オートアンテナチューナーSG-239 の回路図(p.29)を見ていて気づいたことなど.
この ATU は基本的にはπマッチである.
πマッチは「π」の2本の足がキャパシタ C1,C2 で,それを結ぶ天井にコイル L のあるポピュラーな回路である.
このC1,C2,L の値を変化させて RF 入力とアンテナ側とのマッチングを取る.
C1 は,回路図 p.29 の C54~C64 で,これを K16~K21 の6個のリレースイッチの組合せで選ぶ.
6個のスイッチだから,一つも選ばない(0pF)から全部選ぶ(3171pF)の 2^6=64 通り.
L は,回路図 p.29 の L1~L8 で,これを K11~K14,K1~K3 の7個のリレースイッチの組合せで選ぶ.
7個のスイッチだから,一つも選ばない(0μH)から全部選ぶ(15.875μH)の 2^7=128 通り.
C2 は,回路図 p.29 の C21,C73,C74,C75 で,これを K6~K9 の4個のリレースイッチの組合せで選ぶ.
4個のスイッチだから,一つも選ばない(0pF)から全部選ぶ(740pF)の 2^4=16 通り.
すべての組合せは,64×128×16=131072 通りである.
0pF - 0μH - 0pF といった全く使わない組合せはあるのかな?と思ったら,ありうる.
もともとマッチングが取れているアンテナをつないだら,「回路なし」でマッチングが取れるのだから,そうした組合せもあるだろう.
さらに,C1,C2 の片方が 0 なら,Lマッチというマッチング回路である.
さて,選ばれる C や L の定数もうまく決めている.
たとえば, L は,
0.125,0.25,0.5,1,2,4,8
と倍々になっている.
C1,C2 も既製品の定数の範囲とはいえ,ほぼ倍々になっている.
本当なら,C1 は,
50,100,200,400,800,1600
C2 は
50,100,200,400
としたかったのだろう.
こうすると 2^n の組合せの中で,どれ一つとして同じになるものはない.
簡単のために,1,2,4,8 の4つで考える.
これでできる値は,
0
1
2
3=1+2
4
5=2+3
6=2+4
7=1+2+4
8
9=1+8
10=2+8
11=1+2+8
12=4+8
13=1+4+8
14=2+4+8
15=1+2+4+8
の16通りだが,これは2進数4桁
0000
0001
0010
0011
0100
0101
0110
0111
1000
1001
1010
1011
1100
1101
1110
1111
に対応している.
そして,この4桁は,左から「8の位,4の位,2の位,1の位」なのだから,これで 0~15 の数を1刻みで漏れなく作り出すことができる.
つまり,
0.125,0.25,0.5,1,2,4,8
のどれかを,「使う1,使わない0」の7桁の2進数に対応させ,その組合せで 0 から15.875μH まで 0.125μH刻みで128通り漏れなく作り出すことができる.
つまり,これは0~15.875μH の128段階のバリLなのである.
この選択をCPU を使ってスイッチングし,SWRの計測や周波数の計測で最適なものを探し出すのが,このATU の動作である.
こうしてみるとL が,最大でも 15.875μH というのは,1.8MHz から使えるチューナとしては意外と小さい.その代わり,C1 が最大3171pF,C2が740pF と,バリコンではありえない容量を選べるようになっている.
で,C1は 0 から 3150 までの50pFステップで2^6=64段階,C1は 0 から 750 までの50pFステップで2^4=16段階 のバリコンと考えることができる.
普通,手動のアンテナチューナを自作するなら,C1,C2 はポリバリコンなど200pF くらいが最大なので,1.8MHz で使うには L はいっぱい巻いて100μH くらいにしないと.
直径3cm,線の太さ1mmを密に100 回巻いて(コイルの長さ10cm)も,やっと77.9μHである(MMANAで計算).するとやっぱり大きな C を並列にするか L をトロイダルコアに巻かなければ 1.8Mや3.5Mは難しい.
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