結論から言うと「数直線」そのものではある.
四則計算と,大小関係(順序構造)に「連続」の性質が加わったのが実数だ.
四則計算と大小の性質は数式を使ってわかりやすいが,連続の性質は「言葉」だから抽象的である.たとえば「上に有界な実数の集合は上限を持つ」(Weierstrass)とか.
まあ,言っていることは当たり前で,言葉の意味を知ると「いったいわざわざ言う必要ある?」と思えてしまうけど,有理数の集合では「上限がない」ものもあるわけだ.
でも言いたいのは
「数直線,どこを切っても実数がある.」
これこそが連続のココロであり,実数のココロだ.信念といってもよい.
それが具体的に求める手段がなくても,「そこに実数がある」を保証するのが実数の公理(あるいは有理数の切断による実数の定義)であり,微積分などは「そこに実数がある」ことにしてすべての議論を展開する.
「実際に数字を並べなくても」,いや,「並べる方法が未知でも」である.
たとえば,「直径と円周との比」の円周率.
無理数であることが証明されるので,循環しない無限小数であり,すべての桁を求めることは不可能.
このことを以って,「そんな数はあるの?」と感じる人もいるようだが,数学では「そこに円周率がある」ことを公理で保証して議論する.
つまり実数の存在は,公理で保証(あるいは有理数の切断で実数を「定義(Dedekind)」)しなければならない「信念」でもある.
公理から証明されることのひとつに,「数列の各項の差がいくらでも小さくなればひとつの実数に収束」がある.(Cauchy列 という.)
つ まり小数を無限に並べる方法があれば,桁数が一桁伸びるごとに「差が1/10倍づつに縮まる」から実際に無限に並べて見せなくても,「そこに実数がある」 と証明されるのだ.だから無限に求める方法の確立している円周率は,無限に時間をかけなくても「存在する実数」といえる.
さらに,公理から証明される事実に,「単調増加列が,ある数よりいつも小さければ,一つの実数に収束する」という定理がある.
つまり上から押さえられているのに,増え続けるなら,どっかで止まるというもの.
なんだかとっても「あたりまえ」である.
このあたりまえと思えるこのことから,「数字を並べる方法が見つからなくても存在する」することが保証され,さまざまな実数の存在が保証される.
自然対数の底も$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$の極限として定義される.
この数列は自然数nを大きくすると単調に増加する.
しかし,3より小さいことが証明できる.
「単調増加列が,ある数よりいつも小さければ,一つの実数に収束する」という定理によって,(3より小さい数に)収束することが言える.
(実際は2.718281828459…)
高校の数学IIで出てくる指数関数
$2^3=8$
$2^{1.5}=2^{\frac{3}{2}}=\sqrt{2^3}=\sqrt{8}$
については,
$2^{\frac{m}{n}}=\sqrt[n]{2^m}$
と定義される.
これを見ると,指数が分数でなければ定義できない気がするが,「そこに実数がある」おかげで
$2^{\pi}=2^{3.14159\cdots}$
もアプリオリに定義されるのである.
実際次のように存在が保証される.
$2^{3.1}=2^{\frac{31}{10}}=\sqrt[10]{2^{31}}$
$2^{3.14}=2^{\frac{314}{100}}=\sqrt[100]{2^{314}}$
$2^{3.141}=2^{\frac{3141}{1000}}=\sqrt[1000]{2^{3141}}$
は単調に増加する.しかしどれもこれも
$2^{4}$
よりも小さい.
上から押さえられる単調増加列は収束(つまり存在←実数のココロ)するので,その極限(存在することが保証された実数)を
$2^{\pi}=2^{3.14159\cdots}$
と「定義」するのである.
中間値の定理も,実数の性質そのものである.
つまり連続関数f(x)が3から4に変わるとき,その途中の3.5を横切る.
つまり,f(a)=3.5となる「実数aがあるよ」というのである.当たり前ですか?
これが,「そこに実数があるよ」のココロで,初めて存在がアプリオリに保証される.
5次以上の方程式には(加減乗除と累乗根で表される)解の公式な存在しないことが証明されているが,100次関数 f(x) が 3から4 に変わるとき
f(a)=3.5
となる x=a が存在することが,保証される.
5次以上の方程式には解の公式が存在しないが,n次方程式には高々n個の解が存在することを保証するのは,「切ったところに数がある」実数のココロである.
(実際は数直線2本を直交させた複素平面上のn次関数の議論になるが.)>代数学の基本定理
実数のひとつである円周率は人間の「言語」である.無限の桁数であっても結局は「言語」
5cmという長さも「言語」である.
5cmという長さが言語にあるなら,πcmも言語である.
数学は人間の言語の中にのみアプリオリに存在する.
数学では,5cmとπcmの存在に大差はないのだ.
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