1999年10月13日水曜日

1999年10月11日月曜日

高校損得進学率90%以上

同僚のH氏との先日の会話の結論.

「まじめに考えれば考えるほど,高校はあほらしい.
高校に見切りをつけて退学する子は,大変正しくまじめな子だ.」

だいたい今時,高校にしがみついてるのは,まじめだからじゃなくて,損得を考えた結果だ.
「高校ぐらい卒業しておかないと…」
と親や先生に損得で説得され,納得させられ,その気になって学校に来ているわけだ.

損得で通っているんだから,適当に力を抜いて,卒業さえしてしまえばいいわけだ.
なるほど,無気力な生徒を見ていると,損得で来ているのだなと思う.



それに応えるべく,われわれ教員は,出席さえしていれば,学力0でも単位を与え,卒業証書を与えるのが仕事になっている.
学力保証はそっちのけだ.
学力を保証しようと力めば力むほど,損得で来ている生徒には煙たがられ,嫌われる.
「もっと気楽にやらせてくれよ」
これは教育困難校だけの問題ではない.
進学校でも受験に関係のない教科科目には見向きもしなくなる生徒が多くなることでもわかる.

入試を廃止して,履歴書に学歴を書くことを禁止したり,会社が学歴によらず学力試験だけで選抜を始めたら,本当に学力を身につけたいまじめな子が学校に戻ってくるかな.

でも,少数だが損得ではなくまじめに考えて高校に通っている子もいて,
彼らのおかげで,私も学校が楽しい.
多くを期待しすぎるのが,大人のよくないところ.
半分以上の生徒が授業を聞いていなくても,よく考えれば半分近くの生徒が授業を聞いてくれていることになる.
まだまだ,捨てたものではないな.

1999年10月10日日曜日

サイエンティフィック・リテラシー

の岩波新書がある.
まだ読んでいない.

現代人のサイエンティフィック・リテラシーの薄っぺらさが,先日の臨界被曝事故と無関係ではなさそうな気がしてならない.
一定質量以上のウランを集めると臨界に達することぐらいは,原子力産業に携わるものにとっては常識だと思っていたが,そうではないらしい.
それとも,扱っている物質がウランであるとは知らされていなかったのだろうか.
これから責任者の「保身」がみられるぞ.
あぁ無責任体質.

私が事件を知ったのは当日の夕方,ラジオの報道で知ったが,
「臨界に達する事故」という報道だった.
臨界という言葉の報道で,自体の重大さを理解したひとはどれくらいいただろう.
私は思わず車をとめて,風向きを確かめてしまったし,その後の天気予報はかなり注意していた.


臨界とは本来原子炉内部でだけ起こしてよいもの.
原爆はまさに臨界そのもの.
現在の核実験は「臨界前核実験」といって臨界にはしない.
それほど臨界は危険なもの.

サイエンティフィック・リテラシーの低下は危険なものに鈍感になり平気で危険なことをしたり,安全なものに必要以上に神経質になり,パニックになったりする.
さらに,科学を悪用されても見抜けない.

これは科学を使って詐欺をはたらいたりすることを指しているわけではない.
大企業や政府といった権力が民衆の収奪に使うということ.
これを助長するのが,科学に対する無知と,他者への無関心.
科学無知ならそもそも巨悪は見抜けないし,科学を知っていても無関心なら見て見ぬ振りをするだろう.
さらに心有る科学者がそれを見抜いても,科学的無知な社会(特にマスコミ)はそれを無視する.
で,気が付くととんでもないことになってるわけだ.

したがって,一般の人も科学の便利さを享受するだけではなく,少しずつでも知識を身に付ける必要もある.
科学に携わるものは他者へ無関心であってはならないし,
ましてや一部のものの利益のために科学を悪用してはならない.
高校で教わるくらいのことは常識だと思うのだが.

ところが科学の基礎知識を教える学校がその機能を果たしてはいない.
それどころか「理科離れが深刻」なんてことになってる.
日本碍子のCM「関係ないじゃん」がまさにそれを表している.
もちろん,これだけ高度にシステム化した社会で,学校の授業内容が直接,巨大システムの説明にはつながらないわけだが.
教員は「教科書を教える」ことに徹し,「教科書の暗記力」を試すテストをする.
ほんとは「教科書で教え」応用力をテストするんだが.
それをやると受験に直結しないから大部分は寝てしまう.
さらに,受験に関係のない学校なら,見向きもしない.
末期的とはこのことだ.

といいながら先日「暗記力テスト(学力テスト)」をやったのだが.

1999年10月8日金曜日

採点

おとといの学力テストの採点をしなければならんのだが,こんなことばかりでさっぱり進まん.
授業のプリントを作成せねばならんし,時給20円でだれか採点してくれないかな.

1999年7月21日水曜日

放物線の長さ

アクセスログによると「放物線の長さ」で検索して,テスト回答にたどり着く人がけっこういる.

きっと,放物線の長さを,計算しようとして行き詰まった人が,ネットで検索したのかな?

それとも,先生から「面白いからためしに計算してみなさい」と課題でも出されたけれどできなくて探したのかな?

まぁ,根性で計算すれば高校の知識で求められる問題ではある.

残念ながら,解答ページには放物線の長さの計算はないので,がっかりしたことでしょう.

ということで,このページに書いてしまおうと思ったけど,人の答えをネットでお気楽に見つけて「課題をやりました」,あるいは「わかったつもり」というのでは,勉強にならない.

苦労してもらいましょう.

解答をフリーの組版ソフト TeX(テフ) で組みました.その TeX のソースをこのページの最後にそのまま置きました.

私の解答を手に入れる方法をここに書きます.

  1. ソースを自分でタイプセットする.(なければ自分のマシンに LaTeX をインストールしよう)
  2. TeX がなくインストールする根性もなければ,ソースはプレーンのテキストだからソースを解読する.
  3. 私に質問をして聞き出す.
  4. 私はタイプセットしたものをpdfで持っています.苦労や努力が嫌いで自力でやるのがいやな人は,「ファイルをください」とメールする.

2003年12月3日追記

2003年12月3日に,千里国際学園のB先生からいただいたメールでの指摘に基づき,いくつかの本文中の記号などのミスを訂正し,訂正では書ききれない部分を最後に追記した.

2003年12月4日追記

逆双曲正弦関数 Arcsinh x は Log で書けるのでした.


\begin{verbatim}
以下TeXソース



\documentclass{jarticle}

\title{放物線の長さ}
\author{くろべえ}
\date{1999年10月}
\西暦


\begin{document}
\maketitle

放物線の長さを求める問題は,高校の範囲でできるとはいえ,結構厄介である.
ここでは $y=x^2$ の区間 $[0,\ 1]$ における長さを求めてみる.

$y=f(x)$ の区間 $[a,\ b]$ における長さは,
高校の教科書によれば
\begin{quote}
$\displaystyle\int_a^b\sqrt{1+(f^\prime (x))^2}\,dx$
\end{quote}
で与えられる.

$f(x)=x^2$ とすれば $f^\prime (x)=2x$ より,区間 $[0,\ 1]$ における長さは,
$\displaystyle\int_0^1\sqrt{1+(2x)^2}\,dx$ で与えられる.

\begin{quote}
$\displaystyle
\int_0^1\sqrt{1+(2x)^2}\,dx \\
= \int_0^1\sqrt{1+4x^2}\,dx
$.
\end{quote}
ここで,$2x=\tan\theta$ とおけば $4x^2=\tan^2\theta$ で,
積分区間は$x$ が $[0,\ 1]$ だったので,
$\theta$ は$\tan \alpha=2$ に対して $[0,\ \alpha] $ となり,
$dx=\frac{1}{2\cos^2\theta}\,d\theta$ より,
\begin{quote}
$\displaystyle
\int_0^1\sqrt{1+4x^2}\,dx \\
=\int_0^\alpha
\sqrt{1+\tan^2\theta}\frac{1}{\cos^2\theta}\,d\theta \\
=\int_0^\alpha
\sqrt{\frac{1}{\cos^2\theta}}\frac{1}{2\cos^2\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{1}{\cos\theta}\frac{1}{\cos^2\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{1}{\cos^3\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{\cos^4\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{(\cos^2\theta)^2}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{(1-\sin^2\theta)^2}\,d\theta
$.
\end{quote}
ここで,$\sin\theta=u$ とおけば $\cos\theta\,d\theta=du$ で,
$\theta$ の積分区間は $\tan \alpha=2$ に対して $[0,\ \alpha]$ だったので,
$\sin\alpha=\sqrt{1-\cos^2\alpha}=\sqrt{1-\frac{1}{1+\tan^2\alpha}}
\sqrt{1-\frac{1}{1+2^2}}=\sqrt{\frac{4}{5}}=\frac{2}{\sqrt{5}}$ より,
$u$ の積分区間は $[0,\ \frac{2}{\sqrt{5}}] $ となり,
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{(1-\sin^2\theta)^2}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\frac{1}{(1-u^2)^2}\,du \\
$
\end{quote}
$\frac{1}{(1-u)^2(1+u)^2}$ を部分分数に分解する.
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{(1-u)^2(1+u)^2}
=\frac{a}{1-u}
+\frac{b}{(1-u)^2}
+\frac{c}{1+u}
+\frac{d}{(1+u)^2}
$
\end{quote}
とおき,両辺に $(1-u^2)^2$ をかけて分母を払うと
\begin{quote}
$\displaystyle
1 = a(1-u)(1+u)^2+b(1+u)^2+c(1-u)^2(1+u)+d(1-u)^2 \\
1 = (-a+c)u^3+(-a+b-c+d)u^2+(a+2b-c-2d)u+(a+b+c+d)
$
\end{quote}
これは恒等式だから(要するに左辺を $0u^3+0u^2+0u+1$ と考え係数を合わせて)
\begin{quote}
$\displaystyle
-a+c=0,\\
-a+b-c+d=0,\\
a+2b-c-2d=0,\\
a+b+c+d=1.
$
\end{quote}
この連立方程式を解くと,$a=b=c=d=\frac{1}{4}$ より
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{2}
\int_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\frac{1}{(1-u^2)^2}\,du \\
=\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{4}
\int_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\left(
\frac{1}{1-u}
+ \frac{1}{(1-u)^2}
+ \frac{1}{1+u}
+ \frac{1}{(1+u)^2}
\right)\,du
\\
=\frac{1}{8}
\left[
-\log(1-u)+\frac{1}{1-u}+\log(1+u)+\frac{-1}{1+u}
\right]_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\\
=\frac{1}{8}
\left(
-\log\left(
1-\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{1}{1-\frac{2}{\sqrt{5}}}
+\log\left(
1+\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{-1}{1+\frac{2}{\sqrt{5}}}
\right)
\\
=\frac{1}{8}\left(
-\log\left(
1-\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{1}{1-\frac{2}{\sqrt{5}}}
+\log\left(
1+\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{-1}{1+\frac{2}{\sqrt{5}}}
\right)\\
=\frac{4\sqrt{5}+\log\frac{5+2\sqrt{5}}{5-2\sqrt{5}}}{8}
$
\end{quote}
約 1.47894 である.

