2006年11月17日金曜日

メビウスの反転公式

1の累乗根をあらわす方程式$x^n-1=0$の左辺の因数分解で,n=105で係数に1でないものが出てくることが数式処理ソフトで計算するとわかる.>x^n-1の因数分解
といった話題を同僚のN氏に話したら.
手計算でできたよ.メビウスの反転公式を使って.」>1の n 乗根

なるほど.
こういうことだ.

μ(n)をメビウス関数とする.
メビウス関数とは,
1.μ(1)=1
2.nに平方因子(つまり2乗)が含まれると 0
たとえばμ(4)=0,μ(45)=μ(9×5)=0
3.nが偶数個の素数の積なら 1
たとえばμ(15)=1
4.nが奇数個の素数の積なら -1
たとえばμ(5)=-1,μ(30)=μ(2×3×5)=-1

このとき次の式が成り立つ.>1の n 乗根

$F_{n}(x)=\prod_{d|n}(x^{\frac{n}{d}}-1)^{\mu(d)}$
は1の原始n乗根のみを根とする,多項式である.(証明は整数論の本で)


Πは積である.
d|n は nを割り切る d ということで,n=6なら, 1|6,2|6,3|6,6|6 だが,4|6は成り立たない.
Πの下にある d|n はnを割り切るdだけの積という意味になり,n=6なら d=1,2,3,6という数字を動いて,積を作る.
μ(d)はd=1,2,3,6ならμ(1)=1,μ(2)=-1,μ(3)=-1,μ(6)=1 となる
で,積の一つ一つは $(x^{\frac{6}{d}}-1)^{\mu(d)}$の形.
μ(d)は1か-1しかない.1のときは分子に,-1のときは分母に来るという意味である.
d=1のときμ(d)=1で,6/1=6 より$(x^6-1)^1$となり$(x^6-1)$は分子の成分である.
d=2のときμ(d)=-1で,6/2=3 より$(x^3-1)^{-1}$となり$(x^3-1)$は分母の成分である.
d=3のときμ(d)=-1で,6/3=2 より$(x^2-1)^{-1}$となり$(x^2-1)$は分母の成分である.
d=6のときμ(d)=1で,6/6=1 より$(x^1-1)^1$となり$(x-1)$は分子の成分である.
したがって,
$F_{6}(x)=\prod_{d|6}(x^{\frac{6}{d}}-1)^{\mu(d)}$
$=(x^6-1)\times\frac{1}{(x^3-1)}\times\frac{1}{(x^2-1)}\times(x-1)$
となり,これを計算すると
$=x^2-x+1$
が,1の原始6乗根を根とする多項式であることがわかる.

$F_{1}(x)=x-1$
$F_{2}(x)=\frac{(x^2-1)}{(x-1)}=x+1$
$F_{3}(x)=\frac{(x^3-1)}{(x-1)}=x^2+x+1$
$F_{4}(x)=\frac{(x^4-1)(x-1)^0}{(x^2-1)}=x^2+1$
$F_{5}(x)=\frac{(x^5-1)}{(x-1)}=x^4+x^3+x^2+x+1$
$F_{6}(x)=\frac{(x^6-1)(x-1)}{(x^3-1)(x^2-1)}=x^2-x+1$
$F_{7}(x)=\frac{(x^7-1)}{(x-1)}=x^6+x^5+\cdots+x^2+x+1$
$F_{8}(x)=\frac{(x^8-1)(x^2-1)^0(x-1)^0}{(x^4-1)}=x^4+1$
$F_{9}(x)=\frac{(x^9-1)(x-1)^0}{(x^3-1)}=x^6+x^3+1$
$F_{10}(x)=\frac{(x^{10}-1)(x-1)}{(x^5-1)(x^2-1)}=x^4-x^3+x^2-x+1$
と1の原始n乗根(n乗してはじめて1になる数)を根とする多項式が並ぶ.

さて,$x^{105}-1$についてこの式を当てはめる.
n=105=3×5×7である.
nを割り切るのは,1,3,5,7,3×5,3×7,5×7,3×5×7.
μ(1)=1,μ(3)=-1,μ(5)=-1,
μ(3×5)=1,μ(3×7)=1,μ(5×7)=1,
μ(3×5×7)=-1
ということは分子にくる指数は,3,5,7,105で,それ以外の指数1,15,21,35は分母になる.つまり
$\frac{(x^{105}-1)(x^{7}-1)(x^{5}-1)(x^{3}-1)}{(x^{35}-1)(x^{21}-1)(x^{15}-1)(x^{1}-1)}$.

この割り算では,全部の項を用いるのではなく「先頭の8次だけを計算する」のが手計算における味噌.
$\frac{(x^{3}-1)(x^{5}-1)(x^{7}-1)(x^{105}-1)}{(x^{1}-1)(x^{15}-1)(x^{21}-1)(x^{35}-1)}$
を展開するのも後ろのほうのまで行わないで
$=\frac{x^{120}-x^{117}-x^{115}-x^{113}+x^{112}+x^{110}+\cdots}{x^{72}-x^{71}-x^{57}\cdots}$
とする.そしてこの割り算も,必要なところだけを割り算する.
これで結果の48次式の41次の項に係数2が出てくることが「手計算で」確認できる.
$x^{48}+x^{47}+x^{46}-x^{43}-x^{42}-2x^{41}\cdots$
つまり原始105乗根を根に持つ多項式は48次式で,41次の係数が2である.

手計算でやってみようと思うところがすごい.N氏おそるべし.

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