蒸気機関はお湯を沸かし,蒸気の圧力を動力に利用する.普通に蒸気の圧力と言うと,やかんのふたを持ち上げるような力を考えると思う.この力を「正圧」という.
SLはこの正圧を利用して走る.(水を補給できない砂漠地帯を走るSLには復水器をもつものもあるが)
発電所にはほぼすべて「復水器」がある.以前「水に戻したところでどうなるの?」と思ったことがあった.
>復水器
には「タービンの効率を高くする役割」
とある.本当は効率を高くするどころか,実はこれも動力である.実際,ワット以前の蒸気機関は,復水の力(水に戻る力)だけを利用していた.正圧ではなく,負圧である.
負圧とは,一旦加熱した高温の水蒸気をシリンダーに導き,それ冷却してできる真空に働く大気圧のことである.水蒸気が水になると体積が数千分の1になる.それでできた負圧(真空)を,動力に利用していたのがワットまでの蒸気機関であった.
正圧を利用しなかった理由は,技術が未熟で機械が高い圧力に耐えられなかったからで,負圧なら最大でも大気圧しかかからない.
実際,正圧を利用し始めた蒸気機関は爆発事故が多かったようで,ワット自身も正圧の利用には反対していたそうだ.
さて,SLは正圧のみを利用しているが,排気は大気中であるので,大気圧の抵抗の分効率が悪い.
現代の発電所や船の蒸気タービンでは,復水器で蒸気を水に戻して作られる真空も「動力」に使っている.復水器は「蒸気を水に戻すだけ」ではなく,それによって大気圧から動力を得る装置であるのだ.
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