2004年9月6日月曜日

二輪と四輪の速さ

公道の信号ダッシュでは四輪車に比べ二輪車の速さは圧倒的である.
私の XJR も240kg の車体に控えめな100馬力のモーター.
それでも100km/h まで3秒 らしい.暴力的な加速である.私はまだ一度もフルスロットルにしたことがないし,6000回転以上回したことがない.
100馬力のモーターを積む四輪車の重さは普通1トン程度である.
ポルシェだって,1トン程度で300馬力.私の単車よりパワー重量比は小さい.
国外仕様のリッター二輪は170kgの車体で170馬力である.

しかし,二輪車はカーブでは四輪車より遅い.
どんなにモーターの性能を上げても,タイヤの性能を上げてもである.

鈴鹿サーキット
2輪  ロッシの予選タイム   2'04.226
4輪  トゥルーリの予選タイム 1'30.281
30秒以上ちがう.勝負にならない.


理由は,自分で単車に乗ると良くわかる.
車のようにタイヤの限界までスピードが出せないのである.
タイヤの限界に達する前に,バンク角の限界に達してしまう.
そう,単車のウィークポイントは「バンク角」である.

二輪車(正確には接地中心から,車体+人体の重心を結んだ直線)を45度バンクさせているときのコーナリングフォースは 1G.
60度で√3=1.73G

45度にバンクした,1G旋回だと,どれくらいの速さでカーブを曲がれるかを計算してみる.
速さv[m/sec]=3.6v[km/h] で,半径r[m]を旋回するときの加速度(遠心力)がどうなるか.
角速度ω[rad/sec]のとき,v=rω だから,角速度は ω=v/r.
このとき加速度は rω^2 .
1Gの加速度は 9.8[m/sec^2],これを時速100キロでコーナリングしているなら,100[km/h]=27.78[m/sec]
rω^2=9.8
rω=27.78
この連立方程式を解くと,
r=78.7352[m],ω=0.3528[rad/sec]
つまり,バンク角45度なら時速100キロの回転半径は79m以上となる.

同じように60度まで倒せたら,回転半径46m以上なら,時速100キロで旋回できる.

逆に,半径100m の円周上を走る速さは
バンク角30度は 0.5G 旋回で,22.1359m/sec = 79.6894km/h

バンク角45度は 1G 旋回で,31.305m/sec = 112.698km/h

バンク角60度は 1.73G 旋回で,41.1996m/sec = 148.319km/h

となる.

レーサーはコーナーの内側に体を落とす体制をとり,「車体+人体」の重心のバンク角が,車体の最大のバンク角より大きくなるようにして,コーナリングフォース(バンク角)稼ぐ.
最大バンク角60度の車体で,さらに体を内に入れて,実質バンク角61度になれば1.8Gの旋回が出来る.
しかし,コーナリング中はコーナリングフォースで車体が沈み,タイヤがつぶれるので,最大バンク角は停止時より浅くなるのが普通であるが.

F1のコーナリングフォース(横G)は最大で5G程度だそうである.

ウィングのおかげで,車体が路面に押し付けられ,ヘアピンの最大横Gより,高速コーナーのほうがコーナリングフォースが大きい.
5Gを二輪車で発生させるにはバンク角79.6度である.(ありえん)

半径100m の円周上を走る速さは
バンク角79.6度は 5G 旋回で,70.0m/sec = 252.0 km/h
これじゃ,鈴鹿のラップが30秒以上違うのうなずける.
峠では,二輪車で四輪車を負かすことは絶対にできない.

二輪で言えば,四輪ははじめから90度バンクしている状態で走っているようなものだ.
つまりタイヤの性能が物を言う.タイヤの限界ぎりぎりで走行できるかどうかが勝負である.
二輪はタイヤの限界に達するはるか手前で,バンク角の限界に達する.
つまり,タイヤやモーターの性能をいくら上げても,コーナーは速くならない.
二輪車でタイヤとモーターの性能を上げるのは,直線の加減速性能向上のためといえる.
Street FX Motorsport & Graphics (Movie)

コーナーを「壁面」にでもすれば,二輪も90度までバンクさせられるので,コーナリングフォースはいくらでも上げられるが,四輪でも同じこと.