ついでに原始関数を求めて見よう.
結局,上記の積分の計算から,
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{8}\left(
-\log\left(1-u\right)
+\frac{1}{1-u}
+\log\left(1+u\right)
+\frac{-1}{1+u}
\right)\\
=\frac{1}{8}\left(
\frac{2u}{1-u^2}
+\log\frac{1+u}{1-u}
\right)\\
$
\end{quote}
となることまではわかる.$u=\sin\theta$ より,
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{8}\left(
\frac{2u}{1-u^2}
+\log\frac{1+u}{1-u}
\right)\\
=\frac{1}{8}\left(
\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}
+\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\right)\\
$
\end{quote}
とりあえず,$\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}$
の部分は
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}\\
=\frac{2\sqrt{1-\cos^2\theta}}{\cos^2\theta} \\
=\frac{2\sqrt{1-\frac{1}{1+\tan^2\theta}}}{\frac{1}{1+\tan^2\theta}} \\
=\frac{2\sqrt{1-\frac{1}{1+(2x)^2}}}{\frac{1}{1+(2x)^2}} \\
=2(1+4x^2)\sqrt{\frac{4x^2}{1+4x^2}} \\
=2(1+4x^2)\frac{2x}{\sqrt{1+4x^2}} \\
=4x\sqrt{1+4x^2} \\
$
\end{quote}
と,$x$ の関数で表せるが,
$\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}$ の部分はまず無理のような気がする.
Mathematica で計算させたら
ArcSinh[2x] と,高校数学では出てこない関数で表現された.

\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{8}\left(
\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}
-\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\right)\\
=\frac{1}{8}\left(
\frac{2\sin\theta}{\cos^2\theta}
-\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\right)\\
$
\end{quote}
を微分する問題をテストで出したことがあった.
微分は,何の工夫もないただの計算問題である.

\vspace{\baselineskip}
\textbf{\large 2003年12月3日追記}
\vspace{\baselineskip}

2003年12月3日に,千里国際学園のB先生からいただいたメールでの
指摘に基づき,
いくつかの本文中の記号などのミスを訂正しました.

さらに,本文の
\begin{quote}
「$\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}$ の部分はまず無理のような気がする.

\end{quote}
という部分に対しても,次のような指摘がありました.

\begin{quotation}
一番前の$\frac{1}{8}$
を$\frac{1}{4}$にして中に$\frac{1}{2}$を掛けると、
$\log$の中が$\sqrt{\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}}$となり、
これを変形すれば、
$\log$の中は$\sec\theta+\tan\theta$となって、
結局求める不定積分は
$\frac{1}{4}\left(2x\sqrt{1+4x^2}+\log(2x+\sqrt{1+4x^2}\right)+C$
となります。

また、赤チャートの「44無理関数の積分法」のページには別解が掲載されてます。
すでにご存知でしたら失礼をお許し下さい。

\end{quotation}

つまり,
$\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
=\log\frac{(1+\sin\theta)^2}{(1-\sin\theta)(1+\sin\theta)}
=\log\frac{(1+\sin\theta)^2}{1-\sin^2\theta}
=\log\frac{(1+\sin\theta)^2}{\cos^2\theta}
=2\log\frac{1+\sin\theta}{\cos\theta}
=2\log\left(\frac{1}{\cos\theta}+\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\right)
=2\log\left(\sqrt{\frac{1}{\cos^2\theta}}+\tan\theta\right) \\
=2\log\left(\sqrt{1+\tan^2\theta}+\tan\theta\right)
=2\log\left(\sqrt{1+(2x)^2}+2x\right)
$ と $x$ の式に変形できる.

さらに,数研出版の赤チャートの「44無理関数の積分法」のページには
$\int\sqrt{x^2+a^2}\, dx$ が解説されており,
そこでは$x+\sqrt{x^2+a^2}=t$ とおいて,
$x^2+a^2=(t-x)^2$, $2tx=t^2-a^2$,
$x=\frac{1}{2}\left(t-\frac{a^2}{t}\right)$,
$dx=\frac{1}{2}\left(1+\frac{a^2}{t^2}\right)dt$ と
置換することにより,
三角関数に置換することなく
簡単に導く方法が示されている.

実際,この放物線の長さの問題の場合は,
$2x+\sqrt{1+4x^2}=t$ とおけば,あとは同じである.

私自身は浅学非才で,赤チャートのこの部分は知らなかった.

\vspace{\baselineskip}
\textbf{\large ArcSinh[x]について.}
\vspace{\baselineskip}

本文では「高校数学では出てこない関数で表現された」と書いたが,
これは $\sinh x = \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}$ の逆関数なので,
初等関数で表すことができ,
実際 $\log\left(\sqrt{1+x^2}+x\right)$
となる.

\begin{quote}
$y=\sinh^{-1} x$ ならば
$x = \sinh y = \frac{e^{y}-e^{-y}}{2}$, より,
$2x = e^{y}-\frac{1}{e^{y}}$,

両辺を $e^y$倍して
$2xe^y = e^{2y}-1$,

$e^y$ で整理すると $e^y$ の2次方程式となって,
$ (e^{y})^2-2xe^y-1 =0$,

$e^y=x+\sqrt{x^2-(-1)}=x+\sqrt{x^2+1}$,

したがって,
$y=\log(x+\sqrt{x^2+1})$ となる.
\end{quote}

つまり Mathematica が表示した
Arcsinh[2x] は初等関数で\\
$\log(2x+\sqrt{4x^2+1})$ と表されたのである.

赤チャートの置換は逆$\sinh x =\log(x+\sqrt{x^2+a^2})$
で $e^y = t$ に置換したといえる.

\end{document}



1999年7月10日土曜日

1999年1学期一斉テスト

1999年7月に3年生に実施したいわゆる期末テスト。
PDF と TeXソース
卒業生(浪人中)のNくんは, 「去年授業でよい成績とれずに悔しかったからテストを受けさせてほしい」 ということで,このテスト問題に挑戦した.

数学III1学期一斉テスト

(100分)配点は生徒の出来による.
つまり正解者が少ないほどオッズがあがり,配点も大きくなる.
この方法だと,121人受験した場合,全員正解の問題と,
一人のみ正解の問題では最大で,121倍のオッズの比になるが,
それを3倍に補正してから,100点満点に配分している.
問題ごとにオッズと配点を記した.


平均23.8,標準偏差12.1
N君は得点55点.したがって偏差値76.


  • $\frac{5}{3}$は第何象限の角か.



  • N君の答
      第2象限 
      正解
    解答
      5/3=1.666... は π/2=1.57... より大きく、 π=3.14... より小さいので、第2象限である。
    解説
      弧度法(ラジアン)に慣れていくと、πが単位のように思えてくる。 すると、「πが抜けている。印刷ミスでは?」といいたくなる。 これはそういう人に対する引っかけ問題である。 πは単位でもなんでもなく、定数 3.14… である。
    結果
      ○ 66人 △ 0人 × 55人 オッズ 1.8 配点 2.99 ×の大多数が、5π/3 と勘違いして、第4象限と答えている。


  • 数列 $\{n\sin\frac{a}{n}\}$ ($a$は定数) の極限を求めよ.





  • N君の答
      a 
      正解
    解答
    $n\sin\frac{a}{n}=\frac{\sin\frac{a}{n}}{\frac{1}{n}}=a\frac{\sin\frac{a}{n}}{\frac{a}{n}}\stackrel{n\to\infty}{\longrightarrow}a\cdot 1=1$
    解説
      基礎的な問題、単純な式変形で、 x->0 なら sin x / x -> 1 の形に持ち込む。
    結果
      ○ 41人 △ 0人 × 80人


    オッズ 3.0 配点 3.42


  • $\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos ax}{x^2}$ ($a$は定数)を求めよ.





  • N君の答
      a^2/2 
      正解
    解答
       $\frac{1-\cos ax}{x^2}=\frac{(1-\cos ax)(1+\cos ax)}{x^2(1+\cos ax)}\\=\frac{1-\cos^2 ax}{x^2(1+\cos ax)}=\frac{\sin^2 ax}{x^2}\cdot\frac{1}{1+\cos ax}\\=\frac{\sin^2 ax}{(ax)^2}\cdot\frac{a^2}{1+\cos ax}=\left(\frac{\sin ax}{ax}\right)^2\cdot\frac{a^2}{1+\cos ax}\\\stackrel{x\to0}{\longrightarrow}1^2 \cdot\frac{a^2}{1+\cos 0}=\frac{a^2}{2}$
    解説
      前問よりちょいとひねりが加えられているが、式変形で、 x→0 なら sin x / x → 1 の形に持ち込む。

    結果
      ○ 40人 △ 0人 × 81人 オッズ 3.0 配点 3.44


  • $\lim_{x\to 0}\displaystyle\frac{\log\cos x}{x^2}$ を求めよ.



  • N君の答
      -1/2 
      正解.この3問は浪人生にとっては,「計算練習」でしょう.

    解答
    $\frac{\log\cos x}{x^2}=\frac{1}{x^2} \log(1-\sin^2 x)^{\frac{1}{2}}=\frac{1}{x^2}\cdot\frac{1}{2} \log(1-\sin^2 x)\\=\frac{1}{2x^2}\log\left( (1-\sin^2 x)^{\frac{1}{-\sin^2 x}}\right)^{-\sin^2 x}\\=\frac{-\sin^2 x}{2x^2}\log\left(1+(-\sin^2x)\right)^{\frac{1}{-\sin^2 x}}\\=\frac{-1}{2}(\frac{\sin x}{x})^2\log(1+(-\sin^2x))^{\frac{1}{-\sin^2 x}}\\\stackrel{x\to0}{\longrightarrow}\frac{-1}{2}\cdot1^2\cdot\log e=\frac{-1}{2}$
    解説
      今度は log がらみ。やはり式変形で  x→0 なら sin x / x → 1, (1+x)^(1/x) → e の形に持ち込む。
    結果
      ○ 8人 △ 0人 × 113人 オッズ 15.1 配点 5.43 さすがに複合問題は難しい。



  • $\frac{1}{4}\log\displaystyle\frac{1+\sin x}{1-\sin x}+\displaystyle\frac{\tan x}{2\cos x}$を微分せよ.




  • N君の答
      無回答
      ちょっと根性が出なかった. まぁ,この問題に根性出す必要はないが,(出してもなんら勉強にならない) 1/Cos^3 の積分やったことはないのかな? 放物線の長さの計算に出てくるのだよ.
    解答
    $\left(\log\displaystyle\frac{1+\sin x}{1-\sin x}+\displaystyle\frac{\tan x}{2\cos x}\right)'=\frac{1}{\cos^3 x}$
    解説
      とても詳細を書く気がしない。 答え 1/cos^3 x を積分して作った問題である。 「10桁の掛け算をやれ」といってるような問題で、 工夫もなにもなく、ただひたすら計算するのみ。 大量の計算を、見失うことなく自分なりに整理して正確に実行する力が求められる。 もちろん、この答えを積分して、問題の式を導くのは10倍難しい。
    結果
      ○ 25人 △ 0人 × 96人 オッズ 4.8 配点 3.93 25人もできた。あたりまえか。


  • 級数 $\sum_{n=0}^{\infty}\left(\displaystyle\frac{x}{2}\right)^{n+1}$ について,





  • (1)級数が収束するための $x$ の範囲を求めよ.
    (2)そのときの和を求めよ.
    N君の答
      (1) 0≦x≦2 
      不正解.
       (2) x^2/(4-2x) 
      不正解.n=1 が初項ならこの答え.まんまとひっかかったね.
    解答
      (1) 公比が x/2 の等比級数なので、|x/2|<1 n="0">
      解説
        教科書レベルのやさしい問題。ただ、n=0 からはじまってるところが ひっかけといえば、ひっかけである。
      結果(1)
        ○ 49人 △ 0人 × 72人 オッズ 2.5 配点 3.25
      結果(2)
        ○ 20人 △ 0人 × 101人 オッズ 6.1 配点 4.19






  •  $x=\sin y$ (ただし,$-\frac{\pi}{2}\le y\le\frac{\pi}{2}$)のとき,




  • (1) $\frac{dy}{dx}$を $x$の式で表せ.
    (2) $\frac{d^2y}{dx^2}$を求めよ.
    N君の答
      (1)1/√(1-x^2) 正解 (2)x(1-x-2)^(3/2) 
      正解

    解答
      (1)
    $\frac{dy}{dx}=\frac{1}{\frac{dx}{dy}}=\frac{1}{\cos y}=\frac{1}{\sqrt{1-\sin^2 y}}=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}$
      (2)
    $\frac{d^2y}{dx^2}=\left(\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}\right)'=\left((1-x^2)^{\frac{-1}{2}}\right)'\\=\frac{-1}{2}(1-x^2)^{\frac{-3}{2}}(-2x)=\frac{x}{(1-x^2)\sqrt{1-x^2}}$




    解説
      教科書章末問題レベルの基礎的な問題。 解答の中に書かなかったが、平方根が正のみであるのは、y の範囲からいえる。 問題文の但し書きは飾りじゃないのよ。
    結果(1)
      ○ 35人 △ 0人 × 86人 オッズ 3.5 配点 3.57
    結果(2)
      ○ 12人 △ 0人 × 109人 オッズ 10.1 配点4.84



  • $\lim_{x\to0}\frac{a^x-1}{x}$を求めよ.




