2006年4月6日木曜日

極限,極限値,極値,極大,極小,極大値,極小値・・・極のつく言葉を並べた.
極限,極限値はlimのやつ.
ここで論じるのは,極値,極大,極小,極大値,極小値.

高校の数学ではしばしば,
「増加から減少にうつる点で,関数は極大になると言い,その値を極大値という」
「減少から増加にうつる点で,関数は極小になると言い,その値を極小値という」
と言う定義を用いる.そして,
「極大値と極小値をまとめて極値と言う」

問題で「関数f(x)の極値を求めよ.」

の答えで「極値は2と3」ではまず点にならない.
「極大値と極小値をまとめて極値と言う」
のだから,答えは極大値と極小値を分けなければならない.

「極小値2,極大値3」
もう少し.

「x=4で極小値2,x=5で極大値3」
が満点.
「極小値f(4)=2,極大値f(5)=3」
でも可.

さて,極大の定義は,
 増加→減少
だがこれで定義できるのは,高校で扱う1変数実数値関数だけである.
多変数実数値関数ではこの定義では不十分.

たとえば,2変数の関数.
 z=f(x,y)
x,y で緯度経度,zが標高と考えれば分かりやすい.

山頂を通過するときは,どの向きに通っても
 増加→減少
になるので山頂は極大である.
z=f(x,y) の極大も「増加→減少」でよさそうだが,実は問題がある.

峠は,どうか?

峠とは旅人にとっては,極大である.
峠とは山の向こうへつながる道で,道の中では最も高いところにであるが,その道は山頂を通ることはない.山の稜線では最も低いところを通るはずである.
山の向こうへ行くことが目的の旅人が,わざわざ山頂目指すわけはなく,山の最も低いところを通るはずなのである.

つまり峠とは,旅人にとっては「増加→減少」の極大である.
しかし山の稜線の中では極小で,登山家が山の稜線に沿って歩く場合は「減少→増加」の極小である.

高校の定義では,峠は通過する方向によって,極大にも極小にもなる点になってしまう.

これを避けるために,普通は次のような定義をする.(かなり大雑把だが)
「関数f(x,…)について,(x,…)=(a,…) を含む十分小さい範囲で最大値をとるとき,関数はその点で極大になるといい,その値を極大値という.」
「どんな方向でも増加→減少なら極大」でもいいのだけれど,3変数関数だったら,10変数関数だったらどうしよう・・・
ということで,早い話,「お山の大将が極大」という定義を用いるのが普通である.
これなら通過する向きは関係なく,「周辺で自分が一番高いから極大」といえるのだ.

もちろん,峠は極大でも極小でもない.

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