2005年8月19日金曜日

原付の速度制限30km/hは経済政策

原付の始まりは,戦後ホンダなどが自転車に1馬力にも満たない小さなモーターをつけて発売したものが始まりである.
道路運送車両法施行規則において,第1種原動機付自転車は「内燃機関以外のものを原動機とするものは0.6キロワット以下」,という規定のものである.1馬力は0.735kw だから,内燃機関以外のものなら1馬力にも満たない.
技術が未熟な時代,50ccで1馬力を出すのは大変だった.ハーレーが1903年に作ったモーターでも440ccで3馬力くらい.現代の50cc程度の馬力だった.

さて,そういった時代に決まった法律が「原付の制限速度30km/h」といえる.
自転車で30km/hも出したら,ブレーキの性能やタイヤの太さを考えれば限界なので,当初は妥当な設定だったといえる.

そして,運転免許も「パワーの無いモーターつき自転車」なので,実地試験の無いペーパーテストだけで取ることのできるカテゴリーになった.(海外では50ccは免許不要の国もある)

さて,企業の技術革新で,いくらでもパワーが上がり,メーカーは自主規制で7.2馬力に抑えていた時代もあった.
今は5馬力程度だろうか.
それでも60km/hくらいは出てしまう.
もちろん本当に30km/hしか出せない性能で作ってしまうと,坂が上れなかったり危険なことは多いと思う.

それじゃ,制限速度を50km/hくらいにして,実地試験を課したらどうかという考え方もある.
実はこれをやると,メーカーが困る.

原付の存在意義は「ペーパー試験だけで免許が取れる,四輪など上位の免許の付録についてくる(その代わり30km/h制限)」にある.
気軽に免許が取れるゆえ,原付の売り上げを維持している.
免許を厳しくしたら,売り上げが落ちて,設備を縮小したり,従業員をリストラしたり・・・大きな社会問題になりなねない.
それによってメーカーが公安に圧力をかけるからだとする勝手な憶測もあるようだが,そんなことはありえない.官と民がお互いに分をわきまえて,あえて触れないだけである.

つまり,「簡単な試験だけど30km/h制限」とは,官民一体となった「経済政策」といえる.
簡単な免許だから,原付の売り上げが多くなり,経済発展につながるというわけだ.
原付は,2段階右折だの30km/h制限だの,肩身の狭い思いをするが,それがこの国の経済政策なのだろう.したがって,矛盾を抱えながらも,当分この制度が変わることはあるまい.
そもそも.警察庁は行政機関なので法律に手出しはできない.政治の力でうまく解決できればよいのだが.

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