1999年7月21日水曜日

放物線の長さ

アクセスログによると「放物線の長さ」で検索して,テスト回答にたどり着く人がけっこういる.

きっと,放物線の長さを,計算しようとして行き詰まった人が,ネットで検索したのかな?

それとも,先生から「面白いからためしに計算してみなさい」と課題でも出されたけれどできなくて探したのかな?

まぁ,根性で計算すれば高校の知識で求められる問題ではある.

残念ながら,解答ページには放物線の長さの計算はないので,がっかりしたことでしょう.

ということで,このページに書いてしまおうと思ったけど,人の答えをネットでお気楽に見つけて「課題をやりました」,あるいは「わかったつもり」というのでは,勉強にならない.

苦労してもらいましょう.

解答をフリーの組版ソフト TeX(テフ) で組みました.その TeX のソースをこのページの最後にそのまま置きました.

私の解答を手に入れる方法をここに書きます.

  1. ソースを自分でタイプセットする.(なければ自分のマシンに LaTeX をインストールしよう)
  2. TeX がなくインストールする根性もなければ,ソースはプレーンのテキストだからソースを解読する.
  3. 私に質問をして聞き出す.
  4. 私はタイプセットしたものをpdfで持っています.苦労や努力が嫌いで自力でやるのがいやな人は,「ファイルをください」とメールする.

2003年12月3日追記

2003年12月3日に,千里国際学園のB先生からいただいたメールでの指摘に基づき,いくつかの本文中の記号などのミスを訂正し,訂正では書ききれない部分を最後に追記した.

2003年12月4日追記

逆双曲正弦関数 Arcsinh x は Log で書けるのでした.


\begin{verbatim}
以下TeXソース



\documentclass{jarticle}

\title{放物線の長さ}
\author{くろべえ}
\date{1999年10月}
\西暦


\begin{document}
\maketitle

放物線の長さを求める問題は,高校の範囲でできるとはいえ,結構厄介である.
ここでは $y=x^2$ の区間 $[0,\ 1]$ における長さを求めてみる.

$y=f(x)$ の区間 $[a,\ b]$ における長さは,
高校の教科書によれば
\begin{quote}
$\displaystyle\int_a^b\sqrt{1+(f^\prime (x))^2}\,dx$
\end{quote}
で与えられる.

$f(x)=x^2$ とすれば $f^\prime (x)=2x$ より,区間 $[0,\ 1]$ における長さは,
$\displaystyle\int_0^1\sqrt{1+(2x)^2}\,dx$ で与えられる.

