今日の入試問題.
与えられた三角形を直線2本でいくつかの小片に分割し,小片を並び替えて同面積の長方形を作る.
このとき,三角形を切る2本の直線を作図せよという問題.
まぁひとつの頂点から他の辺に垂線を立てて,垂線の足と頂点の間を2等分して,そこから垂線を引いて・・・(以下略)
最終的にはこの線を引いて,(もちろん入試では,コンパスの跡を残さなければダメ)
このように長方形になる.
この三角形と長方形の関係を「分割合同」という.
つまり図形を切って組み替えて作るのが分割合同で,これが「面積が等しい」根拠になる.
直線で囲まれた平面図形は,三角形に分割できるから,それを経由して,すべて長方形と分割合同になり,「図形の面積は最終的に たて×よこ の計算に還元できる.」という根拠になるわけだ.
「補充合同」という語もある.
これは,分割合同にならなくても,新たに合同な図形をくっつけることによって,2者が合同になり,くっつける前の図形の「面積が等しい」と言えるもの.
たとえば,底辺と高さの等しい,平行四辺形は補充合同.
もちろん「計算すれば同じ」だが,計算せずに図形を加えると,完全に重ねあわせることができる.
この図で,△BDF≡△ACE
そして左側の平行四辺形に△BDFを補充したものと,左側の平行四辺形に△ACEを補充したものはどちらも四角形AFDCで合同.だから2つの平行四辺形は補充合同で面積が等しい.
平面図形は必ず分割合同にできるんだったかな.
立体図形はこうはいかない.
平面の正三角形に当たるのが,立体の正四面体.
平面の長方形に当たるのが,立体の直方体.
多面体分割のデーンの定理
「正四面体と直方体は,同じ体積をもっていたとしても分割合同ではない.」
つまり正四面体を有限個に分け,それを組み合わせて直方体を作ることができないことが証明されている.
ということは,正四面体の体積を,直方体の体積にするには無限分割.つまり解析的(微積分的)な方法しかないということである.
分割合同というと,「バナッハ・タルスキーのパラドックス」を思い出す.
「球を5個に分割して組み合わせると,同じ球が2個できる.」
言い換えると,
「ビー玉を5個に叩き割って,同じビー玉が2個できる.」
もちろん体積は2倍になる.
これは「選択公理」を適用で起きる.
「選択公理」は一見,とても当たり前.
「どれも(空でない)集合を元とする集合(すなわち集合の集合)があったとき,それぞれの集合から1個ずつ元を選び出して新しい集合を作ることができる」
例:
集合 X={A,B,C} がある.
A,B,C はそれぞれ集合で要素は
A={1,2,3},B={イ,ロ,ハ,ニ},C={甲,乙}
である.このとき,A,B,C から1個ずつ要素を選び出して新しい集合
P={2,ハ,乙}
ができる.
んー.当たり前.
これを無限集合にも要請すると,へんなことが起きてしまう.
ビー玉の体積は有限だけれど,ビー玉にある点の数は無限だから,ビー玉内の要素は無限集合.これに選択公理を適用すると,2個にできるというのがバナッハ・タルスキーのパラドックス.
でも,数学の基本的な性質は,この選択公理に拠るところが多く,認めないと困ってしまう.
だからパラドックスと呼ばれるものが起きる.
選択公理はそれだけで1冊の本になるくらい,いろいろと話題がある.
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