  • N君の答
      0 
      不正解.おいおい,これくらいの極限の計算は 身についてないとやばいぞ.




    解答
    $t=a^x-1 \Rightarrow x=\log_{a}(1+t)\\x\to0\Rightarrow t\to0\\\frac{a^x-1}{x}=\frac{t}{\log_{a}(1+t)}=\frac{1}{t}\log_{a}(1+t)=\frac{1}{\log_{a}(1+t)^{\frac{1}{t}}}\\\to\frac{1}{\log_{a}e}=\log a$
    解説
      極限の問題なので、解答例の解き方が正統なのだろうが、 記述式ではなく、解答欄を埋めるだけなのだから、微分の公式を使って、
    $f(x)=a^x,\ f'(x)=a^x\log a$
    $\frac{a^x-1}{x}=\frac{a^x-a^0}{x-0}=\frac{f(x)-f(0)}{x-0}\\\stackrel{t\to0}{\longrightarrow}f'(0)=a^0\log a=1\log a=\log a$


    とすると簡単である。
    結果
      ○ 14人 △ 0人 × 107人 オッズ 8.6 配点 4.63


  • $y=\frac{a}{2}\left(e^{\frac{x}{a}}+e^{\frac{-x}{a}}\right)$のとき,






  • (1) $y''$を $y$で表せ.
    (2)$y^{(2n)}$ を $y$で表せ.
    N君の答
      (1)y/a^2 
      正解
       (2)(1/a^2)y or y^(2n) 
      or の後ろが不正解で,△
    解答
      (1)
    $y'=\frac{a}{2}\left((e^{\frac{x}{a}})'+(e^{\frac{-x}{a}})'\right)=\frac{a}{2}\left(\frac{1}{a}e^{\frac{x}{a}}+\frac{-1}{a}e^{\frac{-x}{a}}\right)=\frac{1}{2}\left(e^{\frac{x}{a}}-e^{\frac{-x}{a}}\right)$
    $y''=\frac{1}{2}\left((e^{\frac{x}{a}})'-(e^{\frac{-x}{a}})'\right)=\frac{1}{2}\left(\frac{1}{a}e^{\frac{x}{a}}-\frac{-1}{a}e^{\frac{-x}{a}}\right)\\=\frac{1}{2a}\left(e^{\frac{x}{a}}+e^{\frac{-x}{a}}\right)=\frac{1}{a^2}\frac{a}{2}\left(e^{\frac{x}{a}}+e^{\frac{-x}{a}}\right)=\frac{1}{a^2}y$

      (2) 記述式答案なら例えば次のように書くことも考えられる。
    数列$\{y^{(2n)}\}$は,$y^{2(n+1)}=y^{2+2n}=(y'')^{(2n)}=\left(\frac{1}{a^2}y\right)^{(2n)}=\frac{1}{a^2}y^{(2n)}$
    より初項 $y^{(2\cdot 1)}=y''=\frac{1}{a^2}y$,公比$\frac{1}{a^2}$の等比数列で,$y^{2n}=\frac{1}{a^{2n}}y$.


    しかし、一番手堅いのは 4階微分, 6階微分を求めて 2n 階微分を類推し、 数学的帰納法で証明することかな。
    解説
    結果(1)
      ○ 40人 △ 0人 × 81人 オッズ 3.0 配点 3.44
    結果(2)
      ○ 21人 △ 0人 × 100人 オッズ 5.8 配点 4.13
    以上解答欄に答えを書くだけの問題だから、 答えが合っていれば、どんな解き方をしても正解である。
    しかし、以下の問題は答案に不備があれば、答えが合っていても 減点される記述式。


  • 数列 $\{\sin\sqrt{n+1}-\sin\sqrt{n}\}$ の極限を求めよ.





  • N君の答
      無解答.
      平均値の定理を使う基礎的な問題だぞ.
    解答
    $\sin\sqrt{n+1}-\sin\sqrt{n}=2\cos\frac{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}{2}\sin\frac{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}}{2}$
    $\sqrt{n+1}-\sqrt{n}=\frac{(\sqrt{n+1}-\sqrt{n})(\sqrt{n+1}+\sqrt{n})}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}=\frac{n+1-n}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}\\=\frac{1}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}\to0$
    より$\sin\frac{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}}{2}\to0$
    $\cos\frac{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}{2}$は有界(-1以上1以下)だから
    $\cos\frac{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}{2}\sin\frac{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}}{2}\to0$ より $\sin\sqrt{n+1}-\sin\sqrt{n}\to0$

    解説
      cos の有界と sin の無限小両方に言及して満点。片方で得点半分。 この問題は今回の試験範囲ではない微分の応用「平均値の定理」 を使うとすぐできる問題であるが、三角関数の公式でできる問題なので、 出題した。予習が進んでいると思われる2名の生徒が「平均値の定理」 を使用して解いた。もちろん正解である。
    結果
      ○ 1人 △ 8人 × 112人 オッズ 24.2 配点 6.20


  • 級数  $1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\ \cdots\ +\frac{1}{n^2}+\ \cdots$  について次の問いに答えよ.



  • $\sin\sqrt{n+1}-\sin\sqrt{n}=2\cos\frac{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}{2}\sin\frac{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}}{2}$
    $\sqrt{n+1}-\sqrt{n}=\frac{(\sqrt{n+1}-\sqrt{n})(\sqrt{n+1}+\sqrt{n})}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}=\frac{n+1-n}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}\\=\frac{1}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}\to0$
    より$\sin\frac{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}}{2}\to0$
    $\cos\frac{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}{2}$は有界(-1以上1以下)だから
    $\cos\frac{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}{2}\sin\frac{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}}{2}\to0$ より $\sin\sqrt{n+1}-\sin\sqrt{n}\to0$

    解説
      cos の有界と sin の無限小両方に言及して満点。片方で得点半分。 この問題は今回の試験範囲ではない微分の応用「平均値の定理」 を使うとすぐできる問題であるが、三角関数の公式でできる問題なので、 出題した。予習が進んでいると思われる2名の生徒が「平均値の定理」 を使用して解いた。もちろん正解である。
    結果
      ○ 1人 △ 8人 × 112人 オッズ 24.2 配点 6.20


  • 級数  $1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\ \cdots\ +\frac{1}{n^2}+\ \cdots$  について次の問いに答えよ.



  • (1) 部分和が単調増加であることを示せ.
    N君の答
      1+1/2^2+1/3^2+1/n^2=S(n) とおくと,S(n)-S(n-1)=1/n^2>0 
          正解.
    解答
      N君の答えで正解.
    解説
    まぁ,「級数の各項が正の数だから単調増加」でもOK でしょう.
    結果
      ○ 39人 △ 3人 × 79人 オッズ 3.0 配点 3.43
    (2) 部分和は有界であることを示せ.(Hint $n^2>n(n-1)$をうまく使う)
    N君の答
      1/n(n-1) > 1/n^2 k≧2 のとき,
      n
      ∑ 1/k(k-1) >
      k=2
      n
      ∑ 1/k^2
      k=2
      1-1/n>1/2^2+1/3^2+…+1/n^2 2-1/n>1+1/2^2+1/3^2+…+1/n^2 lim 2-1/n =2 > lim 1+1/2^2+1/3^2+…+1/n^2 ∴有限 
      だいたい論旨が合っているので正解. 細かいところが不正確で,これが競争試験なら減点の対象になりうる. 下の解答例と比べてほしい.
    解答
    Hint の両辺の逆数を取ることにより$\frac{1}{n(n-1)}>\frac{1}{n^2}$が成り立つから
    $k\ge2$のとき$\sum_{k=2}^{n}\frac{1}{k(k-1)}>\sum_{k=2}^{n}\frac{1}{k^2}$
    ここで,$\frac{1}{k-1}-\frac{1}{k}=\frac{k}{k-1}-\frac{k-1}{k(k-1)}=\frac{1}{k(k-1)}$より
    $\sum_{k=2}^{n}\frac{1}{k(k-1)}=\frac{1}{1\cdot2}+\frac{1}{2\cdot3}+\frac{1}{3\cdot4}+\frac{1}{4\cdot5}+\ \cdots\ +\frac{1}{(n-1)n}\\=\left(\frac{1}{1}-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{3}\right)+\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{4}\right)+\left(\frac{1}{4}-\frac{1}{5}\right)+\ \cdots\ +\left(\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n}\right)\\=1-\frac{1}{2}+\frac{1}{2}-\frac{1}{3}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\frac{1}{4}-\frac{1}{5}+\ \cdots\ +\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n}\\=1-\frac{1}{n}$

    解説
      Hint なしで解ける生徒はその手の問題を経験済みといえる. そんなミラクルテクニックの知識を問うつもりは毛頭ないので, はじめから Hint を与え,「論述能力」を見た.
    結果
      ○ 4人 △ 5人 × 112人 オッズ 18.6 配点 5.76

    (3) 級数の極限について述べなさい.
    N君の答
      (2) より 2
           (2) だけからはいえない.まぁ収束することを主張しているから △. 2より小さい数列が収束するということはない. 例えば,sin(1/n) という数列はどの項も2以下だが,発散する数列である.
    解答
      単調増加で上に有界な数列は収束する.という定理から (1), (2) により 級数は収束する.

    解説
      極限は 2 以下の数であることが (2) より保証される. N君は2が極限であるとしているが,この定理は極限の存在をアプリオリに 保証するだけで,極限値を求める手段は与えない. 実際この級数の極限は π^2/6=1.64493… で,2よりだいぶ小さい.
    結果
      ○ 16人 △ 1人 × 104人 オッズ 7.3 配点 4.42


  • $f(x)$ の $x=a$ における微分係数$f'(a)$ を定義せよ.



  • N君の答
      f '(a)=     f(x)-f(a)
      lim ―――――
      x→a   x-a
      f '(a)=     f(a+h)-f(a)
      lim ―――――
      h→0   h
      定義の式だけ出来ているので,△
    解答
    $\lim_{x\to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}$が存在するとき,それを$f(x)$の$x=a$における微分係数といい,$f'(a)$と書く.

    解説
      式だけしか書いていない△が多い.極限の存在が 微分の定義である.
    結果
      ○ 2人 △ 57人 × 62人 オッズ 4.0 配点 3.71


  • $\sqrt{x}$ の 導関数が $\frac{1}{2\sqrt{x}}$ であることを微分の定義にしたがって示せ.


