2005年11月9日水曜日

分数の割り算にみる数学における「定義」の意味

「分母と分子を逆にしてかける」と習う.その理由.

数学的には,割り算は逆数の積と定義されている.
つまり「定義より明らか」であるといえる.
実際,
$a\div b=a\times\frac{1}{b}$
と定義されているので,
$b=\frac{p}{q}$ ならば $\frac{1}{b}=\frac{q}{p}$
より
$a\div\frac{p}{q}=a\times\frac{q}{p}$
となる.

数学的定義と,実際の「わかった」感覚は別物なので,算数的アプローチ.
算数的には
「割り算は掛け算の逆算」といえる.
その理由は実際に割り算をすればわかる.
$12\div 3$では
九九の3の段を唱えていって$3\times 4=12$に到達したときに
$12\div 3=4$
と突き止められる.
ということは
$12\div 3=4$
の根拠は
$12=3\times 4$
ということである.
このことを分数の計算に置き換えてみればいいのである.

$\frac{3}{7}\div \frac{5}{6}$
を考える.
$\frac{3}{7}\div \frac{5}{6}=x$
とおけば
$12\div 3=x$の根拠となる掛け算で$12=3\times x$となる$x$を3の段を唱えて突き止めたように,
$\frac{3}{7}= \frac{5}{6}\times x$
を満たす $x$を突き止めればよいことがわかる.
もちろん$\frac{5}{6}$の段の九九はないから,ここでは別の方法を使う.
左辺と右辺をとりかえて,
$\frac{5}{6}\times x=\frac{3}{7}$
とする.
両辺に
$\frac{5}{6}$の逆数$\frac{6}{5}$をかけると$x$の係数を1にして払うことができる.
$\frac{6}{5}\times\frac{5}{6}\times x=\frac{3}{7}\times\frac{6}{5}$
$1\times x=\frac{3}{7}\times\frac{6}{5}$
$x=\frac{3}{7}\times\frac{6}{5}$
したがって,
$\frac{3}{7}\div \frac{5}{6}=\frac{3}{7}\times\frac{6}{5}$
といえるから「分母と分子を逆にしてかける」ことがわかる.

まぁ「これでつじつまが合うから」という理由に近い.
ほかにも,ようかんを切ったりといった実例でいくらでも「つじつまあわせ」をすることが可能である.

もともと数学とは,「つじつまが合うものにしか応用しない」学問であるから当然だし,つじつまが合わない学問は数学の対象外である.

そして,「理由」というのは「現実世界へのつじつまあわせ」であるから,数学で内部完結するには「逆数をかけるという定義」にしてしまうのが手っ取り早い.
数学では「・・・の性質をもつものを・・・とする」と,性質から定義をすることが多くて,
「こんなもの定義といえるのか?」
と思う人も多いだろう.

「意味」と「定義」は別物なのである.


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1 件のコメント:

  1. ちゃかそうかなぁ~って思ったけど・・
    ちと、わが人生を振り返ってみた・・・
    ふむ(>_<)

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