世間一般常識での「濃度」なる語のイメージは,「塩分濃度」のようなものだろう.数学で言う濃度はもちろん塩分など溶液の濃度とは無関係.
いわく
「集合の濃度」・・・???
有限集合の場合,「要素の個数」だと知ったのは後になってから.
だけど,「個数」とは言わない.無限集合もあるから.(基数ということはあり,基数=濃度 である.)
有限じゃなければ無限・・・これで済めば「濃度」とか「基数」という言葉の必要性は無く「要素の個数」でいい.
自然数 1,2,3,4,5,6,7,8… と
正の偶数 2,4,6,8,… はどっちが多い?
偶数はとびとびなので,偶数が少なそう.でも
1⇔2
2⇔4
3⇔6
4⇔8
と1対1に対応がつくので,「濃度が同じ」という.
真部分集合である偶数がそれを含む自然数と「濃度が同じ」なのである.
つまり「全体は部分より大きい」という常識が覆される.
これをもって,デデキントは「無限集合とは,真部分集合と1対1になる集合」と無限集合を定義した.
たとえば,
$-\frac{\pi}{2}\lt x\lt \frac{\pi}{2}$ のときの関数 $y=\tan x$
は実数の真部分集合である区間$-\frac{\pi}{2}\lt x\lt \frac{\pi}{2}$ と実数全体を1対1対応をつける関数なので,実数は無限集合とわかり,
$0\le x\le2$ のときの関数 $y=2x$
は$0\le x\le4$とその真部分集合$0\le x\le 2$を1対1対応をつける関数なので,区間$0\le x\le 4$も無限集合である.
自然数 1,2,3,4,5,6,7,8… と有理数(分数)どっちが多い?
分数を数直線の中に並べると,びっしりになってしまうので,飛び飛びの自然数より多そうであるが,
…, | -3, | -2, | -1, | 0, | 1, | 2, | 3, | … |
…, | -5/2, | -3/2, | -1/2, | | 1/2, | 3/2, | 5/2, | … |
…, | -4/3, | -2/3, | -1/3, | | 1/3, | 2/3, | 3/2, | … |
…, | -5/4, | -3/4, | -1/4, | | 1/4, | 3/4, | 5/4, | … |
… | … | … | … | … | … | … | … |
と並べられて,0を「1番」としてその周りをぐるぐる渦が大きくなるように順に番号がつけられる.
「自然数と有理数は濃度が同じ」
同じ無限集合でも,実数の集合は自然数や有理数の濃度より大きいことが示される.
「番号を振った」と仮定しても,その番号に振られない新たな実数を具体的につくることができるのである.
自然数の濃度<実数の濃度
さらに
実数の濃度<実数関数全体の濃度
も示される.
つまり「無限」にもいろんなサイズがあることを教えてくれるのが「濃度」
ここまでくると「個数」というのは違和感がある.だから「濃度」というのだろうなー
有限集合なら「個数」でいいが,濃度の概念は無限集合でこそ必要なものになるから,それに対応するための定義は,初心者にはさらに意味不明.
「集合を1対1対応で同値類別したクラス」
・・・・・何もいえません.
クラスって学校のクラスじゃないよ.集合を集めた全体は矛盾するので,集合といわずにクラスという.「類」と訳すけれど,訳したところで概念がもてなければ意味が無い.
同値ってのも,世間一般の常識である 12÷10=6÷5 程度のことではなくて,とてつもないもの同士が「同値」になってしまう,ある「非常に強力な概念」.
慣れてしまえばたかが言葉.つまり「言語」なのでたいしたことは無いが,大学の数学科ではこうした「概念と言語」の攻撃で挫折する者は多いな.
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