2014年11月21日金曜日

連分数でギアの歯数を計算

以前の記事「数の正体をあばく」で,小数(0.9672131,4.8989794)から元の分数やルート(59/61,2√6)を突き止める方法を書いたが,その記事の最後の練習問題の答w

つまり,小数3ケタで切り捨てられたカタログデータのギア比から,ギア比を簡単な整数比にして,ついでにギアの歯数を推測しよう思う.

(1) 1次減速比 4.058
クランクシャフトがギアボックスのメインシャフトを回転させるギアの比である.

\(4.058=\frac{4058}{1000}=\frac{2029}{500}\)だからといって,クランクシャフト側の歯数が2029,ギアボックス側の歯数が 500 などということはない.もっと簡単な整数比を丸めたものである.

4.058 の正体を,連分数であばいてみる.
小数部分 0.058 の逆数 17.241379
小数部分 0.241379 の逆数 4.1428624
小数部分 0.1428624 の逆数 6.9997424 ≒ 7

電卓でやるならば,
4.058と入れて
- 4 ÷= (17.241379)
- 17 ÷= (4.1428624)
- 4 ÷= (6.9997424)
である.
逆数をとるとき,÷= で 1 になってしまう電卓では,÷== とすると逆数となる.windows 電卓は 「/ = =」であった.

整数部分 4,17,4,7 から連分数を作ると,
\(4.058=4+\frac{1}{17+\frac{1}{4+\frac{1}{7}}}\)
である.普通の分数に戻すと,
\(4.058=4+\frac{1}{17+\frac{1}{4+\frac{1}{7}}}\\=4+\frac{1}{17+\frac{1}{\frac{29}{7}}}=4+\frac{1}{17+\frac{7}{29}}\\=4+\frac{1}{\frac{500}{29}}=4+\frac{29}{500}=\frac{2029}{500}\\=\frac{4058}{1000}\)
となり,4.058 ぴったりを表す連分数が得られるが,これが目的ではない.

この連分数を後ろから省略してみる.1/7 を省略して,
\(4+\frac{1}{17+\frac{1}{4}}=\frac{280}{69}=4.0579710\)
これは,四捨五入すれば 4.058 だが,切り捨てたら 4.057 になる.
1/4 を省略して,
\(4+\frac{1}{17}=\frac{69}{17}=4.0582352\)
これなら,切り捨てでも 4.058.
したがって,このギア比はおそらくは 69:17=4.058 だろうと思う.

ネットの画像を見るとそのまま歯数の比で,正解のようである.
スーパーカブ90動力伝達の流れから引用

(2) 2次減速比 2.428
2次減速比はドライブチェーンをかけるスプロケットのギア比.
小数部分 0.428 の逆数 (-2÷=)2.3364485
小数部分 0.3364485 の逆数 (-2÷=)2.9722230
小数部分 0.9722230 の逆数 (-2÷=)1.0285706
小数部分 0.0285706 の逆数 (-1÷=)35.001015 ≒ 35
より
\(2.428=2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{1+\frac{1}{35}}}}=\frac{607}{250}=\frac{2428}{1000}\)
1/35 を省略して,
\(2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{1}}}=\frac{17}{7}=2.4285714\)
1/1 を省略して,
\(2+\frac{1}{2+\frac{1}{2}}=\frac{12}{5}=2.4\)
最後は,データとかけ離れていから,スプロケットの歯数の比はひとつ手前の, 17:7.
実際のスプロケットは,それぞれ2倍して,34:14=2.428 のようである.

(3) 変速比 1速 2.615
小数部分 0.615 の逆数 (-2÷=)1.6260162
小数部分 0.6260162 の逆数 (-1÷=)1.5974027
小数部分 0.5974027 の逆数 (-1÷=)1.6739127
小数部分 0.6739127 の逆数 (-1÷=)1.4838717
小数部分 0.4838717 の逆数 (-1÷=)2.0666635
小数部分 0.0666635 の逆数 (-2÷=)15.000712 ≒ 15
より
\(2.615=2+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{2+\frac{1}{15}}}}}}=\frac{523}{200}=\frac{2615}{1000}\)
1/15 を省略して,
\(2+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{2}}}}}=\frac{34}{13}=2.6153836\)
1/2 を省略して,
\(2+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1}}}}=\frac{13}{5}=2.6\)
最後は,データとかけ離れていから,変速比 1速は, 34:13=2.615.