  • 解説
      教科書丸写しの問題.
    結果
      ○ 62人 △ 3人 × 56人 オッズ 1.9 配点 3.02



  • 「$f(x)=\left\{x^2+1\ (x\ge 1)\\ x^2-1\ (x\lt 1)\right.$
    で定義された関数の導関数はx<1 のときも 
    x\ge 1 のときも 2x だから,x→1 のとき2x→2 より, x=1 の微分係数は 2 である.」 とするのは間違いである.微分の定義にしたがって,間違いを正せ.



  • N君の答
      微分可能であるということはその点において連続関数であること必要がある. しかしこの関数は x=1 において不連続であり これは微分できないということになりうる. 
          不正解「微分の定義にしたがって」示していない.
    解答
    f(1)=2 なので,
    x>1 のとき f(x)=x^2+1 より
    $\lim_{x\to 1+0}\frac{f(x)-f(1)}{x-1}=\lim_{x\to1+0}\frac{x^2+1-2}{x-1}=\lim_{x\to1+0}\frac{x^2-1}{x-1}=\lim_{x\to1+0}\lim\frac{(x-1)(x+1)}{x-1}=\lim_{x\to1+0}(x+1)=2$
    x$\lim_{x\to 1-0}\frac{f(x)-f(1)}{x-1}=\lim_{x\to1-0}\frac{x^2-1-2}{x-1}=\lim_{x\to1-0}\frac{(x-1)(x+1)-2}{x-1}=\lim_{x\to1-0}\lim\left(x+1+\frac{-2}{x-1}\right)=+\infty$
    よって,$\lim_{x\to1}\frac{f(x)-f(1)}{x-1}$が存在しないので,x=1 の微分係数は存在しない.
      解説
        定理「微分可能なら連続」があるので, その対偶「不連続なら微分不可能」はいつでもいえる. したがってこの問題は明らかだが, それを「微分の定義」にしたがって,示してはじめて正解である.
      結果
        ○ 2人 △ 2人 × 117人 オッズ 40.3 配点 7.16


    • 奇関数の導関数は偶関数であることを証明せよ. あ,もちろん関数は微分可能だからね.



    • N君の答
        f(x) を奇関数とすると, f(x)=-f(-x). 微分すると f '(x)=f '(-x) おっとーこれは偶関数.
           正解.
           
      解答
        f(x) を奇関数とすると, f(x)=-f(-x). 両辺を微分すると f '(x)=-f '(-x)×(-1) = f '(-x). したがって f '(x) は偶関数.
      解説
        わかってみればこれだけの問題,ところが出来は悪い.
      結果
        ○ 2人 △ 1人 × 118人 オッズ 48.4 配点 7.54
      次の問題は最後のふたつ正解者がいなかったので, 全員に○を与えた. その上で,9月1日期限の「レポート」とした.


    • x≠0のとき $f(x)=x^2\sin\frac{1}{x}$,f(0)=0 と定義された関数について次の問いに答えよ。




    • (1) f(x) が連続かどうか調べよ。
      N君の答
        x →+0 のとき,f(x)=x^2 sin(1/x)→ +sin∞. x →-0 のとき,f(x)→ -sin∞. よって連続にはならない 
            不正解.
      解答
        x≠0 のとき 連続関数 1/x と連続関数 sin x の合成に連続関数 x2 を かけたものだから連続. さて,x=0 で連続かどうか. x→0 のとき 1/x は絶対値が正の無限大に発散するが, このとき sin(1/x) は有界(-1以上1以下)であるから それに無限小 x2 をかけた f(x) は無限小. よって limx→0 f(x)=0=f(0) より x=0 で連続. よって実数全体で連続.
      解説
      教科書の連続の定義に当てはまるかどうかを検証するだけである.
      教科書では関数の連続をつぎのように定義している.
        f(x) が x=a で連続であるとは
        1. f(a) が定義されていて
        2. limx→a f(x)が存在し,
        3. limx→a f(x)=f(a).
      結果
        ○ 4人 △ 6人 × 111人 オッズ 17.3 配点 5.64

      (2) x≠0のとき f '(x) を求めよ。
      N君の答
        f(x)=x^2 sin(1/x) なので, f '(x)=2x sin(1/x) + x^2 (-1/x^2) cos(1/x) =2x sin(1/x) - cos(1/x) 
            正解.
      解答
        N 君の解答のとおりで問題ない.
      解説
        これは計算問題,たくさんの人ができた.めでたしめでたし.
      結果
        ○ 43人 △ 1人 × 77人 オッズ 2.8 配点 3.36

      (3) f' (0) を求めよ。
      N君の答
        (空欄)
      解答
        (2) で求めた導関数は当然 x≠0 のときである. f '(0) は定義に従って求めて,極限が存在するときだけ存在する. x→0 のとき (f(x)-f(0))/(x-0) の極限が存在すればそれが f '(0). f(0)=0 より (f(x)-f(0))/(x-0) = f(x)/x = x sin(1/x). x→0 のとき 1/x は発散するが,sin(1/x) は有界. x は無限小だから x sin(1/x) は無限小. したがって,f '(0)=0 が存在する.
      解説
      微分とはあくまで微分の定義の極限が存在するかどうかである.
      結果
        ○ 121人 正解者なしのため全員に得点 △ 0人 × 0人 オッズ 1 配点 2.51

      (4) f '(x)が連続かどうか調べよ。
      N君の答
        x→+0 のとき f '(x) → 2sin∞-cos∞. x→-0 のとき f '(x) → -2sin∞-cos∞. よって不連続 
            不連続であることはあっているが, これは論証とはいえない.
      解答
        2x sin(1/x) は無限小であるが, cos(1/x) は振動するから, x→0 のとき f '(x) は振動. しかし,f '(0) が定義されているから f '(x) は x=0 で不連続.
      解説
      (2) でもとめた導関数の極限と f '(0) が一致するかどうかである. これも教科書の連続性の定義どおりに考える.
      結果
        ○ 121人 正解者なしのため全員に得点 △ 0人 × 0人 オッズ 1 配点 2.51

      1999年6月25日金曜日

      数学III抜き打ちテスト

      6月に3年生に実施したテスト。
      > PDF と TeXソース

      内容は,授業の「お話」をどれだけ,自分のものにしているか?というもの.問題を解く力ではなく,「どれだけ数学的概念が言語化されているか」というものを試している.卒業生(浪人中)のNくんは,「去年授業でよい成績とれずに悔しかったからテストを受けさせてほしい」ということで,このテスト問題に挑戦した.私の授業を受けていないぶん,現役生よりハンデはあるが,それなりに言語化されているのはさすが浪人生で,得点も17点で現役生の平均点に近く,偏差値も 49.1 である.

      現役生に対しては,テスト後すべて解答をレポートにして提出することを義務付け,その出来によって「満点に足りない得点の半分を挽回する」ということにした.
      数学III抜打ちテスト
      (50分)12問あるので配点は1問 100/12=8.333
      117人受験,平均 18.624 標準偏差 18.49


      1. 「写像」と「対応」の違いについて説明せよ.
      2. 卒業生 N君の答
        写像ってのは2つの集合 A, B っていうものがあり, A の内の1つの要素が B の内に1つと組になっていること.対応はなっていない場合,つまり A∋x, A∋y, B∋a について xとa, yとa もOK ということ

        N君の解答はなんとなく言おうとしていることはわかるが,正確さには欠けている.数学のテストである以上,ある程度の正確さを要求するため,この解答は0点である.

        解答例1
        集合 A, B に対し A の要素おのおのについて, B の要素がただひとつ対応するとき,A から B への写像といい, ただひとつに限らないのが対応

        高校生ならこの程度で正解とした.

        解答例2
        集合 A, B の対応とは {(a, b)| a∈A, b∈B} の部分集合, 集合 A から B への写像とは「 {(a, b)| a∈A, b∈B}の部分集合で, 『(a, x), (a, y) ならば x=y』を満たすもの」

        かなりテクニカルな解答.2人の生徒がこのように答えた. よく理解し,記号等の使い方も的確である.

        結果
        ○ 41人 △ 16人 × 60人

      3. 命題「ある区間 (a-p, a+p) をとれば区間内のすべての x について f(x)≦f(a)」 の否定命題を述べよ.
      4. 卒業生 N君の答
        任意の値 x において f(x)>f(a) が成り立つならば区間 (a-p, a+p) はとらない.

        これは授業で論理の言葉「すべての~」,「ある~」を解説した.その使用法の問題である.授業を受けていない N君には無理. ∀(すべて),∃(ある),¬(否定)の記号を使えば,ド・モルガンの法則 ¬∀x P(x) ⇔ ∃x¬P(x), ¬∃x P(x) ⇔ ∀x¬P(x) が 使える使えるかどうかの問題.ちなみにこの命題は「極大」の定義である.(f(a) が極大値.不等号の向きを変えれば極小) そしてその否定命題は「極大でない」ことの表現になる.

        解答例
        機械的にド・モルガンの法則を適用すれば,すべての区間(a-p, a+p) について区間内のある x について f(x)>f(a).

        もうすこしこなれた言い方をすれば, どんな区間(a-p, a+p) をとっても,区間内にある x が存在して f(x)>f(a).

        結果
        ○ 8人 △ 4人 × 105人

      5. 有界と無限小を定義せよ.
      6. 卒業生 N君の答
        有界とはある値を表す方程式 f(x) の x をある値に近づけたとき全てに f(x) が収束する場合,f(x) は有界であるという.無限小とは f(x) の x をある値 a に近づけたとき f(x) が負方向に限りなく小さくなっていく場合 f(a) は無限小という.

        これも授業を受けていなければ当然無理.ただし,無限小は「負の無限大」とは違う.いくらでも0に近い状態である.それをいかに言語化するか.

        解答例
        変数 x が有界とは,ある正の数 M が存在して |x|≦M が成り立つことである.変数 x が無限小とは,任意の正の数 ε について |x|<ε とできることである.

        このような問題ではいかに「主語を補うか」ということがポイント.単に言葉の説明ではなく,用語の用法までを定義しなければならない.

        結果
        ○ 5人 △ 21人 詳しく解説した無限小だけ書けた者が多かった. × 91人

      7. lim x = α を「無限小」という言葉を用いて定義せよ.
      8. 卒業生 N君の答
        白紙.
        解答例
        x-α が無限小.

        無限小という言葉を使わなければ, 「任意の正の数εについて|x-α|<εとできる.」

        結果
        ○ 18人 △ 4人 × 95人

      9. 無限小と無限小の和が無限小であることを用いて,
        lim(x+y) = lim x + lim y を示せ.
      10. 卒業生 N君の答
        白紙.
        解答例
        lim x = α,lim y = β とすると lim の定義から x-α が無限小, y-β が無限小. 無限小と無限小の和が無限小であるから (x-α)+(y-β) も無限小. (x-α)+(y-β) = x+y-α-β = (x+y)-(α+β) が恒等式であることから, (x+y)-(α+β) も無限小 再び lim の定義から lim (x+y)=α+βつまり lim(x+y)=lim x + lim y.
        結果
        ○ 11人 △ 1人 × 105人

      11. 数列 (1 + 1/n)^n の極限や, 2^(√3) の存在を保証する数列の定理は どのようなものか述べよ.
      12. 卒業生 N君の答
        (1+1/n)^n の極限は e (自然対数)

        この極限が自然対数の底 e であることは当然のことながら 知識として持っていなければならない.しかしこの問題の意味は 授業を受けていなければ,まったく不明だろう.

        解答
        定理:上に有界な単調増加数列は収束する.

