2007年3月8日木曜日

AM変調と三角関数

うなりで,「AM変調」を思い出した.

「AM変調」はたとえばTBSなら 954kHz=954000Hz の振動数の電波を音声信号で強弱をつけている.
音声信号の山で電波が強く,谷で電波が弱くなるという原理で,まぁ簡単に言うと,電波の増幅器に供給される電源の電圧を音声信号で震わせると,出てくる電波が音声信号の通りに強弱するいう原理である.

以前テレビで,発光ダイオードの電源にマイクをつないで,光を音声で震わせ,その光を太陽電池で受けてアンプにつないで「光通信」というのを見たことがある.光のAM変調である.


AM変調は,音声信号の「うなり」を電波に加えるとも言える.
AM変調

さて,時刻$t$に対して,1000000Hz の電波が振幅1で
$\sin1000000t$
と表されているとする.(本当はω(=2π)を使ったりするが,それは定数なので話を単純にする.)
これの電源を振幅0.1 の音声,たとえば,1000Hz で震わせる.
$\sin1000000t\times(1+0.1\sin1000t)$
「1+」の意味は音声が1000Hzの山のとき,sin1000000の振幅が1.1になり,谷のときはsin1000000の振幅が0.9になる計算である.
この場合音声の振幅は最大で0から1まで許される.


さて,この変調された電波はどの程度の帯域をとるだろうか.0.1sin1000t を「うなり」と考えて,いくつかの波の合成と考えてみる.
$\sin1000000t\times(1+0.1\sin1000t)$
$=\sin1000000t+0.1\sin1000000t\sin1000t$
ここで積和公式
$\sin\alpha\sin\beta=-\frac{1}{2}\left(\cos(\alpha+\beta)-\cos(\alpha-\beta)\right)$
を用いて,
$=\sin1000000t-0.1\times0.5(\cos1001000t-\cos999000t)$
符号のプラスマイナスは位相が逆なだけだから,マイナスでも「波の和」と考えてよい.また cos は sin と90度位相がずれているだけだからこれも「波の和」である.
つまり 1000000Hz の元の電波に,音声信号の半分の振幅で999000Hzと1001000Hzの電波を加えてうなりを発生させたのが,「AM変調」と考えられる.
帯域は999000Hz~1001000Hzの2000Hz となる.つまり必要な音声帯域の2倍の帯域を占有する.

放送では使われないが,通信ではこの「うなり成分」だけを使う方式があり,「SSB」と呼ばれる.

そもそも
$\sin1000000t-0.1\times0.5(\cos1001000t-\cos999000t)$
において
$\sin1000000t$
の項には音声成分は含まれない.音声成分は音声の振幅0.1が含まれる.
$-0.1\times0.5 \cos1001000t$
$0.1\times0.5\cos999000t$
の2つの項である.

2つあるが,片方だけで音声は伝えられるので,たとえば 0.1×0.5cos1001000t の項だけで通信を行う方式が「SSB」という

AM放送では常に搬送波$\sin1000000t$ を出し続けるので,音声が無くても送信電力を消費し続けるが,SSBでは音声信号が存在するとき(項0.1×)だけ電波が発生するので,全体として効率がよいわけだ.
ただし受信側では,搬送波成分を加えないと音声が再生できない.

2012年12月3日追記>SSBの波形

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