰り返しになる.
ということで,1の原始3乗根を解に持つ2次方程式$x^2+x+1=0$が特性方程式となる漸化式の数列を基本にするのがよい.
これを特性方程式にもつ3項間漸化式は,$x^2=-x-1$より,
$a_{n+2}=-a_{n+1}-a_{n}$
である.
$a_{1}=0,\ a_{2}=1$とすれば,
$a_{3}=-a_{2}-a_{1}=-1-0=-1$
$a_{4}=-a_{3}-a_{2}=-(-1)-1=0$
$a_{5}=-a_{4}-a_{3}=-0-(-1)=1$
$a_{6}=-a_{5}-a_{4}=-1-0=-1$
つまり,
0, 1, -1, 0, 1, -1, ・・・
と繰り返す数列ができあがる.これの一般項に2足せば2,3,1,2,3,1となるから,
$a_{1}=0,\ a_{2}=1,\ a_{n+2}=-a_{n+1}-a_{n}$
で定義された数列の一般項を求める.
数列を変形して,
$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_{n})$
としたときの,$\alpha,\ \beta$を求める.
展開すると,
$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta a_{n+1}-\alpha\beta a_{n}$
$a_{n+2}=\alpha a_{n+1}+\beta a_{n+1}-\alpha\beta a_{n}$
$a_{n+2}=(\alpha +\beta)a_{n+1}-\alpha\beta a_{n}$
もとの漸化式と係数を比較すると,
$\alpha +\beta=-1,\ \alpha\beta=1$
であればよい.$\beta=-\alpha -1$を$\alpha\beta=1$に代入して,
$\alpha(-\alpha -1)=1$
$-\alpha^2-\alpha=1$
$\alpha^2+\alpha+1=0$
よって,
$\alpha=\frac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$
ここで,
$\alpha=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$
とすれば,
$\beta=-\alpha -1=-\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}-1=\frac{1-\sqrt{3}i-2}{2}=\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}$
であり,$\alpha,\ \beta$は対称で交換可能であるから,
$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_{n})$
は
$a_{n+2}-\beta a_{n+1}=\alpha(a_{n+1}-\beta a_{n})$
でもある.
ここで,$b_{n}=a_{n+1}-\alpha a_{n}$とおけば,
$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_{n})$
は
$b_{n+1}=\beta b_{n}$
ということだから,$\{b_{n}\}$は公比$\beta=\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}$の等比数列で,初項が
$b_{1}=a_{2}-\alpha a_{1}=1-\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\times0=1$
だから,一般項は,
$b_{n}=a_{n+1}-\alpha a_{n}=\beta^{n-1}=\left(\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)^{n-1}$
となる.
同様に数列
$\{a_{n+1}-\beta a_{n}\}$
は,公比$\alpha=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$の等比数列で,初項が
$a_{2}-\beta a_{1}=1-\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\times0=1$
だから,一般項は,
$a_{n+1}-\beta a_{n}=\alpha^{n-1}=\left(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^{n-1}$
となる.
つまり,2つの漸化式
$a_{n+1}-\beta a_{n}=\alpha^{n-1}$
$a_{n+1}-\alpha a_{n}=\beta^{n-1}$
ができたが,これらの辺々を引くことにより,$a_{n+1}$が消去され,
$(\alpha-\beta)a_{n}=\alpha^{n-1}-\beta^{n-1}$
より,一般項
$a_{n}=\frac{\alpha^{n-1}-\beta^{n-1}}{\alpha-\beta}$
を得る.
$\alpha-\beta=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}-\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}=\sqrt{3}i$よりこの数列の一般項は
$a_{n}=\frac{\left(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^{n-1}-\left(\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)^{n-1}}{\sqrt{3}i}$
で,これは
0, 1, -1, 0, 1, -1, ・・・
だったので,これに2を加えた数列
$\left\{2+\frac{\left(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^{n-1}-\left(\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)^{n-1}}{\sqrt{3}i}\right\}$
は
2, 3, 1, 2, 3, 1, ・・・
これを
1, 2, 3, 1, 2, 3, ・・・
にするには,番号を2個ずらせばよいから,
$\left\{2+\frac{\left(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^{n+1}-\left(\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)^{n+1}}{\sqrt{3}i}\right\}$
が
1, 2, 3, 1, 2, 3, ・・・
の一般項となる.
検算してみる.(別窓にgoogle電卓が開きます.)
n=1 2+(((-1+i√3)/2)^(1+1)-((-1-i√3)/2)^(1+1))/(i√3)
n=2 2+(((-1+i√3)/2)^(2+1)-((-1-i√3)/2)^(2+1))/(i√3)
n=3 2+(((-1+i√3)/2)^(3+1)-((-1-i√3)/2)^(3+1))/(i√3)
n=4 2+(((-1+i√3)/2)^(4+1)-((-1-i√3)/2)^(4+1))/(i√3)
n=5 2+(((-1+i√3)/2)^(5+1)-((-1-i√3)/2)^(5+1))/(i√3)
n=6 2+(((-1+i√3)/2)^(6+1)-((-1-i√3)/2)^(6+1))/(i√3)
>つづく
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