2006年7月30日日曜日

本日の無酸素計算(息を止めて一気に読んでくださいw)

3次方程式の一般解を求める手順(カルダノの方法)について.
たとえば簡単な数が2つの3乗根の和で表されてしまって,「どうやればそれを解決できるのだろう?」という場面が出てくる.

たとえば,
$x^3+x-2=0$
の解の一つは 1 だとすぐに見抜ける(1+1-2=0だから)が,一般解を求める方法で計算すると,とんでもない形になる.


一般解を求める方法(カルダノの方法)では,
$x=u+v$
と置き換えて,
$(u+v)^3+(u+v)-2=0$
を変形して,
$u^3+3u^2v+3uv^2+v^3+(u+v)-2=0$
$u^3+3uv(u+v)+v^3+(u+v)-2=0$
$u^3+(3uv+1)(u+v)+v^3-2=0$
$(3uv+1)(u+v)+u^3+v^3-2=0$
より,
$3uv+1=0$, $u^3+v^3-2=0$
を満たす $u$,$v$ を求める.
$3uv+1=0$ より
$v=\frac{-1}{3u}$
を$u^3+v^3-2=0$に代入して
$u^3+\left(\frac{-1}{3u}\right)^3-2=0$
$u^3-\frac{1}{27u^3}-2=0$
両辺を $u^3$ 倍して,
$(u^3)^2-\frac{1}{27}-2u^3=0$
$(u^3)^2-2u^3-\frac{1}{27}=0$
$u^3$ の2次方程式と考えて,
$u^3=1\pm\sqrt{1+\frac{1}{27}}=1\pm\sqrt{\frac{28}{27}}$
$u^3=1+\sqrt{\frac{28}{27}}$のときは$u^3+v^3-2=0$より,$v^3=-u^3+2$
$v^3=-\left(1+\sqrt{\frac{28}{27}}\right)+2$
$=-1-\sqrt{\frac{28}{27}}+2$
$=1-\sqrt{\frac{28}{27}}$
となる.もし,$u^3=1-\sqrt{\frac{28}{27}}$なら同様の計算で,$v^3=1+\sqrt{\frac{28}{27}}$となるので, $u$, $v$ は対称である.したがってここでは,$u^3=1+\sqrt{\frac{28}{27}}$と決めてしまう.

さて,$u^3=1+\sqrt{\frac{28}{27}}$ より,$u$は虚数解も含めて,3つある.それは $u$の実数解$\sqrt[3]{1+\sqrt{\frac{28}{27}}}$を $u_1$とすれば,残りの2つは
$u_1 \omega$, $u_1 \omega^2$
ただし, $\omega$は1の虚数3乗根である.
ちなみに1の虚数3乗根は $\frac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$の2つであるが,1つを$\omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$とおけば,他方は
$\omega^2=\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}$
となり, $\omega$と $\omega^2$は対称である.


同様に$v^3=1-\sqrt{\frac{28}{27}}$ より,$v$ は虚数解も含めて,3つあり, $v$の実数解を $v_1=\sqrt[3]{1-\sqrt{\frac{28}{27}}}$とすれば,残りの2つは
$v_1 \omega$, $v_1 \omega^2$


さて,虚数解の $u$,$v$はどう対応するのだろうか.これには $v=\frac{-1}{3u}$ と使う.

$u=u_1\omega$のとき,
$v=\frac{-1}{3u_1\omega}$
$=\frac{-\omega^2}{3u_1\omega^3}$
ここで $\omega$は1の3乗根だから $\omega^3=1$.
また $v_1=\frac{-1}{3u_1}$のはずだから(なぜなら,その連立方程式を解いたから)
$v=v_1\omega^2$
となり,$u_1\omega$に対応する $v$ は
$u_1\omega^2$に対応する $v$ は
$v_1\omega$
である.したがって, $x=u+v$より方程式の3つの解は
$u_1+v_1=\sqrt[3]{1+\sqrt{\frac{28}{27}}}+\sqrt[3]{1-\sqrt{\frac{28}{27}}}$
$u_1\omega+v_1\omega^2=\sqrt[3]{1+\sqrt{\frac{28}{27}}}\omega+\sqrt[3]{1-\sqrt{\frac{28}{27}}}\omega^2$
$u_1\omega^2+v_1\omega=\sqrt[3]{1+\sqrt{\frac{28}{27}}}\omega^2+\sqrt[3]{1-\sqrt{\frac{28}{27}}}\omega$


ところが,方程式
$x^3+x-2=0$
の実数解 1 はすぐ見えるので,
$u_1+v_1=\sqrt[3]{1+\sqrt{\frac{28}{27}}}+\sqrt[3]{1-\sqrt{\frac{28}{27}}}=1$
のはずである.この3乗根2つをどう解決するか.
必ずできるという手順は無いのだが,これは次のような試行錯誤で解決するのが普通.