(4) 変速比 2速 1.555
小数部分 0.555 の逆数 (-1÷=)1.8018018
小数部分 0.8018018 の逆数 (-1÷=)1.2471910
小数部分 0.2471910 の逆数 (-1÷=)4.0454547
小数部分 0.0454547 の逆数 (-4÷=)21.999925 ≒ 22
より
\(1.555=1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{4+\frac{1}{22}}}}=\frac{311}{200}=\frac{1555}{1000}\)
1/22 を省略して,
\(1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{4}}}=\frac{14}{9}=1.5555555\)
1/4 を省略して,
\(1+\frac{1}{1+\frac{1}{1}}=\frac{3}{2}=1.5\)
こちらは,14:9=1.555


(5) 変速比 3速 1.136
小数部分 0.136 の逆数 (-1÷=)7.3529411
小数部分 0.3529411 の逆数 (-7÷=)2.8333339
小数部分 0.8333339 の逆数 (-2÷=)1.1999991
小数部分 0.1999991 の逆数 (-1÷=)5.0000225 ≒ 5
より
\(1.136=1+\frac{1}{7+\frac{1}{2+\frac{1}{1+\frac{1}{5}}}}=\frac{142}{125}=\frac{1136}{1000}\)
1/5 を省略して,
\(1+\frac{1}{7+\frac{1}{2+\frac{1}{1}}}=\frac{25}{22}=1.1363636\)
1/1 を省略して,
\(1+\frac{1}{7+\frac{1}{2}}=\frac{17}{15}=1.1333333\)
なので,25:22= 1.136


(6) 変速比 4速 0.916
小数部分 0.916 の逆数 (÷=)1.0917030
小数部分 0.0917030 の逆数 (-1÷=)10.904768
小数部分 0.904768 の逆数 (-10÷=)1.1052557
小数部分 0.1052557 の逆数 (-1÷=)9.5006731
小数部分 0.5006731 の逆数 (-9÷=)1.9973112 ≒ 2
より
\(0.916=\frac{1}{1+\frac{1}{10+\frac{1}{1+\frac{1}{9+\frac{1}{2}}}}}=\frac{229}{250}=\frac{916}{1000}\)
1/2 を省略して,
\(\frac{1}{1+\frac{1}{10+\frac{1}{1+\frac{1}{9}}}}=\frac{109}{119}=0.9159663\)
1/9 を省略して,
\(\frac{1}{1+\frac{1}{10+\frac{1}{1}}}=\frac{11}{12}=0.9166666\)
1/1 を省略して,
\(\frac{1}{1+\frac{1}{10}}=\frac{10}{11}=0.9090909\)
したがって,11:12=0.916

変速比をまとめると.
1速 2.615 = 34:13
2速 1.555 = 14:9
3速 1.136 = 25:22
4速 0.916 = 11:12


さて,変速機のギアは2本のシャフトに1~4速それぞれのギアが取り付けられている.
スーパーカブ90動力伝達の流れから引用

メインシャフトとカウンタシャフトの軸間距離は一定なので,ギアの円周の長さも一定である.
というのは,変速機のギアは,2本のシャフトにさまざまな大きさのギアを組み合わせるが,下の図の2つの円周の長さはいずれも 2πd となるからである.
左の円の円周は 2πr,右は 2πR.その合計は 2πr+ 2πR=2π(r+R)=2πd.

このことは,ギアの歯の大きさが同じくらいなら,組み合わさっているギアの歯数の合計が同じくらいであることを意味している.
3:1 と, 1:1 のギアを同じ軸上に作るときはたとえば,
3:1=30:10 という歯数ならば,歯数の合計は 30+10=40.
歯数の合計40 で 1:1 のギアを実現するには 20:20 つまり,20+20=40 にすればよい.

これで
1速 2.615 = 34:13
2速 1.555 = 14:9
3速 1.136 = 25:22
4速 0.916 = 11:12
から歯数を導いてみる.

写真を見ると1速と3速は,比の値が歯数になっているようである.
その合計は,
1速 34+13 = 47
3速 25+22 = 47
で一致している.

2速14+9=23,4速11+12=23は少なすぎるので,2倍して,
2速 14:9 = 28:18 とすれば 28+18 = 46
4速 11:12 = 22:24 とすれば 22+24 = 46
で,1,3速のギアの歯数47に近い.

ということで結論.
スーパーカブ110 のギアの歯数は以下の通り.
1速 2.615 = 34:13
2速 1.555 = 28:18
3速 1.136 = 25:22
4速 0.916 = 22:24
1次減速比 = 4.058 = 69:17
2次減速比 = 2.428 = 34:14

【練習問題2】
XJR1300の変速比は
1速 2.857 2速 2.000 3速 1.571 4速 1.291 5速 1.115
である.>仕様:XJR1300
ギアの歯数を計算せよ.
(こたえ)
1速 20:7 = 40:14 (40+14 = 54)
2速 2:1 = 36:18 (36+18 = 54)
3速 11:7 = 33:21 (33+21 = 54)
4速 31:24 (31+24 = 55)
5速 29:26 (29+26 = 55)

>>スーパーカブ110日記

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