砂浜での落雷で死者が出た.
落雷での怪我や死に至るのは,落雷による外傷(やけど)ではない.
外傷がなくても,死に至る場合がある.
人体は弱い電流が神経を伝達することによって,体を調節している.
人体の中では神経が特に電流を流しやすいため,落雷時は脳や神経に電流が集中しやすく,その神経系の機能が損なわれると,多くの臓器が働かなくなることによって死に至る.
死に至らなくても,神経系がやられるので,しばらくの間しびれが残る場合が多い.
昨日,ある番組の司会者が,
「しびれが残っている人は,まだ電気がのこっているんですね.雷ぐらいの強い電気はなかなか体から抜けないんですね.」
というコメントをしていて,大笑い.まぁ科学バカばかりテレビ局の人間らしいコメントではある.この程度が世間の常識なんだろうなぁ.
電気は落雷や感電の瞬間に抜ける.
その際の神経の損傷が,手足のしびれに残るだけである.
>「海は低いので落雷に会わない.」
今回の事故で,それが迷信であることが証明された.
海の中では,海に浮く人間が最も高い位置にあるので,人間が一番被害を受ける.
迷信その2.
>「金属を身につけている方が落雷にあいやすい.」
昔からの迷信である.実は身につけた金属は落雷には無関係.
雷から見れば,人間はよく電気を通す「導体」といえる.
金属を体から取り去っても,無関係に落雷する.実験映像を見たことがあるが,たくさんのアクセサリ類をつけた人形と,まったく身に着けない人形,どちらにも等しく落雷していた.
ただ,落雷のときはその金属部分に多くの電流が流れてその部分の皮膚が焼け焦げるため,「金属に雷が落ちた」と勘違いすることは多いらしい.
普通は頭に落雷して足から地面に抜けるが,身に着けた金属部分に多くの電流が流れて皮膚がこげるのである.
逆に金属をたくさんつけたほうが,体の中ではなく表面の金属を迂回することが多くなり,火傷は負うが体内の神経は守られるかもしれない.
迷信その3.
>「まだ,音が遠いので安全.」
これは極めて危険な判断.
雷雲は数10kmくらいの大きさになる.そのどこにでも落ちる.
光ってから10秒くらいの音の場合,かなり「遠い音」に聞こえる.
しかし雷雲の大きさから考えると,音が聞こえる範囲は「どこにでも落ちる範囲」である.
10秒というのは3.4km.雷雲の大きさからすれば誤差の範囲といえる.
音が聞こえるときはすでに「かなり危険な状態」といえる.
黒い雲が見えたり,急に涼しい風が吹いたときは,避難を考え,音がしようものなら緊急避難である.
避難場所で一番危険なのは樹木の下である.
高い樹木ほど雨をよけるので,雨宿りで使う人は多いが,落雷は高いものほどあいやすい.
そして,樹木は絶縁体(正確には非常に抵抗値が大きいが,空気よりも電気を通す)だが,人間は導体である.
木を伝わった落雷は,枝から人間に伝わる.
そういう意味で木造の小さな小屋やテントは非常に危険.絶縁体の建物に落ちて,行き場を失った落雷が,導体の人間に伝わる可能性が大きい.
最低でも海の家以上の,「電力供給のある」大きな建物でなければならない.
電力線が避雷針の役割を果たしてくれる可能性がある.
しかしこの際,壁を伝わる雷が人体に伝わることを防ぐため,壁や天井からできるだけ離れたほうがよい.つまり人体は絶縁体建物内部の「導体」なのであるから,近くにあれば必ず人体を迂回する.
鉄筋を落雷が伝わる鉄筋コンクリートはかなり安全.避雷針を設置している可能性もある.
鉄製の車体が周囲を囲む自動車はとても安全といえる.ただしサンルーフは注意.
頭が一番高い位置にある二輪車は頭を直撃するのでかなり危険.
でも以前,自転車に乗った高校生に落雷して命が助かった奇跡的な例が報道されていた.それはイヤホンを耳にいれ,レコーダーを前かごにいれていて,電気はイヤホンから前かごを通って自転車から地面に抜けたということらしい.
「タイヤが絶縁体だから安全」なる迷信もあるようだが,車に落ちた場合,「車→地面」はホイールからタイヤの外側の空中を伝わって落雷する様子を実験で見た.
考えてみれば,それまで数百メートルの空中を伝わってきた落雷にとって,ホイール→地面の10cmの空気は誤差の範囲である.車は金属に囲まれているから安全なのである.
同様に「ゴムの長靴だから安全」という勘違いもあるが,ゴムを流れなくても人体を通った電気は,ひざ付近から空中を迂回して地面に通電する.それまで,何百メートルもの空中を伝わってきた電気である.ひざから地面の空気はものともしない.
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