$u_1^3=1+\sqrt{\frac{28}{27}}$
$=1+\frac{2\sqrt{7}}{3\sqrt{3}}$
$=1+\frac{2\sqrt{21}}{9}$
$=\frac{1}{9}(9+2\sqrt{21})$
より,3乗して $\frac{1}{9}(9+2\sqrt{21})$ となる数を探す.3乗でルートは残るものだから,そのような数は
$a+\sqrt{21}$
のような形をしているはずである.実際3乗して
$(a+\sqrt{21})^3$
$=a^3+3a^2+\sqrt{21}+3a21+21\sqrt{21}$
$=a^3+63a+(3a^2+21)\sqrt{21}$
より, $\sqrt{21}$ の項に着目して,
$3a^2+21=2$
となる $a$ を見つければよさそうだが,これをこのまま解くと,
$3a^2=-19$
で, $a$ は虚数になってうまくいかない.これは
$u_1^3=\frac{1}{9}(9+2\sqrt{21})$
としたからであって,
$u_1^3=\frac{1}{18}(18+4\sqrt{21})$
$=\frac{1}{27}(27+6\sqrt{21})$
$=\frac{1}{36}(18+8\sqrt{21})$
のどれを使ってもいい.つまり
$3a^2+21=4$
$3a^2+21=6$
$3a^2+21=8$
と考えればいい.そして, $a$は整数であるとありがたいので,右辺が「3の倍数」となり,21を移項して3で割ったら平方数になってくれればいい.
さらに $\sqrt{21}$ のない項が$a^3+63a=9$の倍数より
$a$は3の倍数でなければならない.
まず右辺が3の倍数になるように3倍して
$3a^2+21=6$
あとは,この6の倍数を並べて,両辺を3で割る.
$3a^2+21=6$, $a^2+7=2$.
$a^2+21=12$, $a^2+7=4$.
$3a^2+21=18$, $a^2+7=6$.
$3a^2+21=24$, $a^2+7=8$.
この中で7を移行して平方数になるのは,
$a^2+7=8$
であるが,
$a=1$
は3の倍数ではない.
$3a^2+21=30$, $a^2+7=10$.
$3a^2+21=36$, $a^2+7=12$.
$3a^2+21=42$, $a^2+7=14$.
$3a^2+21=48$, $a^2+7=16$.
この中で7を移行して平方数になるのは,
$a^2+7=16$,  $a^2=9$
より,$a=3$ でつじつまがあう.


このとき, $\sqrt{21}$ のない項は
$a^3+63a=216$
つまり
$(a+\sqrt{21})^3=(3+\sqrt{21})^3$
$=216+48\sqrt{21}$
これはもとの分子 $9+2\sqrt{21}$ を24倍したものだから,
$u_1^3=\frac{1}{9}(9+2\sqrt{21})$
$=\frac{1}{9\times 24}(9\times 24+2\times24\sqrt{21})$
$=\frac{1}{216}(216+48\sqrt{21})$
$=\frac{1}{6^3}(3+\sqrt{21})^3$
したがって,
$u_1=\frac{1}{6}(3+\sqrt{21})$
$v_1=\frac{1}{6}(3-\sqrt{21})$
であり,たしかに
$u_1+v_1=\frac{1}{6}(3+\sqrt{21})+\frac{1}{6}(3-\sqrt{21})$
$=\frac{1}{6}(3+\sqrt{21}+3-\sqrt{21})$
$=\frac{1}{6}(6+\sqrt{21}-\sqrt{21})=1$
となって,つじつまがあう.

うー酸欠・・・


角度の3等分

1 件のコメント:

  1. a^3+“3a^2+√21”+3a21+21√21となっていますが、“3a^2√21”では?

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