2004年9月5日日曜日

小石と月を地球に落としたらどちらが先にぶつかる?

理科の実験で,真空中で羽毛と小石を落として,「空気抵抗がなければ落下速度は同じだ!」というのがある.

これが,小石と月だったらどうか.
試しに計算したら月も小石も落下速度は同じだが,相手が月だと,地球も月に引っ張られて,月の方が早く衝突するということがわかった.

質量$M$と$m$ の二つの物体間の距離が $R$ の万有引力の大きさは,万有引力定数を$G$として

$\frac{GMm}{R^2}$
である.


地球の質量 $R$ なら引力の大きさは
$\frac{GEm}{R^2}$
地表の場合は $m$で割って
$9.8=\frac{GE}{6000000^2}$
となるわけだ.

地球の質量 $R$ なら引力の大きさは
$\frac{GEm}{R^2}$
で,加速度は地表の場合と同様に小石の質量で割って
$\frac{GE}{R^2}$
これは月であってもまったく同様で,引力の大きさは
$\frac{GEM}{R^2}$
で小石よりも圧倒的に巨大だが,月の方が圧倒的に重いので,加速度は小石と同じ
$\frac{GE}{R^2}$
つまり,月も小石も地球に対する加速度はまったく同じで,当然「落下速度」は同じである.

次に地球の加速度を計算してみる.
相手が月の場合の引力の大きさは,
$\frac{GEM}{R^2}$
より加速度は地球の質量Eで割って
$\frac{GM}{R^2}$
同様に相手が小石の場合の地球の加速度は
$\frac{Gm}{R^2}$

$M$ がでかいので,地球の加速度(落下速度)は,相手が月の場合,圧倒的に巨大になり,地球のほうが早く衝突する.
もちろん,Rは重心間の距離なので,小石より月のほうが月の半径分だけはじめから「近い」のではあるが,それをのぞいても地球のほうが加速度が大きく,速度が大きくなることがわかる.

さて,こんなこと知って何になるの?といわれれば何にもならない.
しかし,人類はそういう素朴な疑問を持つことによって発展し,先人(ニュートン)のおかけでこんな算数程度の計算(割り算)で素朴な疑問の答えがわかる.そして,機械技術の発展とあいまって,現代の便利な生活につながっているわけだな.

小石も,月も加速度は同じ!
ってのが「20へぇ」,違いは地球の加速度
いままで,こんなことを考えたことはなかったが,ふと疑問になって役立ったのが,万有引力の公式.
こんな素朴な疑問を解決してくれるのがこういった,一見無駄な「教養」なわけだ.
疑問に思っても,数学が使えなければあやふやなままになってしまうだろうし,この文章の数式部分が読めなければ「そんなもんかね」で終わり,かえってモヤモヤは残るだろう.
そして,「数学は,やはりよくわからない・・・」となるのだろうなー.

自分はこうやって数式でズバっと理由がわかり気分がいい.
数学に対して抵抗がなくてよかった.

2 件のコメント:

  1. 私もよく素朴な疑問を解いている一人です。大変楽しく読ませていただきましたが、この場合Rは一定ではないので月と小石の挙動は一致しないと思います。
    重箱の隅を突くような事を言ってすいません。気になってしまったもので…

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  2. そのとおりです.この記事は極端に単純化し,小石も月も地球も完全な球体と仮定しています.
    数学はとりあえず物事を単純化する学問です.
    その上でいろいろなファクターをひとつずつ考慮に入れていくのが「科学」だと思います.その意味で,この記事は,この記事に書かれていること以外はまったく考慮されていないわけです.
    そもそも月が地球に落ちることは無いので,さまざまなファクターを考えること自体が無意味ですね.

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