2014年11月23日日曜日

粘土タブレット

バビロンの粘土板 (babylonian clay tablet) YBC 4663
Babylonian Mathematicsより画像を引用.

このタブレットに書かれた問題
縦横の辺の長さの和 \(6\frac{1}{2}\),面積\(7\frac{1}{2}\) である長方形の縦横の長さを求めよ.

バビロンは60進法なので,
「縦横の和 6:30,面積 7:30」
のようにな書き方だろうか.

数学I の練習問題にも出てくる.数学Iの解き方なら,未知数を x とおいて方程式を立てて解くだけである.
縦を \(x\) とすれば,横は \(\frac{13}{2}-x\)
したがって,面積\(\frac{15}{2}\)より
\(x\left(\frac{13}{2}-x\right)=\frac{15}{2}\)
\(\frac{13}{2}x-x^2=\frac{15}{2}\)
両辺2倍して
\(13x-2x^2=15\)
\(2x^2-13x+15=0\)
\((2x-3)(x-5)=0\)
\(x-5=0\)
\(x=\frac{3}{2},\quad{5}\)

数学II の解と係数との関係は,和と積から直接2次方程式が立てられる.(和と積から元の数を求めるのは4000年前の問題なのだ.)
和が \(\frac{13}{2}\),積が \(\frac{15}{2}\)より,
\(x^2-\frac{13}{2}x+\frac{15}{2}=0\)
両辺2倍して
\(2x^2-13x+15=0\)
\((2x-3)(x-5)=0\)
\(2x-3=0\),\(x-5=0\)
元の2数は
\(\frac{3}{2}\),\(5\)



\(\beta\)を解に持つ2次方程式は
\((x-\alpha)(x-\beta)=0\)
である.展開して
\(x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta=0\)
つまり.x^2-(和)x+(積)=0 を解けばよいということである.


さて,こんな文字変形のできなかった4000年前,粘土板に書かれた解き方は次の通り.(表記は現代風)
縦横の和が \(\frac{13}{2}\) である正方形の1辺は \(\frac{13}{4}\) であるから,その面積は \(\frac{169}{16}\) である.
これは長方形の面積 \(\frac{15}{2}=\frac{120}{16}\) より,\(\frac{49}{16}=\left(\frac{7}{4}\right)^2\) だけ大きい.
したがって,もとの長方形の各辺は,正方形の縦横に \(\frac{7}{4}\) を
足したもの\(\frac{13}{4}+\frac{7}{4}=\frac{20}{4}=5\)
と引いたもの \(\frac{13}{4}-\frac{7}{4}=\frac{6}{4}=\frac{3}{2}\)
である.

「正方形の縦\(x\)横\(x\)に,それぞれ同じ数\(a\)を足した辺\(x+a\)と引いた辺\(x-a\)をもつ長方形の面積\((x+a)(x-a)\)は,元の正方形の面積\(x^2\)より,その数\(a\)を辺とする正方形の面積\(a^2\)を引いたものである.」
というのは,4000年前の常識だったのだろう.
つまり文字式で書けば, \((x+a)(x-a)=x^2-a^2\)

当時は文字式がないので,すべて言葉で表現していた.というか本当にそんな言い回しだったのかどうかは知らぬが, \((x+a)(x-a)=x^2-a^2\) を,正方形,長方形,辺,面積という言葉で書こうと思ったら,上記のようになるだろうという,自分の勝手な憶測.

たとえば,方程式\(2x^2-13x+15=0\)は,負の数が使えぬので\(13x-2x^2=15\)と考え,
「正方形の辺の13倍から.面積の2倍を引いたら15である.辺を求めよ.」
となる.
「辺」と「面積」は次元が違うから,同じ式に入れて計算するのは無意味な気がするが,4000年前に x と x^2 をともに「数の計算」と抽象化していたのだ.

さらにもっと大昔では「周の長さ」を土地の広さとして,まちがえていたようで,そうなると同じ面積でも細長いほうが大きい値なる.
「正方形の縦横に,それぞれ同じ数を足した辺と引いた辺をもつ長方形の面積は,元の正方形の面積より,その数を辺とする正方形の面積を引いたものである.」
と気づいて,文明が栄えるころには
「周の長さを,広さにできないよ.」
ということになったのだろう.

現代なら,「解の公式」があって,常に同じやり方で値が求まる.
当時は,代入できる解の公式は作れなかったけれど,この解法の数値を変えて,同じやり方をすれば必ず答えが求まるという点で,この粘土板は「解の公式」を書いたものと言える.
2次方程式の解の公式は4000年前にはすでに知られていたと言ってよい.

そもそも現代風の数式の書き方を確立したのが,16世紀のビエトである.>フランソワ・ビエト - Wikipedia
それ以前の数式は,言葉で書かれていたようである.

さて,この粘土板YBC 4663 のどの部分に,この問題とその解法が書かれているのかを知りたいものだ.
だれか教えて.

2 件のコメント:

  1. 通りすがり2015年2月8日 18:39

    いつも見させて頂いてます。
    記事の中程にプラスとマイナスの誤りがあります。

    …である.展開して
     x^2-(α+β)x+αβ=0  ←ここが(α-β)になってます
    つまり.x^2-(和)x+(積)=0 を解けばよいということである.

    返信削除

スパム対策のため,コメントは,承認するまで表示されません。
「コメントの記入者:」は「匿名」ではなく,「名前/URL」を選んで,なにかニックネームを入れてください.URL は空欄で構いません.