        数列 (1+1/n)^n は単調増加数列であり,上に有界な数列であることが 示され,この定理によって極限値の存在がアプリオリに保証されるのである. そして存在が保証される極限値を使って定数 e が定義される. 有理数の指数 2^(m/n) は n乗 して 2^m になる正の実数ということで 定義される.それを使って, 数列 2^1, 2^1.7=2^(17/10), 2^1.73=2^(173/100), 2^1.732=2^(1732/1000) … を定義するとこの数列は単調増加で,つねに 2^2 より小さいので上に有界である. したがって,極限値が存在する. そして指数部分は √3に収束するから存在が保証されたこの数列の極限値を 2^(√3) と名づけるのである.

        結果
        ○ 0人 △ 1人 × 116人 さんざん授業で念を押したのだけれど,忘れられたようだ. (1+1/n)^n の2項展開までしてくれた人もいたのだが, 筋違い.

      13. 「1/n は正の数,正の数は0ではないのに 極限が 0 であるのは納得できない.」 という人に対してどのように説得しますか.
      14. 卒業生 N君の答
        極限というものは n を無限大にもっていった時に, 限りなくその値に近づくってことだから n=10^753 とか入れてみろ 1/10^753=0.00…001 とかになって,正の数だろうが!! n=∞になっても 0 に近づくけど 0 になるわけがない. なぜなら 1/0 というものは定義されてないから!

        「定数に近づくこと」が述べられているから正解.

        解答例1
        極限とは定数に近づくこと. 定数は目標であるので、一致する必要はない.

        この程度の解答で、満点.

        解答例2
        1/n は 0 との差が無限小である.なぜなら任意のε>0 について 十分大きい p をとれば pε>1 とできる. このとき n>p なるすべての自然数 n に対して nε>1 より, 1/n<εとできるので,1/n は無限小. よって,1/n-0 も無限小なので,1/n と 0 との差が無限小といえる. したがって,1/n の極限 0.

        このように解答した生徒も複数いた. ちなみに正の数 a, b について a<b 十分大きい正の数 p をとれば ap > b とできる.というのはアルキメデスの原理という.

        結果
        ○ 37人 △ 14人 × 66人

      15. 「はさみうちの原理」を書いてください.
      16. 卒業生 N君の答
        f(x)<g(x)<h(x) という関数を考えてみる. lim f(x)=a, lim h(x)=a とするならば, a<lim g(x)<a,lim g(x)=a となる.

        だいたい言おうとしていることが合っていそうなので,△. a<lim g(x)<a という記述が矛盾している.

        解答例
        x→p でも x→+∞ (-∞) でもいいし, 数列なら x が自然数で x→∞ と考えて, f(x)≦g(x)≦h(x) かつ lim f(x)=lim h(x)=a ならば lim g(x)=a.

        f(x)≦g(x)≦h(x) は f(x)<g(x)<h(x) であっても成り立つ.

        結果
        ○ 34人 △ 11人 × 72人 教科書でなんども述べられているので,○が多い.

      17. lim(x→0) (sin x / x) = 1 の図形的意味を説明せよ.
      18. 卒業生 N君の答
        関数 sin x と x が x=0 に近いところで同じ値をとる!!

        △かな.図形的というより解析的.

        解答例
        円の弧の長さとそれに対応する弦の長さの比は, 中心角が小さければ,ほとんど1である.
        結果
        ○ 30人 △ 11人 × 76人

        これは簡単.

      19. 関数の連続を定義せよ. またその定義のセンスはどんなものか.
      20. 卒業生 N君の答
        関数 f(x) の連続性を考える. ある任意の点 a において f(a) は微分可能であるということ.…?

        微分可能は連続であるための必要条件. 「センス」とは授業中に説明した事柄だから,できなくて当然.

        解答例1
        定義:関数 f(x) が x=a で連続であるとは,  (1) 関数が,x=a で定義され,  (2) x→a のとき f(x) の極限が存在して,  (3) その極限と関数値が一致する.すなわち lim f(x)=f(a) センス: 関数 f(x) において,x=a に 近い点がいくらでも f(a) に近い点に写る.とき,x=a で連続.

        とりあえず,こんなところ. lim を使って定義されているということは f(a) の周辺の点に関する 内容になる.

        解答例(センス)
        近い点が近い点に写る.

        定義でなくセンスなので,これでも○にした.

        結果
        ○ 4人 △ 26人  センスだけの者のほうが多かった. × 87人

      21. 最大値の定理を正確にのべよ.
      22. 卒業生 N君の答
        最大値の定理は a≦x≦b の閉区間において, f(x) は最大最小を持つということ. a<x<b の開区間では,f(x)はもつかどうかわからない.

        おしい.重大な前提,f(x) が連続であることが述べられていないので,×.

        解答例
        閉区間で連続な関数は,その区間内で最大値を持つ.

        f(x) が最大値を持つことから,-f(x) が最小値を持つことがいえるから, 最小値の定理はこの定理と同値な定理である.

        結果
        ○ 9人 △ 0人 正確でないものは× × 108人

      23. 中間値の定理を正確に述べよ.
      24. 卒業生 N君の答
        関数 f(x) が a≦x≦b という定義域の中で 連続でかつ微分可能なとき, {f(b)-f(a)}/(b-a)=f'(c) となうような点 c が必ず存在するという定理.

        あれれ,これは(不正確な)微分の平均値の定理だよ.×. 連続はいいけど,開区間で微分可能と直して,c が開区間内であるとすれば, 正確.だけど,中間値の定理ではない.

        解答例
        閉区間 [a,b] で連続な関数 f(x) の最大値 M, 最小値m について,m≦k≦M である任意の k に対し, k=f(c),c∈[a,b] を満たす c が少なくともひとつ存在する.

        「存在する」というのがキモ.

        結果
        ○ 8人 △ 3人 ちょっと不十分だが,不正確とはいえないものがいた. × 106人

      1998年1月26日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 1月26日

      勉強の目的

      諸君は何のために勉強しているのだろう.
      この時期,目的を見失い勉強が手につかなくなる人が多くなってくる.
      それに対するその場しのぎの答えはもう何十年も前からいわれていて,「とりあえず目の前の現実から逃げるな.自分が飛び込んだ試練を乗り越えよ.
      勉強の目的はそれから考えても遅くはない.」

      それにしても「勉強の目的」なんてことに悩む,たわけ者がいる以上, 答えを書く必要があるな.
      まず「勉強の目的」を悩む人間は利己主義者であるということである.
      勉強の機会すら与えられることのない子どもが,世界中に沢山いるという現実がある.
      勉強したくとも貧困や紛争が勉強の機会を奪う.
      これは極端な話かもしれないが,身近なところで,私の妻も家庭の事情で大学進学を断念した.
      それゆえ勉強の目的に悩むなどというのは妻に言わせれば

      「なぁ~にをたわごと言ってんだ.そんなこと悩む人間はさっさと勉強をやめろ」

      ってことになる.
      勉強をしたくてもできない,世界中のほとんどの子どもも同意見だろう.

      でもこれじゃ解決にならないから,教えてあげるね.
      「勉強の目的」を悩む人間は利己主義者であるとしたが,その理由はもう一つある.
      それは勉強の目的が「見栄」になっている可能性があるからである.
      本校の進路指導でも「名前ではなくやりたいことで選べ」という方針を採っているのは「見栄」が目的化し悩む人間が少なからずいるからである.
      しかし18歳そこそこでやりたいことが見つかる人の方が珍しいくらいだと思う.
      そうすると,名前で大学を選び勉強の目的がばかばかしくなるわけだ.

      やりたいことがみつからないのも贅沢な悩みであると同時に,哀れでもある.
      そういう人は勉強の「自分の試練」と捉えるのも一つの方法である.
      よく昔から「若いうちは苦労は買ってでもせよ」といわれる.
      苦労を眼前にして弱虫は逃げ出すが,勇者は「成長のチャンス」の捉える.

      そもそも「悩みがある」というのはそれが「成長のチャンス」と捉えれば, 幸せなことである.もし「悩みがない」という人がいたら, 成長のチャンスがない自分を不幸だと思うべきである.

      さて,何のための勉強か.
      まず,「自分の将来をひらくため」というものがある.
      これは「なにをやりたいかわからない」という普通の人にとっては目的化しづらい.
      それに自分の将来をひらくために,他人を蹴落としていては意味がない.

      世の中助け合わないといかんというのは,昨年までの学年通信に書いた.
      その観点で勉強の目的を書かせてもらえば,「困ってる人を助けるための学力をつけるための勉強」をしよう.
      東葛生は狭い意味で高学力だと思う.
      高学力の人がそれを持たない人を,高学力をもって虐げるようなことがあったら,とんでもない暴力であり,凶器である.
      思いやりのある分かち合い社会を目指すには「持つ人は持たぬ人に」ということが基本.
      したがって,学力を持つ人は学力がなくて困ってる人のためにその学力を使うべきである.
      金もうけや保身のために学力を使う輩が多くて,いろいろ社会問題を起こしているが,「保身」というのは見苦しいねぇ.
      医者は医学知識のない人の病気を治すために学力をつけるわけだし,弁護士は法律の知識のない人がそれを理由に不利にならないための学力をつけるわけだ.
      そのほかの専門家も同様.
      みんなが勉強する目的は,困ってる人のために役立てるためだからね
      自分のためだけに勉強するなら,さっさとやめてくれ.
      そういうやつが「学力」という名の凶器を持つと,ますます世の中悪くなる.

      1998年1月19日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 1月19日

      若年寄

      なんか最近,東葛生を見ていて年寄りが多いなと思っていたが,むかしの人がすでにいろいろ指摘していた.

      ロジェ・ガローディ
      「ふつう人間は,若く生まれて年をとって死ぬと思われている.ところが,実は『真実の若さ』を手に入れるには,非常に長い修行を積まねばならない.」

      ヘルマン・ヘッセ
      「成熟するにつれて人はますます若くなる」

      「若さ」とはたとえば「現状にとどまらない精神力」.
      とりあえず3年生のほとんどは大学受験をする.
      いやでも「現状にとどまる」ことはできない.
      でも「自分からその道を選んだ」人はどれだけいるだろう.
      まわりに流されて進学するのではない,と誇れる人はどれだけいるだろう.
      現代社会のシステムは15歳,18歳に現状にとどまることを許さない.
      それはべつに悪いことではない.
      こわいのは「流されて現状にとどまらなかった人」が大学に進学してから.
      「その現状に満足」して「停滞」すること.
      それはもう精神の老化のはじまり.

      大学を終えてからも現状にとどまることはできない.
      しかしそして,大学を卒業してから完璧に停滞し,「死を迎える」人は多い.
      そして,「保身」の一生を過ごし,「保身社会」が社会の閉塞状況を生み出すわけだ.

      老化の精神の人生を選ぶ人は多い.
      つまり年齢が低いときはもちろん,年をとるにつれてさらに「頑迷,偏狭」を強める人.
      「開かれた心」や「柔軟性」は若さの特徴のように思われているが,本当は年齢とともに獲得してゆくものである.

      頭でっかちで,頑迷,偏狭,利己的,一人よがりの集まりである 3 年生諸君.
      それ以上に頭でっかちで,頑迷,偏狭,利己的,一人よがりの僕と,どちらが先に「開かれた心」「柔軟性」を獲得していくか競争だよ.
      それにしても僕の高校生のころは,みんなより「硬直した頭脳」でダイヤモンド並みだった.
      最近やっと「石頭」くらいに柔らかくなってきたように思う.

      今から,周りに目を向けて自分の世界を広げよう.
      そのための「真の学力」を身につけよう.

      1998年1月12日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 1月12日

      本を読む

      本の読み方にはいろいろある.
      今回は恥ずかしながら,私の心がけている読み方を披露しましょう.