\begin{quote}
$\displaystyle
\int_0^1\sqrt{1+(2x)^2}\,dx \\
= \int_0^1\sqrt{1+4x^2}\,dx
$.
\end{quote}
ここで,$2x=\tan\theta$ とおけば $4x^2=\tan^2\theta$ で,
積分区間は$x$ が $[0,\ 1]$ だったので,
$\theta$ は$\tan \alpha=2$ に対して $[0,\ \alpha] $ となり,
$dx=\frac{1}{2\cos^2\theta}\,d\theta$ より,
\begin{quote}
$\displaystyle
\int_0^1\sqrt{1+4x^2}\,dx \\
=\int_0^\alpha
\sqrt{1+\tan^2\theta}\frac{1}{\cos^2\theta}\,d\theta \\
=\int_0^\alpha
\sqrt{\frac{1}{\cos^2\theta}}\frac{1}{2\cos^2\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{1}{\cos\theta}\frac{1}{\cos^2\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{1}{\cos^3\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{\cos^4\theta}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{(\cos^2\theta)^2}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{(1-\sin^2\theta)^2}\,d\theta
$.
\end{quote}
ここで,$\sin\theta=u$ とおけば $\cos\theta\,d\theta=du$ で,
$\theta$ の積分区間は $\tan \alpha=2$ に対して $[0,\ \alpha]$ だったので,
$\sin\alpha=\sqrt{1-\cos^2\alpha}=\sqrt{1-\frac{1}{1+\tan^2\alpha}}
\sqrt{1-\frac{1}{1+2^2}}=\sqrt{\frac{4}{5}}=\frac{2}{\sqrt{5}}$ より,
$u$ の積分区間は $[0,\ \frac{2}{\sqrt{5}}] $ となり,
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{2}
\int_0^\alpha
\frac{\cos\theta}{(1-\sin^2\theta)^2}\,d\theta \\
=\frac{1}{2}
\int_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\frac{1}{(1-u^2)^2}\,du \\
$
\end{quote}
$\frac{1}{(1-u)^2(1+u)^2}$ を部分分数に分解する.
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{(1-u)^2(1+u)^2}
=\frac{a}{1-u}
+\frac{b}{(1-u)^2}
+\frac{c}{1+u}
+\frac{d}{(1+u)^2}
$
\end{quote}
とおき,両辺に $(1-u^2)^2$ をかけて分母を払うと
\begin{quote}
$\displaystyle
1 = a(1-u)(1+u)^2+b(1+u)^2+c(1-u)^2(1+u)+d(1-u)^2 \\
1 = (-a+c)u^3+(-a+b-c+d)u^2+(a+2b-c-2d)u+(a+b+c+d)
$
\end{quote}
これは恒等式だから(要するに左辺を $0u^3+0u^2+0u+1$ と考え係数を合わせて)
\begin{quote}
$\displaystyle
-a+c=0,\\
-a+b-c+d=0,\\
a+2b-c-2d=0,\\
a+b+c+d=1.
$
\end{quote}
この連立方程式を解くと,$a=b=c=d=\frac{1}{4}$ より
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{2}
\int_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\frac{1}{(1-u^2)^2}\,du \\
=\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{4}
\int_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\left(
\frac{1}{1-u}
+ \frac{1}{(1-u)^2}
+ \frac{1}{1+u}
+ \frac{1}{(1+u)^2}
\right)\,du
\\
=\frac{1}{8}
\left[
-\log(1-u)+\frac{1}{1-u}+\log(1+u)+\frac{-1}{1+u}
\right]_0^\frac{2}{\sqrt{5}}
\\
=\frac{1}{8}
\left(
-\log\left(
1-\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{1}{1-\frac{2}{\sqrt{5}}}
+\log\left(
1+\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{-1}{1+\frac{2}{\sqrt{5}}}
\right)
\\
=\frac{1}{8}\left(
-\log\left(
1-\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{1}{1-\frac{2}{\sqrt{5}}}
+\log\left(
1+\frac{2}{\sqrt{5}}
\right)
+\frac{-1}{1+\frac{2}{\sqrt{5}}}
\right)\\
=\frac{4\sqrt{5}+\log\frac{5+2\sqrt{5}}{5-2\sqrt{5}}}{8}
$
\end{quote}
約 1.47894 である.

ついでに原始関数を求めて見よう.
結局,上記の積分の計算から,
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{8}\left(
-\log\left(1-u\right)
+\frac{1}{1-u}
+\log\left(1+u\right)
+\frac{-1}{1+u}
\right)\\
=\frac{1}{8}\left(
\frac{2u}{1-u^2}
+\log\frac{1+u}{1-u}
\right)\\
$
\end{quote}
となることまではわかる.$u=\sin\theta$ より,
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{8}\left(
\frac{2u}{1-u^2}
+\log\frac{1+u}{1-u}
\right)\\
=\frac{1}{8}\left(
\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}
+\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\right)\\
$
\end{quote}
とりあえず,$\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}$
の部分は
\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}\\
=\frac{2\sqrt{1-\cos^2\theta}}{\cos^2\theta} \\
=\frac{2\sqrt{1-\frac{1}{1+\tan^2\theta}}}{\frac{1}{1+\tan^2\theta}} \\
=\frac{2\sqrt{1-\frac{1}{1+(2x)^2}}}{\frac{1}{1+(2x)^2}} \\
=2(1+4x^2)\sqrt{\frac{4x^2}{1+4x^2}} \\
=2(1+4x^2)\frac{2x}{\sqrt{1+4x^2}} \\
=4x\sqrt{1+4x^2} \\
$
\end{quote}
と,$x$ の関数で表せるが,
$\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}$ の部分はまず無理のような気がする.
Mathematica で計算させたら
ArcSinh[2x] と,高校数学では出てこない関数で表現された.

\begin{quote}
$\displaystyle
\frac{1}{8}\left(
\frac{2\sin\theta}{1-\sin^2\theta}
-\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\right)\\
=\frac{1}{8}\left(
\frac{2\sin\theta}{\cos^2\theta}
-\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\right)\\
$
\end{quote}
を微分する問題をテストで出したことがあった.
微分は,何の工夫もないただの計算問題である.

