2005年10月8日土曜日

sin の因数分解

調和級数(等差数列の逆数の和)
$\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots$
が発散することは有名.
分母の2乗の和の級数は収束する.
$\frac{1}{1^2}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\cdots =\frac{\pi^2}{6}$

これを発見したのはオイラーだが,ものすごくおおらかな式変形でつきとめた.

$\sin x=0$
を満たす $x$ は
$x=0,\ \pm\pi,\ \pm 2\pi,\ \pm 3\pi,\ \cdots$
となる.
一方,解が$a$, $b$ である2次方程式は
$(x-a)(x-b)=0$
と表すことができる.
解が $a$, $b$, $c$, … なら
$(x-a)(x-b)(x-c)\cdots=0$
である.
ということは解が
$x=0,\ \pm\pi,\ \pm 2\pi,\ \pm 3\pi,\ \cdots$
の場合
$x(x-\pi)(x+\pi)(x-2\pi)(x+2\pi)(x-3\pi)(x+3\pi)\cdots=0$
となるはず.

つまり
$\sin x=x(x-\pi)(x+\pi)(x-2\pi)(x+2\pi)(x-3\pi)(x+3\pi)\cdots$
$=x(x^2-\pi^2)(x^2-4\pi^2)(x^2-9\pi^2)\cdots$
と「因数分解できる!」(@O@)

なんとおおらかな式変形.

これの左辺を展開すると、定数項が発散してしまうから、定数$A$として、
$\sin x=Ax\left(1-\frac{x^2}{\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{4\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{9\pi^2}\right)\cdots$
としても、$\sin x=0$ の解が
$x=0,\ \pm\pi,\ \pm 2\pi,\ \pm 3\pi,\ \cdots$
であることには変わりない。

定数$A$は、両辺を$x$で割り、$x\to 0$の時の極限は、
左辺$=\frac{\sin x}{x}\to 1$
右辺$=A\left(1-\frac{x^2}{\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{4\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{9\pi^2}\right)\cdots \\ \to A\left(1-0\right)\left(1-0\right)\left(1-0\right)\cdots= A$
より、$A=1$なので、
$\sin x=x\left(1-\frac{x^2}{\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{4\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{9\pi^2}\right)\cdots$
となる。

これを展開すると
$\sin x = x-\left(1+\frac{1}{4}+\frac{1}{9}+\cdots\right)\frac{x^3}{\pi^2}+\cdots$
一方,マクローリン展開では
$\sin x = x-\frac{x^3}{6}+\cdots$
$x^3$の係数比較で,
$1+\frac{1}{4}+\frac{1}{9}+\cdots=\frac{\pi^2}{6}$

もちろんこの式変形は「論証」とはいえないので,オイラーは極限をπ^2/6と仮定して正しいこと解析的に証明した.
でも,証明するにも,極限がわからなければ証明のしようがないわけで,それを突き止めるオイラーのおおらかな式変形は,感動的である.

1 件のコメント:

  1. ζ(n) (n=2) の 14通りの証明達が在りましたので;
    http://www.maths.ex.ac.uk/~rjc/etc/zeta2.pdf

    ζ(4)について上の証明達の模倣犯になりたいが....

    一番 お気に入り の 万人が肯う 発想は どの証明でしょうか?
         original proof of Euler! ですか ?
          JPも寄与の Matsuokaのproofですか ?

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