      普通,本を読むとは単に情報として内容を受け取るなり,物語ならストーリーを楽しむという読み方をさすと思います.
      例えば古くから語り継がれる昔話や,古今の名作と呼ばれるものはまず,ストーリーに惹きつけるものがなければ万人に読みつがれるわけはないので,面白くてあたりまえだと思います.
      名作を読んだことがない人がいたら,なにか全集でもよんでごらん.
      おもしろいから.
      でもこういう読み方は面白いものが面白いで終わってしまって,本を読むというより読まれているといえなくもない.
      けど,全く読まないよりは確実に教養が深まる.

      もう少し深い読み方としては,いわゆる狭い意味で「文学」としの読み方.
      ストーリーの構成,時代背景等に思いをめぐらしながら読む.
      さらには著者の世界観や,登場人物に託した人物観を考えながら読むというのがある.
      私にとって本を読むとは自分の哲学にすることを心がけることかな.
      哲学なんていうと大げさだから,自分の生き方の糧にするというのかな.
      あ,でもこれも結局哲学か.
      哲学は学問かもしれないが,それ以上に人としての振る舞いの規範だ.
      人としてどう振舞うかを言葉にしたとたん,哲学というわけだ.
      つまり,自分の振る舞いの糧にする読み方を心がけている.

      もっと具体的に.

      昔話の「桃太郎」はみんなはどう読むか.
      桃が川に流れてきて,中から子どもが生まれるというのは,わくわくするストーリーで,もう「つかみは OK」という感じ.
      それが「日本一」の旗立てて,動物の子分を従え悪者の鬼をやっつけるなんてもう,とても痛快なストーリーで,昔話の定番としてふさわしい.
      さて,「桃太郎」が作られたのはいつ頃だろう.
      その時代の人にとって,登場人物はどういう意味を持つのだろう.
      残念ながらわたしはこういうことに興味がないのでしらない.
      こういうことを議論するのが文学だと思うけど,私は門外漢なので,違っていたらごめんなさい.

      さて,私の読み方はこうです.

      登場人物(?)の雉は「我が子を助けるためなら火の中に飛び込む」といわれ,昔から勇気の象徴だったそうだ.
      そして,犬は誠実の象徴だそうで,これは現代人も納得できるかも.
      サルはやはり知恵の象徴.これで桃太郎を読むと,誠実,知恵,勇気を手に入れるためには物的財産(きび団子)を惜しむな.
      そして,誠実,知恵,なにより勇気をもって人生の困難(鬼)に立ち向かえば,人生に勝利できるであろう.

      こういう読み方は当然,一通りではないし,かなり個人的といわれればそのとおりである.
      しかし,せっかくいそがしい時間をさいて本を読むのだから,十分思索して自分の振る舞いの糧になる読み方をしたいものである.
      ただの娯楽なら今は本など読まなくても,現代は十分な娯楽が供給されている.
      私は名作が読み継がれる理由は面白さだけではなく,生き方の糧として耐える哲学があるからだと思っている.
      今まで,食わず嫌いで本を読まなかった人は,だまされたと思って名作とよばれるものを読んでみよう.
      視野が広がるよ.いま,そんなひまはないかな.

      1997年12月22日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 12月22日

      で,どうするか

      の問いに対しては,ふつう次のような答えが返ってくることが多い.

      1. 「できない」という現実的な答え
      2. 非現実的なとっぴな解決方法
      「できない」とあきらめるのが簡単だし現実的だから,多くの人は現実の閉塞状況に絶望して,あきらめのため息をつく.
      「とっぴな解決方法」というのは奇抜な考えながら,逆説的な深い考察もなされていたりして,結構おもしろいと納得させられたりするものであるが,結局は「できない」とあきらめているのと大差はない.
      たとえば「現代文明が諸悪の根源だから,自給自足の生活をしよう」などは好例.
      私に言わせれば「観念の遊戯」である.
      まぁ,実際にやっている人もいて尊敬するが,独り善がりだと思う.
      いったいそれでアフリカの飢餓の子供を何人救えるのだろう.
      アフリカの飢餓は地球にやさしいからそのまま続けていろとでもいうのだろうか.

      ではどうするか.
      前回まで書いた,「生命の尊厳」「非暴力」「反権力」「利他の精神」をみんなで共有すればよい.
      こういうと「そんなの無理だよ」と思う人もいることだろう.
      短気を起こすのはテロと同じでだめだというのは,前に書いた.
      現実から目をそらさずに,まっすぐ見ることも書いた.
      書いていないのはその実現方法だが,それはただひとつ.
      その理想を

      隣の人に話す

      しかない.
      いちばん簡単そうで実は一番難しいことだよ.

      人間は命令されて動くものではない.
      まずは利害で動く.
      しかし利害だけで動いた結果が,現代社会だ.
      つぎに理想に燃える使命感と責任感が人間を動かす.
      過去の多くの革命がそうだったように.
      利害から使命感へ.
      それに気づかない人がいたら,徹底的に話し,粘り強く対話する.
      短気を起こして権力を行使したら一瞬にして人間不在になってしまう.
      非暴力は比較的浸透しているようだが,反権力,利他の精神はまだまだである.

      「そんなことじゃ何年かかるかわからないよ」と思うかもしれない.
      でも,他に方法があるなら教えてもらいたいものである.
      社会制度を変えるとか,教育制度を変えるとか,システムを変えるというやりやすいことは今までも曲がりなりにも繰り返されてきた.
      そして,システムを変えて,そこに安住しすぎていたのである.
      あとやることはひとつ,一人一人が自覚するだけ.
      だからそれには自覚した人が,まだ気づいていない人に徹底的に粘り強く対話するしかない.
      これが遠回りのようで一番の近道です.

      たとえば「民主主義=多数決」と思ってはいないだろうか.
      議論もろくにせず多数決で決めてしまおうとする姿勢は,以前に書いた権力主義(多数決の暴力)であり,民主主義ではなく多数決主義といえる.
      民主主義の基本は徹底した対話と議論です.
      そしてすべての主張の考えられうる利点と問題点を列挙したうえでの最終判断としての多数決がある.

      ろくに対話もせずに「○○が悪い」と指摘するのは簡単.
      対話をしよう.
      議論しよう.
      そしてどうすればよいか現実的な思索をしよう.

      混沌の東葛高校だって同じだよ.
      何人かの問題意識のある生徒の存在は知っている.
      しかし,それが広まらないのは,「言ってもしょうがないよ」とあきらめているからじゃないのか?
      あきらめて,ため息だけでは絶対に解決しない,無理だと思えば永久に進展しない.
      必ず解決するとの信念を持ち,粘り強く対話を進めれば必ず解決する.

      私は楽観主義者なのかもしれない.
      「人はだれでもすばらしい個性をもっている」というのは私の信念というか,これこそが思想である.
      それに訴えれば必ず理解してもらえると信じているから,対話で解決すると信じます.
      この小文はみなさんのすばらしい個性に訴えているつもりです.
      悲観しては絶対に解決しないからね.

      悲観する人のとる態度は権力行使だよ.
      つまり短気を起こして,人に命令する,あるいは無視してまなざしの暴力をふるう.
      完全に人間不在だね.
      人間として生まれてせっかく言葉がしゃべれるのだから,どんどん話そうよ.
      これを読んだ人の中で一人でも共感する人が出てくれれば,この小文の目的は達成です.
      そのなかから,対話の行動に打って出る人が現れてくれればもういうことはない.

      1997年12月16日火曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 12月16日

      管理

      東葛高校は見てのとおり,さながら「無法地帯」と言ってもよいくらい「乱れて」いて,「管理教育が必要かも」という考えを持つ人が,生徒の中にも出てくる.
      「管理」というのは「権力」をふるえばよいので,コストはかからない.
      そして,見た目は「規律正しく」見えるようになる.
      学校が生徒に権力をふるうのはたやすいことである.
      成績とか内申書とか在籍という伝家の宝刀をちらつかせればそれでよいから.
      管理に従わない生徒は教育方針に合わないというもっともな理由をつけて退学させればよい.
      そこまでいかなくとも,管理教育は楽なものである.
      生徒の話を聞くことなく規律違反を指摘すればすむから.

      管理教育というのは生徒に権力を振るうという一面のほかに,
      それによって生徒を大人の保護下に囲い込むという面がある.
      つまり生徒を子ども扱いをして考えない人間を大量生産するのである.
      これはこの数十年以上「普通の」学校で行われてきた教育に他ならない.
      その結果がこの乱れた現代社会である.
      考えない人間がそのまま社会に大量に送り込まれているのである.

      行動経済成長のころは考えずに会社に忠誠を尽くす人間が重宝された.
      企業も世界から隔絶されたニッポンのなかでぬくぬくしていたので,これでよかった.オイルショック以降,会社も生き残りのために考える人間をほしがるようになが,残念ながら,管理教育の甘い汁を捨てきれない学校は変わることがなかった(変わったのは東葛高校くらい).
      以前書いたように,一度手にした権力は手放したくないものである.
      会社は金儲けという目標があるから,儲けるための権力構造を変えることなく,考える社員の育成に取り組めたが,学校の持つ権力は小手先の管理教育のみでそれを捨てることは学校そのものの否定につながるため,何も変わらなかったし,それどころか多くの学校で管理強化が進んでいる.
      東葛高校はこの十年くらいの間に,ずいぶん乱れてきたようである.
      これは中学の管理強化の結果,考えない生徒が増えたのも原因の一つかもしれないし,さらには教師集団も教師自身が受けた管理教育の結果,残念ながら教師集団の指導力が落ちているのも原因だろう.
      生徒の中に管理教育是認の考えが出てくる理由は,まずこの乱れた状況を「なんとかしなきゃ」と思うことから始まる.
      それは大変よいことだが,それに対して無力な自分を思うと,「学校で管理教育始めてくれないか」ということになるわけだ.
      これも「自分の手を汚さず,学校をよくしよう」という前々回書いた自分は手を下さないという形の権力行使なわけだ.
      われわれ教員にとっても「規則だから守れ!」というは楽だから,自分で手を下さず規則に教育させる権力体質を持っている.

      社会の閉塞状況をどうするか,というのは実は混沌の東葛高校をどうするか,と同じである.学校はシステムなので,管理教育の導入はたやすい.
      行政がその気になればいつでも東葛高校に管理教育を導入できる.
      まず管理教育にふさわしくない教員が転勤させられる.
      そうすると,自治が崩壊しつつある生徒集団も組織的に反対することは難しいだろう.
      PTAも管理教育を前にすると,子供が人質にとられていると考えるようになるから,反対しないどころか,さらには管理教育で子供がよい子になると思う勢力が台頭し,賛成するかもしれない.

      でもみんなにはすでに使っている最終兵器「なしくずし」があるから大丈夫.
      心の通わない管理教育にはハイハイと生返事して,背中を向けて舌を出すという手がある.
      しかしこれは社会の閉塞状況の解決には通用しない.
      社会で通用しないことを学校で導入しても本質的な解決にはならない.
      社会が何でもありなのに,学校だけが管理したらどうなるか.
      学歴社会のおかげで学校から逃げ出せずにいる生徒は,「生返事,舌出し人間」つまり利己的で要領だけがよい人間となっていく.
      たぶん見た目は今より規律正しく見えるようになるだろう.
      そして,学校は悪を社会に責任転嫁して自己満足にひたり,ますます社会が悪くなっていくのである.

      で,どうするか.社会も学校のように管理強化するか.
      管理強化したい勢力もある.
      さらには短気を起こして暴力で社会変革しようとするのがテロである.

      結局,管理も「粘り強い対話は手間がかかる」から,短気を起こして用いる手段だ.
      私に言わせれば,管理教育は精神のテロといわざるをえない.

