2007年8月1日水曜日

虚数の三角関数その3

つづき

三角関数の sin や cos は -1 以上 1 以下なわけだが,虚数の三角関数はすべての複素数値をとることができる.

前回は三角関数の値が虚数の場合の,角(虚数)をもとめたが,角が虚数なら関数値が -1 より小さい実数や,1より大きい実数にすることができる.

たとえば,
$\sin \theta=2$
となる虚数$\theta$がある.今日はそれを求めてみるか.

前回書いたように,
$\sin \theta=\frac{1}{2i}(e^{i\theta}-e^{-i\theta})$
なので,
$\frac{1}{2i}(e^{i\theta}-e^{-i\theta})=2$
となる$\theta$を求めてみる.

両辺を $2i$ 倍して
$e^{i\theta}-e^{-i\theta}=4i$
両辺を $e^{i\theta}$ 倍すると,$e^{-i\theta}e^{i\theta}=e^0=1$より
$(e^{i\theta})^2-1=4ie^{i\theta}$
$(e^{i\theta})^2-4ie^{i\theta}-1=0$
この$e^{i\theta}$ の2次方程式を解くと,
$e^{i\theta}=2i\pm\sqrt{(-2i)^2+1}=2i\pm\sqrt{-3}=2i\pm\sqrt{3}i$
±は面倒なので,+だけを計算.(-も同様)
$e^{i\theta}=2i+\sqrt{3}i=i(2+\sqrt{3})$
$=(2+\sqrt{3})(0+1i)$
$\theta=x+iy$なら$i\theta=ix+i^2y=-y+ix$より
$e^{i\theta}=e^{-y+ix}=e^{-y}e^{ix}=e^{-y}(\cos x+i\sin x)=(2+\sqrt{3})(0+1i)$
したがって,
$e^{-y}=2+\sqrt{3}$
$\cos x =0,\ \ \sin x=1$ から $x=\frac{\pi}{2}$

$e^{-y}=2+\sqrt{3}$
から
$\frac{1}{e^{y}}=2+\sqrt{3}$
$e^{y}=\frac{1}{2+\sqrt{3}}=2-\sqrt{3}$
$y=\log(2-\sqrt{3})$

ゆえに,
$\theta=x+iy=\frac{\pi}{2}+i\log(2-\sqrt{3})$

つまり,
$\sin\left(\frac{\pi}{2}+i\log(2-\sqrt{3})\right)=\sin(1.5708+1.31696i)=2$
である.
他にも,
$\sin\left(\frac{\pi}{2}+2\pi+i\log(2+\sqrt{3})\right)=\sin(7.85398-1.31696i)=2$
などがある.

このように,三角関数は,すべての複素数で定義された複素数値の関数なのである.
つづく
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