1の累乗根(x^n-1=0 の解)が原点を中心とする半径1の円上に並ぶ理由は,旧教育課程「数学B」の教科書「複素数平面」に載っているが,今「複素数平面」は高校では扱わなくなってしまった.
結局,やっていることはベクトルと大差ないからである.
ベクトルとの違いは,やはり「積」「商」があることだろう.
これで累乗根の図の説明がつく,
複素数 2-5i を座標 (2, -5) で表すというのが複素数平面である.
α=2-5i と β=-3+4i の和や差は,ベクトルの成分表示で,(2, -5) と (-3, 4)の和や差と同じである.そして,図形的な意味は,ふつうに座標を足したり引いたりするだけである.
ベクトルには積や商はないが,複素数の積や商は
αβ=(2-5i)(-3+4i)=14+23i
α/β=(2-5i)/(-3+4i)=-1.04+0.28i
と計算される.
これにはちゃんと図形的な意味があり,それにはどうしても「絶対値」と「偏角」という考え方が必要となる.どちらもきわめて単純な概念である.
絶対値は「原点からの距離」.
α=2-5i が表す点 (2, -5) と原点との距離は √29
β=-3+4i が表す点 (-3, 4) と原点との距離は √25=5
というだけ.
さて,偏角.
これはその座標まで引いた線と横軸(x軸)となす角のこと.
つまり実数の偏角は正の数(5とかπとか√2とか)なら0度,負の数(-5とか-πとか-√2とか)なら180度.
虚数単位 i=0+1i の表す点 (0, 1) なので,絶対値は 1 で,偏角は90度である.
α=2-5i が表す点 (2, -5) がx軸となす角は,sin角= -5/√29 となる角だから,-68.2度くらい.
同様にβ=-3+4iの偏角は126.9度
ここで,積の絶対値と偏角を計算する.
αβ=(2-5i)(-3+4i)=14+23i の絶対値は√725でこれはαの絶対値√29,βの絶対値√25の積.
αβ=(2-5i)(-3+4i)=14+23iの偏角は 58.7 度で,これはαの偏角-68.2度,ベータの偏角126.9度の和である.
同様に商の絶対値は絶対値の商,商の偏角は偏角の差となる.
ということで,複素数の積や商の図形的な意味は,
「回転を伴う拡大(縮小)」
といえる.
さて,絶対値1 の複素数同士の積や商は,常に絶対値1 となる.
つまり拡大や縮小はせず,半径1の円周上を回転するだけとなる.
絶対値1,偏角θの複素数は,
$\cos\theta+ i \sin\theta$
と表されるが,これを2乗すると,絶対値は1のままで,偏角はθ+θなので,
$(\cos\theta+ i \sin\theta)^2=\cos2\theta+ i \sin2\theta$
となる,同様にして次の de Moivre の公式が得られる.
$(\cos\theta+ i \sin\theta)^n=\cos n\theta+ i \sin n\theta$
ここで 1 の n乗根を考える.
$(\cos\theta+ i \sin\theta)^n=\cos n\theta+ i \sin n\theta=1$
となる θを求めればよい.
さて,1の偏角は0なので,
$1=\cos 0+ i \sin 0$
ということは,
$n\theta=0$
となるθということで,θ=0しか求まらない.
実は,角度というものは1周しても同じ位置に来るので,この場合は,1の偏角は360度の倍数を考えるのである.
$1=\cos 360^{\circ}+ i \sin 360^{\circ}$
$1=\cos 720^{\circ}+ i \sin 720^{\circ}$
つまり,
$1=\cos 360^{\circ}k+ i \sin 360^{\circ}k,\ \ \ (k=0,1,2,\ \cdots)$
となるから,
$n\theta=360^{\circ}k,\ \ \ (k=0,1,2,\ \cdots)$
となり,
$\theta=\frac{360^{\circ}}{n}k,\ \ \ (k=0,1,2,\ \cdots)$
ということで,1のn乗根は
$\cos \frac{360^{\circ}}{n}k+ i \sin \frac{360^{\circ}}{n}k,\ \ \ (k=0,1,2,\ \cdots)$
となり円周上に並ぶ.
すごい!詳しくせつめいしてくれてありがとう~!
返信削除すごい~!
返信削除詳しく説明してくれてありがとう~!