      なかなか第1回の「どうするか?」の答えにたどりつかないな.
      毎回書こうとして,話がそれてしまう.次回は必ず書くぞ!

      1997年12月8日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 12月8日号

      席を譲ろう

      学級日誌に電車の座席を譲る難しさ(譲ったら「そんな年寄りではない」と言われ気まずかった)が書かれていた.
      私の対処方法を伝授しましょう.

      以前私は「すわらない」という方法をとっていました.
      特に学生のころは「この年で座るのはみっともない」とすら思っていました.
      でも,これだと「本当に必要な人に席を譲れない」という重大な欠陥があることに気づき,今では,ゆっくりと座れるときは座るようにしています.
      私が座席に座るのは,必要な人へのリザーブです.

      で,難しい譲り方ですが,荷物がたくさんあったり手を伸ばせなくてつり革につかまるのが苦しいお年寄りなど,明らかに譲るべき人の場合声をかけて譲ります.
      このようなお年よりは,出入り口付近の手すりにつかまっていることが多いので,かなり遠くても声をかけて譲るのです.
      まぁ,これはだれでも出来るでしょう.万一断られちゃったら,座りなおすのも気まずいので,さっさと「次で降りますから」と他の車両へ逃げます.

      次に,断られる可能性のある(つまり弱者扱いされたくない)人の場合ですが,これは向こうから近づいてくれないことにはスマートに譲れないので,遠くにいる人には譲れなくて残念です.
      どうするかというと,声をかけずにいかにも「用事を思い出した!」という雰囲気で席を立ち,さっさとその場を離れ,他の車両に乗り換えるのです.
      停車中なら電車から降りて違う車両に移ります.
      こうすると,親切の押し売りにならず,気まずい思いをすることなく座席を譲れますよ.
      問題は.自分ひとりで乗車しているときではない場合,この「立ち去る」というワザが使えないのです.
      このときは,私ははじめから「座らない」ワザで対処しますが,必要な人のためのリザーブが出来なくて申し訳なく思います.

      さて,第1回に社会の閉塞状況を指摘して,それについての態度を考えてもらいました.
      それに対し,「環境問題を除いて,人を人と思わない意識に起因する」という原因を指摘してくれた人がいました.
      そう,常に社会で起きていることについて思索することは大切なことです.
      一人の人間の幸福,充足感というものは,結局人類全体のそれでなくては単なる利己主義者で意味のないものです.
      利己主義を捨て,社会全体に目が行くというのはそのような社会実現への第1歩です.
      僕らの力は地位差が,その一つ一つの集まりが社会を形成しています.

      で,人を人と思う社会をどう築くか.
      戦争をなくすには?
      いじめをなくすには?
      さべつをなくすには?
      自分はどうするか.
      紙面が尽きた.

      1997年12月1日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 12月1日号

      権力

      前回まで,「権力」ということばを「公権力」という狭い意味で用いたけど,広い意味ではどこにでも転がってます.

      自分が手を下さなくても誰かが代わりにやってくれるという立場の人を「権力者」といい,権力意識はその自分の立場を特権的に守ろうとするとき,誰にでも出現する.
      それは,「今のままでいい」「違う立場に関心ない」「違う立場より自分が優位だと思いたい」という欲望で,認識面では「決めつけ」「単純化」,行動面では「優柔不断」「他者への命令」が特徴.(ミシェル・フーコー 要旨)

      私はこの権力意識はある種の動物的本能,自己防衛本能だとおもいます.
      簡単に言うと,例えば「高卒なんて馬鹿さ」という連中がいます.
      そういう大卒の連中は頭がよいのでしょうか.
      決してそうではないですね.
      これが権力意識です.
      「女だからそんな仕事は無理だ」というのいます.
      「○○出身だから」「○○党だから」「障害者だから」「○○教だから」「○○病だから」(きめつけ)等々あげればきりがありません.

      つぎにいじめにあってる子がいるとします.
      いじめる人はもちろんですが,実はそれを見て見ぬ振りをしている人も権力を振るっています.
      この場合,見て見ぬ振りをする人は自分を安全地帯において(つまり自分の立場を守って),けっしていじめられる側に身を置こうとはしません.
      これは「まなざしの暴力」という名の権力行使です.

      直接権力を下さなくても卑怯な傍観者は権力の味方になるのですよ.
      「悪いことをすること」,「よいことをしないこと」は同じか違うか.
      「よいことをしないことは」かならず悪い権力の味方になります.
      つまり不善は悪と同じです.
      したがって,「みんながそうだから」,「習慣だから」,「しきたりだから」と無批判に従うのも,どこかで何らかの権力の味方になります.
      先日の卒入対委員会の討論でこういった理由で意見を述べる生徒もいて「若いのに保守的だな」などと思いました.
      「しきたり」とか「習慣」といのは,歴史のある時点で作られたものに過ぎず,結構一部の特権保持に役立っているものも多い.
      「常識は時間の関数である」(A.アインシュタイン)

      「それで傷つく人,いやな思いをする人はほんとうに誰一人いないのか?」という意識をもってほしいものです.
      でないと,知らないに間に「いじめる側」に立ってしまうよ.
      そのとき「知らなかった」では済まされない.
      というより「知らなかった」で済ましてきてしまったのがこの社会です.
      権力は今後も「知らないふり」で通そうとしています.
      「人権」「権力」に対する感性を磨いてね.
      「誰かを傷つけるかもしれないから怖い」と思うかもしれない.
      でも社会が悪いといってるだけじゃ世の中よくならない.
      失敗してもいいじゃない.今から始めよう.

      こういうことを書くと,社会的地位が高くなることが悪いことのように聞こえるが,そうではないよ.
      今,社会的地位の高いやつにろくなやつがいないから「なりたくないよ」と思うかもしれないが,みんなの中には,いやでも社会的地位が高くなる人もいると思う.
      そのとき,弱者から収奪する「弱者利用の権力者」ではなく,社会的弱者に希望を与える「弱者奉仕の指導者」になれば,それだけで社会は少しよくなる.
      そのために今から「利己主義の傍観者」をやめて「人道主義の行動者」を目指して勉強,思索,行動を開始してほしい.
      勉強の目的はそこのあるんだよ.
      行動する中でのみ自分が磨かれる.
      その行動で,自分の美学,思想を確立してください.

      1997年11月25日火曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 11月25日号

      学問の自由

      先日の学年PTA企画のパネルディスカッションで「大学の授業はつまらないものが多い」という現役大学生の声があった.
      逆に「面白い授業」とは何だろう.
      「ためしてがってん」とか「動物奇想天外」とかも「授業」とすれば面白いほうかもしれない.
      テレビのようなメディアの特性として,視聴者に「頭を使って考える」ということを要求できない.
      逆にそれを要求すると「教育テレビ」みたいなつまらないものになるかもしれない.
      もしかして,面白い授業は「頭を使わずにわからせてくれる授業」と思ってはいないか.

      「面白い授業がよい」と言われるようになったのはいつのころからだろう.
      少なくとも,私が高校生のころはそれを期待してはいなかった.
      当時「○○先生の授業は面白い」というのはあったかもしれないがそれは「個性」であって,だからといって「つまらない授業をする××先生よりよい」とは思わなかった.
      つまらなくても一定のレベルさえあればみなそれに期待していた.
      まぁ,高校進学率が9割を超えた昨今では学問的レベルより,
      「授業の面白さ」で生徒を惹きつける必要はあると思う.
      しかし大学の授業にそれを期待すべきではない.
      大学の先生は「教育者」である以上に「研究者」であるべきで,学生へのおべっかにうつつを抜かすひまがあったら,学問の研究を進めてもらいたいと私は思う.
      授業のレベルについてこれない学生は落とせばいいのだ.
      大学が,中学や高校のようになったら意味がないと思う.

      学問の自由とは,もちろん権力からの束縛を受けないということではあるが,難解な内容,不親切な授業,くだらない受験勉強という邪魔にもめげずに学問を究めるという諸君の権利であるはず.
      「知らないことを知りたい」という人間のもっている根源的な欲望の発露が学問であるはず.
      それがつまらないと思う人は面白さを期待する前に,さっさと学問から離れてほしい.

      学問をつまらなくしているのは学歴社会だと思う.
      進学の目的は学問ではなく「学歴」なのだ.
      くだらない見栄のための勉強が楽しいはずがない.
      テストのために勉強するのはいやなものだが,学歴社会は社会制度だから,ふるいにかけるためにテストがあるし,この制度の中に安住しようとする限り,テストは続くよどこまでも.
      そんな中で,それにも負けずに「学問する」のが学問の自由だ.
      テストのための勉強がいやな人は,この制度から抜け出して「実力」で世の中を渡り,学歴だけを鼻にかけるやつらをだしぬけばよいし,そういう人もたくさんいる.

      それにしても数学は面白い.学問としてこれほど楽しいものはない.

      1997年11月17日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 11月17日号

      言論,表現の自由

      学級日誌の記述を学年通信に転載することの是非が前号のサボテンに出ていて,そこには生徒の著作権(無断で転載されない権利)がないとありました.
      知らなかったと思うけど,学級日誌の法律上の位置づけは「公募に準ずるもの」だったようにおもう.
      公費(税金)を使って紙や表紙が用意されるのも私的なものではないからで,保管場所が教室ではなく教務室の前であるのは,単に教員にとって便利だからではなくて「校内の誰でもが閲覧可能である」ことを保証するためなのです.
      公費が投入された公的日誌なら当然のことですね.
      だから転載の是非は生徒の著作権ではなく,自由閲覧可能である公的日誌の内容が別の誌面に転載される是非にさかのぼって,議論する必要があるわけです.
      逆に記載する生徒は公的であるゆえ,誰に見られても差し支えのない内容を気遣うことが求められます.
      本校の良いところは検閲をしないことですね.
      これは記載者の良識が求められます.

      検閲といえば「言論の自由,表現の自由」なんてことを思い出します.
      「言論の自由,表現の自由」というと,「なんでもあり」と履き違えている社会の風潮があって,一部マスコミ等はその錦の御旗の元に人権侵害を繰り返したり,わいせつな出版物を店頭に並べさせたりしています.
      皆さんは「言論の自由,表現の自由」の本当の意味を知っていますか?

      「言論の自由,表現の自由」というのは「言論表現によって公権力に取り締まられない」だけであって,「なんでもあり」ではありません.
      「なんでもあり」と思っている一部マスコミは「知る権利」まで持ち出して個人のプライバシーを晒します.
      数年前に,街宣車の音を規制しようと東京都で条例を設けようとして,市民の反対で取りやめになりました.
      うるさい街宣車を見ると一見「うるさいから取り締まってくれないかな」と思うかもしれません.
      しかし,どんなにうるさくても警察等が取り締まるのは「言論表現の自由」の侵害です.

      ではどうするか.うるさいと思う市民が集まって抗議すればよい.
      市民の集まりは「公権力」ではないから「自由の侵害」にはあたりません.
      つまり「マナーが悪いぞ」と教えればよいわけです.
      同様に良識のない出版物は市民の力で排除すればよい.
      良識のない出版物を「法律で取り締まってくれ」というのは,そもそもの発想が憲法違反です.
      法律で取り締まるのではなく,市民の力で排除する.
      これが民主主義というものです.
      つまり,人権侵害や公序良俗に反するような腐臭を放つ出版物は,神戸の事件の写真の件のように「店に置かない」,「買わない」ことによって,社会から排除すべきであり,権力による出版差し止めはどう考えても憲法違反です.
      逆に市民の不買運動等,市民の側からの排除は言論の自由の侵害にはあたりません.
      出版社が何を出版するかは自由,それが言論の自由.
      腐った表現でも出版は自由.
      ただ市民が「腐ったものは買わない」,「うちの店は腐ったものは置かない」と皆で良識を持って社会から排除すればよい.
      それを権力に肩代わりさせてはいけない.