つまり二輪車はコーナーの立ち上がりの圧倒的な直線加速(軽さとモーター性能)だけでしか四輪を置き去りに出来ないということになる.

さらに,直線加速でも,トップクラスの車ではタイヤ4つ(実際は動輪2つ)の方が,効率的に動力を路面に伝達できるので速い.
直線の加速競争,1/4マイルドラッグスプリントでも二輪より四輪のほうが速いのだ.


私は,制限速度は遵守しているので,二輪でも四輪でも,峠道で後ろにつかれたら,すぐにその場で停めて休憩をとることにしているが.
ワインディングは,コーナーをゆったりパスするごとに,右へ左へ大きく広がる景色を楽しむために走る.御殿場ではカーブを曲がるたびにど~~~んと眼前にそびえる富士山を見ながら走ったときは,感動して涙が出た.

6 件のコメント:

  1. すみぴょん2009年4月2日 23:56

    昔、2輪免許とるって親に言ったら、モーレツに叱られました
    「2輪なんて女のコののるもんじゃない!」って。。
    たしかにあの頃、知り合いの人や、近所の男のコが2輪の事故で亡くなってたから。。。
    まあ、今となっては両親の心配もわからないでもないけど。。
    仕方ないので4輪とりましたが、仕方ないなんてとんでもない!4輪たのし~~~です♪

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  2. まぁ世間の大多数はバイクに対して偏見を持ってますからね.
    私は4輪は日常の足,旅行は列車か飛行機です.
    バイクは走るために乗ります.
    あれ?乗るために走るのか.どっちでもいいや.
    少なくともバイクは移動手段ではありません.
    ドライブは4輪も楽しいけれど,バイクは世界が広がりますよ~.
    乗りませんかぁ?

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  3. 非常に論理的な説明をしておられていて感銘を受けました。
    そこで疑問に感じたことがあるので、質問させていただきます。
    サーキットや峠のような舗装路では、おっしゃるように、二輪は確かにグリップ力の限界を超える前にバンク角の限界を超えてしまいます。しかし、ダートトラックのような未舗装路ではどうでしょうか。
    モトクロスのライダーなどは、バンク角の限界を超える前にグリップ力の限界を超えさせて走行しているように私には見受けられます。
    そこでもやはり、二輪は四輪のコーナリング速度に劣るのでしょうか。
    初コメントにも関わらず長文失礼致しました。くろべえさんの見解を聞かせていただけると幸いです。

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    1. 同じコースのタイムがあれば比べられますね.
      そうした不安定な路面では実測しかないでしょう.
      http://www.youtube.com/watch?v=OX_weIUwd_o

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  4. SF的な話ですが・・・あるいは回答していただけるかと。
    もし分子間引力(イモリの足などのアレです)などを利用した絶対にスリップしないタイヤなどが開発されれば、二輪のコーナリングスピードは上がりますか?またコーナリングGは何Gになりますでしょうか。
    やはりバンク角だけの問題なのでしょうか?

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    1. バンク角だけの問題です.
      旋回中に少しでも起こしたら,外に膨らんで曲がりませんよね.
      あるいは,バンク角はそのままで加速しても膨らみます.
      よって,二輪車の旋回Gはバンク角だけに依存します.

      二輪車がバンクせずに旋回する方法があれば別ですが.
      補助輪などを付けたら,もはや二輪車ではないし.

      カーブの路面が45度程度にバンクしていれば,90度まで傾けても車体を擦らないので,タイヤの性能だけになりますね.
      絶対にスリップしないタイヤなら,人間の限界まで.
      戦闘機のように耐Gスーツが必要.

      カーブが壁面なら,タイヤの性能は無関係になり,純粋に人間の限界までw
      https://youtu.be/kVLEHBfeeJg

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