\vspace{\baselineskip}
\textbf{\large 2003年12月3日追記}
\vspace{\baselineskip}

2003年12月3日に,千里国際学園のB先生からいただいたメールでの
指摘に基づき,
いくつかの本文中の記号などのミスを訂正しました.

さらに,本文の
\begin{quote}
「$\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}$ の部分はまず無理のような気がする.

\end{quote}
という部分に対しても,次のような指摘がありました.

\begin{quotation}
一番前の$\frac{1}{8}$
を$\frac{1}{4}$にして中に$\frac{1}{2}$を掛けると、
$\log$の中が$\sqrt{\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}}$となり、
これを変形すれば、
$\log$の中は$\sec\theta+\tan\theta$となって、
結局求める不定積分は
$\frac{1}{4}\left(2x\sqrt{1+4x^2}+\log(2x+\sqrt{1+4x^2}\right)+C$
となります。

また、赤チャートの「44無理関数の積分法」のページには別解が掲載されてます。
すでにご存知でしたら失礼をお許し下さい。

\end{quotation}

つまり,
$\log\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
=\log\frac{(1+\sin\theta)^2}{(1-\sin\theta)(1+\sin\theta)}
=\log\frac{(1+\sin\theta)^2}{1-\sin^2\theta}
=\log\frac{(1+\sin\theta)^2}{\cos^2\theta}
=2\log\frac{1+\sin\theta}{\cos\theta}
=2\log\left(\frac{1}{\cos\theta}+\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\right)
=2\log\left(\sqrt{\frac{1}{\cos^2\theta}}+\tan\theta\right) \\
=2\log\left(\sqrt{1+\tan^2\theta}+\tan\theta\right)
=2\log\left(\sqrt{1+(2x)^2}+2x\right)
$ と $x$ の式に変形できる.

さらに,数研出版の赤チャートの「44無理関数の積分法」のページには
$\int\sqrt{x^2+a^2}\, dx$ が解説されており,
そこでは$x+\sqrt{x^2+a^2}=t$ とおいて,
$x^2+a^2=(t-x)^2$, $2tx=t^2-a^2$,
$x=\frac{1}{2}\left(t-\frac{a^2}{t}\right)$,
$dx=\frac{1}{2}\left(1+\frac{a^2}{t^2}\right)dt$ と
置換することにより,
三角関数に置換することなく
簡単に導く方法が示されている.

実際,この放物線の長さの問題の場合は,
$2x+\sqrt{1+4x^2}=t$ とおけば,あとは同じである.

私自身は浅学非才で,赤チャートのこの部分は知らなかった.

\vspace{\baselineskip}
\textbf{\large ArcSinh[x]について.}
\vspace{\baselineskip}

本文では「高校数学では出てこない関数で表現された」と書いたが,
これは $\sinh x = \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}$ の逆関数なので,
初等関数で表すことができ,
実際 $\log\left(\sqrt{1+x^2}+x\right)$
となる.

\begin{quote}
$y=\sinh^{-1} x$ ならば
$x = \sinh y = \frac{e^{y}-e^{-y}}{2}$, より,
$2x = e^{y}-\frac{1}{e^{y}}$,

両辺を $e^y$倍して
$2xe^y = e^{2y}-1$,

$e^y$ で整理すると $e^y$ の2次方程式となって,
$ (e^{y})^2-2xe^y-1 =0$,

$e^y=x+\sqrt{x^2-(-1)}=x+\sqrt{x^2+1}$,

したがって,
$y=\log(x+\sqrt{x^2+1})$ となる.
\end{quote}

つまり Mathematica が表示した
Arcsinh[2x] は初等関数で\\
$\log(2x+\sqrt{4x^2+1})$ と表されたのである.

赤チャートの置換は逆$\sinh x =\log(x+\sqrt{x^2+a^2})$
で $e^y = t$ に置換したといえる.

\end{document}



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