2001年9月5日水曜日

円錐曲線

教科書の流れでは放物線の定義は数学Ⅰで
 「2次関数の表す図形は放物線」
だ.放物線は parabola だが,この単語の「para」は parallel(平行)からきていて「放物(物を放る)」というニュアンスはない.
物を放ってそれが2次関数になることを発見したのはたぶんガリレイ.その千年以上前の古代ギリシャですでに parabola は発見されていた.
日本語に訳されたのはおそらく明治に入ってからだろうが,そのときはもちろん,「2次関数は放物線」だったわけだ.

古代ギリシャでは円錐の平面による切り口の一つとして parabola が理解されていた.

当時すでに,円錐を平面で切ったときの切り口がいろいろ研究されていた.
円錐を水平に切断すれば,錐というくらいだから,切り口は円になる.この切断面を少し斜めした図形を楕円という.
円錐の中に球を落とすと(アイスのコーンに,球形のアイスを入れる感じ),球の大きさによっていろいろな場所に来るが,切り口の平面にも接するようなうまい大きさの球を考える.
楕円の場合,切り口の上側と下側,2つの球がぴったり収まる.
そして,切り口の平面と,球との接点はそれぞれの球についてひとつづつで合計2個あるから接点も2個ある.
楕円上のどの点も,2つの接点からの距離の和が一定であることが,円錐と球と切り口の平面の関係から,ちょっとした頭の体操でわかる.
これは,
 「球は,円錐と,切り口の平面に接している.」
 「球に1点から2本の接線を引くと,点と接点との距離はどちらも同じ」
 「円錐という図形の対称性」
などをくみあわせればわかる.
逆に,このことから現代では,
 「2定点からの距離の和が一定の曲線を楕円という」
と定義している.

さて,切り口の平面の角度をどんどん大きくすると,楕円はどんどん長くなる.
そして,円錐の側面と平行になった瞬間に,図形が閉じなくなる.
これが,parabola である.(放物という語は使いたくない)
そう,parabola の語源は「平行」です,物を放るということとは全く関係ない.
さて,円錐と切り口に接する球は1つしか存在しないが,楕円のときと同様に考える.
すると,球が円錐に接する部分の円を含む平面と,切り口の平面とが交わる直線(準線という)から parabola 上の点までの距離と,その点から切り口と球との接点(焦点という)までの距離が一定であることが,やはり「ちょっとした頭の体操」でわかる.
このことから現代では
 「定直線(準線)からの距離と,その直線上にない点(焦点)からの距離が等しい点の軌跡を parabola という」
と定義している.

側面に平行からさらに角度をつけると「双曲線」になる.曲線というくらいだから2個の曲線ができるはずだが,この円錐では1つしかできないと思うだろう.
もう一つはどこ?
同じ円錐をもう一つ用意し,逆さまにして,頂点をくっつける.すると,切り口は急角度で側面に平行でないから,逆さまの円錐にも切り口を作る.
このとき,逆さまに円錐にも,下側の円錐にできた曲線と合同な曲線ができあがる.同じ形の曲線が2つあるから「双曲線」というわけ.
切り口と円錐に接する球は上下の円錐に2個できる.切り口と球との接点をやはり焦点という.
双曲線は接点からの距離の差が一定の曲線です.

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