      でも店に並べればたくさんの人が覗き見趣味で買うんだろうし,街宣車だって一朝一夕にはなくならない.
      これも現代の閉塞状況.
      だからといって,権力に判断をゆだねるのは危険だ.
      結局一人一人がモラルを確立するしかないわけだ.

      道は遠いけどそれしか方法がない.
      短気を起こしちゃだめなのよ.

      最後に人権侵害某雑誌言い訳
      「われわれは国民の知る権利に応えている.それがだめだというのは知る権利の侵害,言論の自由の侵害である.」
      これに反論してください.
      簡単でしょ.

      1997年11月10日月曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 11月10日号

      両端揃え命を大切に

      未成年の喫煙,飲酒は法律で禁止されている.
      それは未成年を束縛しているのだろうか.
      その法律で罰せられるのは誰か.
      たばこや酒とは次元が違うが,あるアンケートでは薬物の使用も本人の自由であると考える者も増えているようだ.
      善悪の判断さえ,本人の自由であるということか.

      生物がどのようにその命を維持するかを考えてみよう.
      ほとんどの植物は太陽の光からそのエネルギーを得ることが出来る.
      それに対し,動物は必ず他の生物を摂取しなければ生命を維持できない.
      つまり,動物は他の生物の犠牲の上に生命を維持しているわけだ.
      命が大切な理由は何だろう.
      養豚場のブタは人に喰われようと思って生きているわけではないし,畑のキャベツだって人に喰われるつもりで生えているわけではない. (喰われたいと思っているのは果実だけ)
      みんなが意識しようがしまいが,生命の維持のために,生命の殺戮は行われている.
      だから,命が大切なんだよ.
      君の命は他の命をもらって維持しているんだ.
      だから粗末にしてはいけないし,食べ残しや好き嫌いが良くないことにもつながる.

      善悪の判断基準

      話は変わるが,善悪というは,相対的なのだろうか,絶対的なのだろうか.
      現代は価値観が多様化しているといわれ,「人に迷惑をかけなければなにしてもいい」風潮がある.
      つまり,善悪の判断も個人の自由と思われはじめている.
      ほんとかな.私は善悪はそんな相対的ではないと考えている.

      「命を大切に」でも書いた通り,地球の生命を粗末にする行為はすべて「悪」に違いありません.
      人間が地球に対して行っている残虐行為を考えると今すぐ人間をやめたくなるが,生き物の一員である以上自分の命を粗末にすることも地球生命に対する反逆なので「悪」です.
      自殺などは私に言わせれば,殺人罪だ
      つまり,生きることも悪かもしれないが,だからといって粗末にすることも悪である.
      逆に良いこととは,自分も含めて地球のすべての生命を生かす努力をすること.
      自分の生命維持のために最小限殺めるのはしかたがない,それがもともと動物の背負っている宿業だから.
      だからそのために死んでくれた生命への感謝の気持ちは忘れない.

      自分の人生,自分の命だから勝手にしてほしいと思うのは,せっかく命を育んでくれた地球に対する冒涜で「悪」です.
      だから人間という生き物である以上,人間として精一杯価値的に生きることが,せめてもの地球への恩返し.

      環境,社会,差別… この視点で見るとあらゆるものの善悪が見えるよ.

      1997年11月4日火曜日

      1997年度学年通信「さぼてん」より 11月4日号

      はじめに

      「サボテン」の「ひろば」の中に

      最後の○○

      という言葉が増えてきて,感慨を覚えます.
      この時期,一つの節目が近くなり,それぞれに思うことがあるのでしょう.
      私のところにも「広報東葛,卒業号」の「卒業生に贈る言葉の原稿依頼」が来ました.

       どうも私は「節目」が苦手で,冠婚葬祭すべて駄目です.
      というより,皆がある一つの感動なり悲しみなりを分かち合う場面がどうも苦手です.
      文化祭でクラスのみんなが感動している時に担任として何か言えば,普段授業で寝ていたり内職している人でも,素直に心に染み入るのだろうと思います.
      でも,なんだか「感動の場面を利用して小言を伝えている」ようでフェアじゃない気がするし,だいいち照れ臭い.

      卒業式ではほとんどの人が感動すると思います.
      そこで何か言うときっと心に残ると思います.
      私の気持ちとしては

      「あー!はずかしー」

      だから去年の卒業式での私の言葉は,

      「卒業おめでとう,お元気で.」

      その後のクラスでの最後のホームルームでは,5分で通知表その他配布物を配って「さようなら」.
      感動の場面で素直に感動を共有できないというのは,つまらない性格だと思う.
      みんながうらやましい.感動の輪の中に入れないというのはさみしいものです.

      で,今年もそうなると思うので,今のうちに言い訳をしておいて,その場では言えない普段思うところを書きます.

      いま

      人類がいるおかげで,地球上の生物の滅亡が速まっているのはみんな知っていることだと思う.
      そして食べ物が余って大量の残飯を廃棄する国と,飢餓で苦しむ国があるし,銃声の絶えない地域がある.
      それから,報道機関と警察の結託で,無実の罪を着せられた人もいるし,だいたい報道機関の姿勢は「逮捕=有罪」だ.
      官僚の賄賂の授受も横行し,企業の不正も絶えないし,政治家は名誉と保身と票にしか頭にないし,モラルもなくなり,「医師や弁護士や教師や警察官もやっぱり人の子だ」という言葉しか出ない破廉恥な事件も多い.
      HIVを病気の治療で感染させられた人もいれば,世の中の差別がなくならないことも知っていることと思う.
      外国人は理由なく怖がられるかあるいは変に意識されるし,日本宗(正月は神道,葬式は仏教,結婚はキリスト教)から逸脱すると,「常識」を疑われるか変わり者扱いされる.

      こういった世界の閉塞状況をどうとらえるか,さらには,解決できるのか.

      1. 自分で解決する
      2. 誰かが解決するだろう
      3. どうせ解決できない.あきらめる
      君ならどれにあたる?
      テーマを絞っても良いので,学年通信に投稿して下さい.
      私も次回までに考えます.

      1997年7月13日日曜日

      生徒会指導の諸原則

      次の11項目は1968年以来,教育改革を経て,職員会議の討論の積み重ねの上に,確立されてきた原則である.



      1.生徒の自主的能力を育成する.


      補足1.自主的能力とは,生徒たちが皆で決めて,皆で守る能力,および生徒たちが,自分たちの要求をまとめ実現していく能力を言う.現在の生徒に自主的能力があるとは言えない(潜在的にはある)という前提にたって指導する.

      2.生徒会を民主的なものとして育成する.


      補足2.生徒会も放置しておけば非民主的,官僚主義に陥る.民主主義的方法と,考え方を教えることが必要となる.

      3.生徒会が生徒全体のものであるように指導する.


      補足3.執行部と生徒会員とに断絶ができたり,学校職員の手足に過ぎなくなっては民主主義は育たない.

      4.生徒の十分な討論を保証する.


      補足4.たとえその発言が偏ったものであっても,それを封殺してはならない.十分な討論の場を保証することによってその偏りを理解させるべきである.

      5.生徒会執行部は生徒のどんな要求でも吸い上げるようにする.


      補足5.生徒会執行部が生徒全員の要求に耳を貸さなくなれば,生徒会不信が増大し,無関心を生む.

      6.要求を妨げたり,それがまとまらないようにする行動をしない.


      補足6.職員にとって不都合な内容の提案だからといってそれを途中で押さえて議論させなかったり,決定を妨げるならば,問答無用の直接行動に生徒を走らせることになる.(もちろん合理的批判をして,生徒に正当な判断を促す助言は大いにすべきである.)

      7.要求が全生徒のものである限り,最大限尊重する.


      補足7.教育的見地からどうしても受け入れられないものあるが,出来うる限り尊重する.(要求の獲得体験も大切である.)

      8.民主的な手続きを踏んだものに限り生徒全体の意志とみなす.


      補足8.特に全校委員会の決定や,生徒総会の決定は,誠意を持って取り扱い,顧問段階で是非を判断せず,原則として職員会議で審議する.

      9.生徒の要求を妨げたり,避けたりしない.


      補足9.個々の生徒,個々のグループは逸脱するかもしれない.しかし,生徒全体は,冷静で充分な民主的討論ができれば,大きくは逸脱しないだろう.

      10.生徒と職員の意見が食い違ったときは連絡協議会で協議する.


      補足10.えてして,顧問は指導責任を追及されるのをおそれて,職員の認めそうもない案を事前につぶそうとするが,かえってそれが生徒の感情的反発を買い,逆効果になりかねない.顧問の指導にも限界のあることを前提にしての連絡協議会であり,時には,職員の総意に基づく話し合いが生徒によい教育の機会になる.

      11.職員,父母,生徒の三者の協力と共通理解の上で民主的教育を本校に建設する.


      補足11.生徒だけの独走も,職員だけの独走もよくない.常に三者の合意を図るような話し合いの原則こそ東葛飾高校の民主的伝統である.(言うまでもなく,その上での最終判断は職員が行う.)

      (注)原文においては,本文と補足は別々に書かれているが,ここではわかりやすいように並べて記した.

      1997年7月10日木曜日

      Clothoid (クロソイド)

      東葛飾高等学校 氏家 悟
      1997年7月

      (これは千葉県高等学校教育研究会数学部会誌に1997年に掲載したもの)

      カーブの走行

      自動車を運転していると,たいしたカーブでないのに,カーブの入り口と出口で急ハンドルを切らなければならない場面に遭遇することはないだろうか.それに対し,インターチェンジの中のカーブは,滑らかなハンドル操作で走行することができる.

      出入り口で急ハンドルを要求されるカーブは,カーブを円に,直線部分はその円の接線になるように設計されていると考えられる.その理由は,まず直線を走行するときはハンドルは直進のままであり,円を走行するときはハンドルの角度は一定のままのはずである.ここで,直線から円にさしかかるときは,ハンドルを一気に円の走行にあわせなければならないため,急ハンドルを切ることになる.カーブの出口でも同様である.実際は道幅を有効に使って,滑らかにハンドルを回すわけだが,田んぼの中の道のように,狭い道路でも見通しがよくスピードが出ていると厳しい状況になる.

      高速道路ではそのようなハンドル操作が要求されることはない.それは,道幅が十分にあるからだけではなく,カーブの出入り口を定速で走行する車は,ハンドルを一定の角速度で回転させればよいような道路設計になっているのである.このような曲線をクロソイド(clothoid)という.道路が円と直線で作られていても,道幅を使って円の一部をクロソイドに沿える自動車は問題無いが,レールの上を走る鉄道では切実な問題となる.自動車のハンドル操作を考えれば,クロソイドに沿って線路を設置しなければ危険極まりない.


      図はカーブの内側が円,
      外側がクロソイド.クロソイドの方がハンドルを切る量は大きいが,操作が滑らかになる.


      求める



      ハンドル操作での曲線の定義は素朴で高校生にも理解できる内容なので,
      「速度,加速度」の授業で扱えないだろうか,と考えたのがきっかけである.

      クロソイドの方程式はどこかの本を調べれば出ていると思ったが,
      ハンドル操作から求められるのではないか思い,実際簡単に求められたので本誌に投稿した.

      自動車のハンドル操作から考えられるクロソイドの定義は次の通りである.
      • 速さは一定.つまり速度ベクトルの大きさは定数.
      • ハンドルを一定の速さで回転させるので,加速度ベクトルの大きさは時刻に比例して大きくなる.
      さて,速さが一定ということから,簡単のため速さが定数の 1 ということにすると,