数学III の授業をやっていて気付くこと.生徒は,極限の考え方に慣れていない.
$\frac{1}{n}$の極限を即答できなかったりする.
数列 1, $\frac{1}{2},\frac{1}{3},\cdots$は調和数列harmonic sequenceともいう.弦を,調和数列の長さの場所で押さえると,響きが安定することに由来しているのかな.
$\frac{2n+1}{n+1}$ の分子分母を n で割って,$\frac{2+\frac{1}{n}}{1+\frac{1}{n}}$の極限 2
「計算はできる.が,何をやっているのかさっぱり・・・」
という.
たしかに,今までの数学には出てこなかった考え方だろう.自分は慣れているけれど,なんだか高校生の頃の感覚を思い出した.自分も何が何だかわからずにやっていたのだろうなー
だから,数値計算を見せて,実感してもらって,
「いま何の計算してるの」
を感じてもらう.
授業を受けるのは「理系」の生徒.大半は工学系に進むから,「数値の感覚」を身につけてほしい.
n | $\frac{1}{n}$ |
1 | 1 |
2 | 0.5 |
3 | 0.333333333 |
4 | 0.25 |
5 | 0.2 |
6 | 0.166666667 |
7 | 0.142857143 |
8 | 0.125 |
9 | 0.111111111 |
10 | 0.1 |
100 | 0.01 |
1000 | 0.001 |
10000 | 0.0001 |
n | $\frac{2n+1}{n+1}$ |
1 | 0.5 |
2 | 1 |
3 | 1.25 |
4 | 1.4 |
5 | 1.5 |
6 | 1.571428571 |
7 | 1.625 |
8 | 1.666666667 |
9 | 1.7 |
10 | 1.727272727 |
100 | 1.97029703 |
1000 | 1.997002997 |
10000 | 1.99970003 |
n | $0.5^{n-1}$ |
1 | 1 |
2 | 0.5 |
3 | 0.25 |
4 | 0.125 |
5 | 0.0625 |
6 | 0.03125 |
7 | 0.015625 |
8 | 0.0078125 |
9 | 0.00390625 |
10 | 0.001953125 |
こうして並べると,即答できなかった子も,すぐにわかってくれる.
ところが,並べてもなんだか分からないものがある.
n | $\sum_{n=1}^{\infty}0.999^n$ |
1 | 0.999 |
2 | 1.997001 |
3 | 2.994003999 |
4 | 3.990009995 |
5 | 4.985019985 |
6 | 5.979034965 |
7 | 6.97205593 |
8 | 7.964083874 |
9 | 8.95511979 |
10 | 9.94516467 |
100 | 95.11264503 |
1000 | 631.6722707 |
そうなると,やはり計算(推論)の力が必要となる.
等比級数の和(極限)は公式より
$\frac{a}{1-r}=\frac{0.999}{1-0.999}=999$
1分で全部の数を数える方法.
30秒かけて「一」
15秒かけて「二」
7.5秒かけて「三」
3.75秒かけて「四」
1.875秒かけて「五」
・・・
かかる時間は,初項30,公比0.5より和は
$\frac{30}{1-0.5}=60$秒
「後ろの方はちょっと早口になるよ」
見ても分からないから,推論の力が必要な極限の例.
n | $\frac{1}{n}$ | $\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}$ |
1 | 1.000 | 1.000 |
2 | 0.500 | 1.500 |
3 | 0.333 | 1.833 |
4 | 0.250 | 2.083 |
5 | 0.200 | 2.283 |
6 | 0.167 | 2.450 |
7 | 0.143 | 2.593 |
8 | 0.125 | 2.718 |
9 | 0.111 | 2.829 |
10 | 0.100 | 2.929 |
100 | 0.010 | 5.187 |
1000 | 0.001 | 7.485 |
2学期後半に扱う予定の教科書の積分の応用のページ例題に
$\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}\gt\log(n+1)$
の証明が出ている.
log は無限に大きくなるから,それより大きいΣ1/nは発散する.
(積分を使わない,易しい証明もあるが)
60秒かけて「一」
30秒かけて「二」
20秒かけて「三」
15秒かけて「四」
12秒かけて「五」
・・・
だと,どんどん早口になるけど,一生かけても数え終わらない.
ここから先は,余計な話(これが好き♪)>sin の因数分解
$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots$
はそんなわけで無限に発散するけど,
$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}=1+\frac{1}{4}+\frac{1}{9}+\cdots=\frac{\pi^2}{6}$
ついでに,$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}$ について,
初項は1
第2項までは$1+\frac{1}{2}$
第3項を得るには,
$(1+\frac{1}{2})(1+\frac{1}{3})=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{6}$
以下,同様に必要な項に必要な積を作って
$(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4})(1+\frac{1}{3})=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\frac{1}{12}$
$(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4})(1+\frac{1}{3})=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\frac{1}{12}$
$(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4})(1+\frac{1}{3})(1+\frac{1}{5})=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{10}+\cdots$
$(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4})(1+\frac{1}{3})(1+\frac{1}{5})(1+\frac{1}{7})=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\cdots$
最終的には,
$1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots\\=(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\cdots)(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{9}+\cdots)(1+\frac{1}{5}+\frac{1}{25}+\cdots)(1+\frac{1}{7}+\frac{1}{49}+\cdots)$
一つ一つの括弧の中身は等比級数だから公式で,
$1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots\\=(\frac{1}{1-\frac{1}{2}})(\frac{1}{1-\frac{1}{3}})(\frac{1}{1-\frac{1}{5}})(\frac{1}{1-\frac{1}{7}})\cdots$
と素数が並ぶ.$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots$は素数と非常に関係が深くて,1年の情報でやった暗号技術の安全性にかかわっている.>公開鍵暗号(RSA)をわかる
同じように,
$1+\frac{1}{4}+\frac{1}{9}+\cdots\\=(\frac{1}{1-\frac{1}{2^2}})(\frac{1}{1-\frac{1}{3^2}})(\frac{1}{1-\frac{1}{5^2}})(\frac{1}{1-\frac{1}{7^2}})\cdots=\frac{\pi^2}{6}$
ついでに,
$\zeta(x)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^x}$って関数があって,
$\zeta(1)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}$は発散するけど,
$\zeta(2)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}$という値を持つ・・・ごめん,やめやめ.
じゃ,次に進みます.(調子に乗りすぎ)
ζ(s)=0 になる自明でない解 s の実部はどれも 0.5 だというのが有名なリーマン予想.
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