2007年5月15日火曜日

1の7乗根

1の5乗根と同じ方法で,1の7乗根つまり
$z^7=1$$\Leftrightarrow$$z^7-1=0$
の解を求めてみる.

$z^7-1=(z-1)(z^6+z^5+z^4+z^3+z^2+z+1)=0$
より
$z-1=0$または$z^6+z^5+z^4+z^3+z^2+z+1=0$
解の1つは z=1
$z^6+z^5+z^4+z^3+z^2+z+1=0$
において,z=0 は方程式を満たさないので,z≠0 より両辺を z^3 で割ると,
$z^3+z^2+z+1+\frac{1}{z}+\frac{1}{z^2}+\frac{1}{z^3}=0$
$\left(z^3+\frac{1}{z^3}\right)+\left(z^2+\frac{1}{z^2}\right)+\left(z+\frac{1}{z}\right)+1=0$

ここで,
$t=z+\frac{1}{z}$
とおくと,
$t^3=\left(z+\frac{1}{z}\right)^3$
$=z^3+3z^2\frac{1}{z}+3z\frac{1}{z^2}+\frac{1}{z^3}$
$=z^3+3z+\frac{3}{z}+\frac{1}{z^3}$
$=z^3+\frac{1}{z^3}+3\left(z+\frac{1}{z}\right)=z^3+\frac{1}{z^3}+3t$
より
$z^3+\frac{1}{z^3}=t^3-3t$

また,
$t^2=\left(z+\frac{1}{z}\right)^2$
$=z^2+2z\frac{1}{z}+\frac{1}{z^2}$
$=z^2+2+\frac{1}{z^2}$
より
$z^2+\frac{1}{z^2}=t^2-2$

したがって,
$\left(z^3+\frac{1}{z^3}\right)+\left(z^2+\frac{1}{z^2}\right)+\left(z+\frac{1}{z}\right)+1=0$
$(t^3-3t)+(t^2-2)+t+1=0$
$t^3+t^2-2t-1=0$

この3次方程式をカルダノの解法で解く.
まず,2次の項を消去するために,
$t=y-\frac{1}{3}$
とおくと,
$\left(y-\frac{1}{3}\right)^3+\left(y-\frac{1}{3}\right)^2-2\left(y-\frac{1}{3}\right)-1=0$
展開して整理し,
$y^3-\frac{7}{3}y-\frac{7}{27}=0$ ・・・(1)
さらに,
$y=u+v$
と置き換える.
$(u+v)^3-\frac{7}{3}(u+v)-\frac{7}{27}=0$

$(u+v)^3=u^3+3u^2v+3uv^2+v^3=u^3+v^3+3uv(u+v)$より,
$u^3+v^3+3uv(u+v)-\frac{7}{3}(u+v)-\frac{7}{27}=0$
$u^3+v^3-\frac{7}{27}+(u+v)\left(3uv-\frac{7}{3}\right)=0$
この等式を満たすには,
$u^3+v^3-\frac{7}{27}=0$ かつ, $\left(3uv-\frac{7}{3}\right)(u+v)=0$
$y=u+v=0$は(1)を満たさないので,$y=u+v\ne0$だから,
$u^3+v^3-\frac{7}{27}=0$(2) かつ, $3uv-\frac{7}{3}=0$
を満たす u, v を求める.
$3uv-\frac{7}{3}=0$より
$3uv=\frac{7}{3}$
$v=\frac{7}{9u}$ (3)
を$u^3+v^3-\frac{7}{27}=0$に代入し,
$u^3+\left(\frac{7}{9u}\right)^3-\frac{7}{27}=0$
$u^3+\frac{343}{729u^3}-\frac{7}{27}=0$
両辺を$u^3$倍して
$\left(u^3\right)^2+\frac{343}{729}-\frac{7}{27}u^3=0$
これは$u^3$の2次方程式である.
$u^3=\frac{7}{54}(1\pm3\sqrt{3}i)$
よって,
$u^3=\frac{7}{54}(1\pm3\sqrt{3}i)$
$u^3=\frac{7}{54}(1+3\sqrt{3}i)$のとき,(2)より
$v^3=\frac{7}{27}-u^3=\frac{7}{54}(1-3\sqrt{3}i)$
$u^3=\frac{7}{54}(1-3\sqrt{3}i)$のとき,(2)より
$v^3=\frac{7}{27}-u^3=\frac{7}{54}(1+3\sqrt{3}i)$
であるから,どちらが u でも v もかまわないので,ここでは2次方程式の「±」の「+」のほうを u^3,「-」のほうを v^3 とする.

これらの3乗根を解く.
$u^3=\frac{7}{54}(1+3\sqrt{3}i)$
$=\frac{28}{216}(1+3\sqrt{3}i)$
$=\frac{1}{6^3}(28+84\sqrt{3}i)$
より3乗根のひとつは,
$u=\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}$
残りの二つはこれに,1の虚数3乗根
$\omega=\frac{1}{2}(-1+\sqrt{3}i)$, $\omega^2=\frac{1}{2}(-1-\sqrt{3}i)$
をかけた,
$\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega,\ \frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega^2$
である.

u から v を求める.まず,
$u=\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}$
のとき,(3)より
$v=\frac{7}{9u}$
$=\frac{7\cdot 6}{9(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}}$
$=\frac{14}{3\left(28(1+3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}$
$=\frac{14\left(28(1+3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}{3\left(28(1+3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}\left(28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}$
$=\frac{14\left(28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}{3\left(28(1+3\sqrt{3}i)28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}$
$=\frac{14\left(28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}{3\left(28^2(1+27)\right)^{\frac{1}{3}}}$
$=\frac{14\left(28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}{3\left(28^3\right)^{\frac{1}{3}}}$
$=\frac{14\left(28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}{3\cdot28}$
$=\frac{\left(28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}{3\cdot2}$
$=\frac{\left(28(1-3\sqrt{3}i)\right)^{\frac{1}{3}}}{6}$
$=\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}$

