2011年7月30日土曜日

既約多項式

午前中のイベントが終えたら,午後は毎日やっている進学補習だけど,せっかくだからイベントで扱ったユークリッドの互除法を教える.

で,高校3年生なのだからと,分数式の約分について触れた.

数学II では,
$\frac{x^2-2x-3}{x^2-9}=\frac{(x+1)(x-3)}{(x+3)(x-3)}=\frac{x+1}{x+3}$
といったことを扱う.つまり約分は因数分解しなければならない.ユークリッドの互除法ならば因数分解せずに,割り算の余りが共通因数となる.
(x^2-2x-3) ÷ (x^2-9)
をおこなえば,
(x^2-2x-3) = (x^2-9)×1 + (-2x+6)
多項式は定数倍は無関係だから,余り -2x+6 = -2(x-3) より分母 x^2-9 を x-3 で割れば割り切れる.
したがって,これで分子も割り切れるというのが,互除法の原理.

多項式の因数を見つけるというのは至難の業で,数学IIの因数定理による因数分解も,「見つかる範囲の問題」しか扱わない.
それに対して,割り算の余りを求めるというのは,時間をかければ必ず出来る手順である.
たとえば,
$\frac{x^4+x^3+x^2+2 x-2}{x^6+2 x^5-x^3+x^2+x-1}$
は割り算
(x^6+2x^5-x^3+x^2+x-1) ÷ (x^4+x^3+x^2+2x-2)
(x^6+2x^5-x^3+x^2+x-1) = (x^4+x^3+x^2+2x-2)(x^2+x-2) + (-2x^3+3x^2+7x-5)
つづいて,
(x^4+x^3+x^2+2x-2) ÷ (2x^3-3x^2-7x+5)
をやると分数が出てきてしまうので,
4(x^4+x^3+x^2+2x-2) ÷ (2x^3-3x^2-7x+5)
(4x^4+4x^3+4x^2+8x-8) = (2x^3-3x^2-7x+5)(2x+5)+(33x^2+33x-33)
そして,33x^2+33x-33 = 33(x^2+x-1) より
(2x^3-3x^2-7x+5) ÷ (x^2+x-1)
(2x^3-3x^2-7x+5) = (x^2+x-1)(2x-5)
と割り切れるので,(x^2+x-1) が最大公約数.そして,これで分母分子を割れば,既約となる.
(x^6+2x^5-x^3+x^2+x-1) ÷ (x^2+x-1) = x^4+x^3+1
(x^4+x^3+x^2+2x-2) ÷ (x^2+x-1) = x^2+2
より,
$\frac{x^4+x^3+x^2+2 x-2}{x^6+2 x^5-x^3+x^2+x-1}=\frac{x^2+2}{x^4+x^3+1}$
ここに出てくる3つの多項式,最大公約数x^2+x-1と,残りの既約なx^2+2,x^4+x^3+1 はどれも整数の因数を持たないから,数学IIの因数定理を使う因数分解はできない.
しかし,最大公約数を求めるのは,割り算の繰り返しで必ず求めることが出来,2つの多項式の既約多項式は必ず求められるのである.

本来の,ユークリッドの互除法では,割り算はあまり組織的には行なわず,もっとテキトーな感じである.
(x^2-2x-3, x^2-9) 左から右を引く.
(-2x+6, x^2-9) 左を-2 で割る.
(x-3, x^2-9) 左を-2 で割る.
(x-3, x^2-9) 左のx倍を右から引く.
(x-3, 3x-9) 左の3倍を右から引く.
(x-3, 0) 
より,分母分子は x-3 で割れる.

もうひとつも,
(x^6+2x^5-x^3+x^2+x-1, x^4+x^3+x^2+2x-2) 左から,右の x^2 倍を引く.
(x^5-x^4-3 x^3+3 x^2+x-1, x^4+x^3+x^2+2x-2) 左から,右の x 倍を引く.
(-2x^4-4 x^3+x^2+3 x-1, x^4+x^3+x^2+2x-2) 左に,右の 2 倍を足す.
(-2 x^3+3 x^2+7 x-5, x^4+x^3+x^2+2x-2) 右を2倍する.
(-2 x^3+3 x^2+7 x-5, 2x^4+2x^3+2x^2+4x-4) 右を2倍する.
(-2 x^3+3 x^2+7 x-5, 2x^4+2x^3+2x^2+4x-4) 左のx倍を右に足す.
(-2 x^3+3 x^2+7 x-5, 5 x^3+9 x^2-x-4) 左を5倍,右を2倍
(-10 x^3+15 x^2+35 x-25, 10 x^3+18 x^2-2x-8) 左を右に足す.
(-10 x^3+15 x^2+35 x-25, 33 x^2+33 x-33) 左を-5で割り,右を33で割る.
(2 x^3-3 x^2-7 x+5,  x^2+ x-1) 右の -2x倍を左に足す.
(-5 x^2-5 x+5,  x^2+ x-1) 左を -5 で割る.
(x^2+x-1,  x^2+ x-1)
で最大公約元は x^2+x-1

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