事象Aが起きたことがわかっている時に,事象Bの起こる確率.
記号で \(P_{A}(B)\) のように書く.
これはモンティホール問題とか病気の確率とかいろいろと話題があって確率の中では面白い(ということは複雑な)ところである.>以前の記事「モンティ・ホール問題」
たとえば,10本中当たりが3本のくじを1人が引いて,もとに戻さず2人目が引く.
1人目が当たったことがわかってから,2人目が当たる確率は,9本中当たりが2本だから 2/9.
事象A「1人目が当たる」,事象B「2人目が当たる」とすれば,
\(P_{A}(B)=\frac{2}{9}\)
ということである.
1人目が当たるのは 3/10 でわかりやすい.
じゃぁ2人目が当たる確率は?
下の例のような表を使えば見通しが良くなり,2人目も同じ 3/10 であることは確認できる.
切実な問題として,「ガンなど病気の検査結果の精度」がある.
先日もドラマ「ハードナッツ」でやってきた.
99.9% の精度の検査で,「不治の病の疑いあり」と出て,「自分はもう先がない.」とがっかりするのを,「そんなことない」というもの.
教科書の例題よりもわかりやすいので,こちらで説明した.
その病気は1万人に1人の割合.
つまり1000万人に1000人が病気で,9999000人は病気ではない.
検査の精度が 99.9% だから,「疑いあり」と出るのは1000人の病人の中で,999人.
検査の精度が 99.9% なら,間違った結果を出すのは0.1%.
つまり,病気じゃないのに,「疑いあり」と出るのは 9999000人の 0.1% で9999人.
この数字を表(カルノー表)にまとめるとわかりやすい.
病気 | 健康 | 計 | |
疑いあり | 999 | 9999 | 10998 |
疑いなし | 1 | 9989001 | 9989002 |
計 | 1000 | 9999000 | 10000000 |
1千万人が検査を受けると,10998人が「疑いあり」と出てしまう.
ところが実際は,そのうちの 999人,およそ1割しか病気ではない.
これらを全体の1千万で割れば,確率となる.
「% とか割合」で書かれた以下の説明を聞かされても,ふつうは意味不明だろう.
何万人中何人という,上のカルノー表がイメージできれば,こっちのものである.
事象A「病気」,事象B「疑いあり」とすれば,
全体の中で病気である確率(1万人に1人)\(P(A)=0.01\%\)
したがって病気でない確率(1万人に9999人)\(P(\bar{A})=99.99\%\)
病気の人が「疑いあり」と判定されるのは\(P_{A}(B)=99.9\%\)
病気でない人が「疑いあり」と判定されるのは逆に\(P_{\bar{A}}(B)=0.1\%\)
病気の人 0.01% 中,「疑いあり」と判定されるのは 99.9% だから,全体の中の病気であり同時に疑いある(A∩B)と判定される人は全体の 0.00999% である.
これを,次のような式で表して,「乗法公式」という.
\(P(A\cap B)=P(A)\times P_{A}(B)=0.01%\times99.9%=0.00999\%\)
同様に,病気でない人 99.99%中,「疑いあり」と間違って判定されるのは 0.1% だから全体の中では 0.09999% である.
\(P(\bar{A}\cap B)=P(\bar{A})\times P_{\bar{A}}(B)=99.99%\times0.1%=0.09999\%\)
つまり「疑いあり」と判定されるP(B)のは全体の中の 0.00999%+0.09999%=0.10998%
\(P(B)=P(A\cap B)+P(\bar{A}\cap B)\\ =0.00999%+0.09999%=0.10998\%\)
「疑いあり」と判定された B のなかで,実際に病気の人 A∩B は
\(P_B(A)=\frac{P(A\cap B)}{P(B)}=\frac{999}{10998}=9.0835\%\)
9%くらいだけど,およそ1割.だから99.9%の精度の検査で「疑いあり」と判定されても,病気でない人は9割もいるのだ.
ドラマの中でも,実際に病気なのは10人に1人くらいと言っていた.
最初のくじの表はこうなる.
1人目当たり | 1人目はずれ | 計 | |
2人目当たり | 6/90 | 21/90 | 3/10 |
2人目はずれ | 21/90 | 42/90 | 7/10 |
計 | 3/10 | 7/10 | 1 |
1人目が7/10 の確率で当てた後に2人目が当たる確率 3/9で,こういうことが起こる確率はそれらの積で 21/90
2人目が当たるのはこれらの和で 27/90 = 3/10
この,くじの問題と,病気の確率の問題は,同じ構造を持っている.
病気の疑いありの判定が出た人の中で病気である確率の計算は,くじ引きで2人目が当てた場合に1人目が当てていた確率の計算となる.
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