残りの2つについても,
$u=\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega$
のとき,(3)より
$v=\frac{7}{9u}$
$=\frac{7\cdot 6}{9(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega}$
$=\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\frac{1}{\omega}$
$=\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\frac{\omega^2}{\omega^3}$
$=\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega^2$

同様に,
$u=\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega^2$
のとき,(3)より
$v=\frac{7}{9u}$
$=\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega$

となるから,
$y=u+v$
$t=y-\frac{1}{3}=-\frac{1}{3}+u+v$
より t の3つの解は
$-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}$
$-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega^2$
$=-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\frac{-1+\sqrt{3}}{2}+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\frac{-1-\sqrt{3}}{2}$
$-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega^2+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\omega$
$=-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\frac{-1-\sqrt{3}}{2}+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\frac{-1+\sqrt{3}}{2}$

$t=z+\frac{1}{z}$
から,両辺を z 倍して,
$tz=z^2+1$
$z^2-tz+1=0$
$z=\frac{t\pm\sqrt{t^2-4}}{2}$

ここで,
$t=-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}$
のときを考え,残りの2つは省略.
$t^2-4=\left(-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\right)^2-4$
$=\frac{1}{36}\left(-84-4(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}-4(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}\right)$
$\sqrt{t^2-4}=$
$\frac{1}{6}\sqrt{-84-4(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}-4(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}}$

よって,z は,
$\frac{1}{2}\left(-\frac{1}{3}+\frac{1}{6}(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+\frac{1}{6}(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\right.$
$\left.\pm\frac{1}{6}\sqrt{-84-4(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}-4(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}}\right)$
$=\frac{1}{12}\left(-2+(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}\right.$
$\left.\pm\sqrt{-84-4(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28-84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}-4(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{1}{3}}+(28+84\sqrt{3}i)^{\frac{2}{3}}}\right)$

google電卓は,虚数計算ができるので,それを使ってこの解を数値計算すると結果は,
0.623489802 + 0.781831482 i
で,これが6個ある「1の虚数7乗根」の中のひとつの数値解である.

実際,この値は,
cos(360度/7)+sin(360度/7)i
と同じなので,複素平面上の原点を中心とする単位円の円周を7等分しているといえる.

実際7乗すると,
0.999999998 - 2.815809 × 10^(-9) i = 0.999999998+0.000000002815809i
となり誤差を除けば 1+0i = 1 より確かに1の7乗根といえる.

さらに,この計算では3次方程式を解くので,正7角形はコンパスと定規での作図が不可能であることがわかる.コンパスと定規で作図できる計算は,四則計算と平方根だけだから,方程式で言えば,2次方程式(とその組み合わせ)の解までしか作図できない.>正多角形


・・・大量の単純作業はしらふだと途中で挫折するが,酔っ払っていると一気に進むなー

追記「-1 の7乗根」

8 件のコメント:

  1. こりゃ面白い。
    この間、たけしのコマネチ大学を撮り損ねたから、欲求不満が解消されました。(笑)

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  2. それはそれは・・・
    3次方程式は公式というか決まった手順があるので,ただひたすら面倒な計算を実行するのみで,頭を使いません.
    解いているときは集中しているけど,もう見る気がしないです.

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  3. 1の7乗根勉強になりました。ありがとうございます。
    つきましてはリクエストなのですがもしよければブログに書いて
    ほしいのですが

    例えばですねえ「1の6乗根」「1の10乗根」「1の11乗根」
    「1の12乗根」「1の13乗根」「1の14乗根」「1の15乗根」
    「1の17乗根」「1の18乗根以上」とか、、、、。
    もしよければですがとても興味があるのでブログに乗せてほしいと思います
    野でよろしくお願いします。

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  4. くろべえさんへ。

    久しぶりにくろべえさんへメールを送信したので、もし文章でちゃんと
    伝わっていなかったらごめんなさいです。ちょっと気になったので
    メールを送信しました。公開されなかったらまた書きなおしますので
    失礼します。

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  5. くろべえさんへ

    もし良ければですが「-1の7乗根」の解法を一度リクエストします。
    よろしくお願いします。あとですね?前にも書かせて頂いたのですが
    「1の6乗根や1の9~15乗根。」とか
    「1の17乗根や1の18乗根以上」で「1の5乗根と1の7乗根」
    と同じやり方で因数分解して解ける者なのでしょうか?
    ぜひお願いいたします。この前の書き込みがちょっと雑だと感じましたので改めましてリクエストします。

    後ですね?「-1の6乗根や-1の9~15乗根。」とか
    「-1の17乗根や-1の18乗根以上」の場合でも
    「1の5乗根と1の7乗根」と同じやり方で因数分解して
    解ける者なのでしょうか?追加リクエストします。
    よろしくお願いします。

    ※補足ですがブルーバックスのある本に「X^105-1=0」が因数分解出来るのですよ、との記事があり「へええ」と感じました。
    本によると「105は3と5と7に素因数分解」が可能らしくこれをヒントに因数分解が出来るとの記事内容が書いてました。
    因数分解は追求すれば追及するほど奥が深いんですねえ。
    と正直感じた今日この頃です。

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  6. 「1の17乗根」は初等整数論講義 第2版に,きっちり出ている.

    x^105-1 というか,x^n-1 の因数分解はメビウスの反転公式を使えば,nがどんな巨大な自然数でも,原始n乗根が計算でき,必ず有理数の範囲で因数分解できることが,やはり初等整数論講義 第2版に出ているし,手計算でもできることを以前記事にした.>以前の記事「メビウスの反転公式」

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