2005年11月17日木曜日

無限大記号

$\infty$
1つの文字で表すが,数ではない.状態である.
正しくは変数の状態.

1つの文字のため,これが一人歩きをしてあたかも数であるように勘違いする人は多い.
$1\div 0=\infty$
のように.
(この場合,$\div0$ は定義できないので,式自体がルール違反である.)

たとえば $x\gt 0$ で, $x\to 0$ のとき
変数 $y=\frac{1}{x}$
の状態は「どんな数より大きくなる」ので
$\lim_{x\to +0}\frac{1}{x}=\infty$
とは書くが,この式から lim をとり,$x$をその目標である0に置き換えた
$\frac{1}{0}=\infty$
と書くことはできない.
そもそも$x\to 0$ のときは$\lim$の定義は$x\not{=} 0$であって,$x=0$とすること自体が$\lim$の定義に反している.

ただ,ときどき便宜的に
$\frac{1}{0}=\infty$

$\lim_{x\to +0}\frac{1}{x}=\infty$
の「略記」とすることは全くないとはいえず,そのことが $\frac{1}{0}=\infty$と書くことが許されているように誤解されることもある.それはあくまで誤解であって,ただしくは$\lim$ の定義の延長(変数の状態)にあるのが$\infty$記号である.

したがって,
$\infty - \infty$
といった式は無意味である.

$\lim_{n\to\infty}n^2=\infty$,$\lim_{n\to\infty}2n=\infty$
であるが,
$\lim_{n\to\infty}(n^2-2n)$
は$\infty - \infty$の状態を表しているかもしれない.
$\lim_{n\to\infty}(n^2-2n)=\lim_{n\to\infty}n^2(1-\frac{2}{n})=\infty$
であるから,この場合の $\infty - \infty$は $\infty$である.

一方,
$\lim_{n\to\infty}\sqrt{n+1}=\infty$,$\lim_{n\to\infty}\sqrt{n}=\infty$
であるが,
$\lim_{n\to\infty}\sqrt{n+1}-\sqrt{n}$
は変数の状態としては$\infty - \infty$を計算しているといえて,
$\lim_{n\to\infty}\sqrt{n+1}-\sqrt{n}=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}=0$
であるので,この場合の $\infty - \infty$は $0$である.

このように変数の極限が,$\infty - \infty$や$\infty \div \infty$のように見えたり$0\div0$のように見える極限を不定形の極限というが,これは実際個別に式変形しなければ極限がどうなるかはわからない.

$\infty$は本来は常に$\lim$とセットというか,背景は$\lim$なのだが,1文字の記号で便利に使うため,勝手に$\lim$から引き離されて,いろいろと誤解を生むのである.

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