2006年10月10日火曜日

本日の無酸素計算(波動関数)

息を止めてやる計算.

Aを振幅,xが位置,tが時刻のとき,複素数の定数kに対して波動関数は
$\Psi=Ae^{i(kx-\omega t)}$

波動方程式を扱うと,しばしば波動関数の複素共役が出てくるが,この波動関数の複素共役を求めてみる.ちなみに「共役」は常用漢字だが,本来は「共軛」と書く.牛車の軛(くびき)にあたる「実部」が共通で虚部が轅(ながえ)にあたる雰囲気.つまり共通の実部をもつ複素数が「共軛(きょうやく)」

さて,この波動関数を展開して,複素数の実部と虚部に分ける.
高校数学以外では,オイラーの関係式
$e^{ix}=\cos x +i \sin x$
を使うかな.


$k$は複素数だから,実数$a, b$に対し,$k=a+bi$ と書くことにする.

$\Psi=Ae^{i(kx-\omega t)}$
$=Ae^{i((a+bi)x-\omega t)}$
$=Ae^{i(a+bi)x-i\omega t}$
$=Ae^{iax-bx-i\omega t}$
$=Ae^{-bx+i(ax-\omega t)}$
指数法則で
$=Ae^{-bx}e^{i(ax-\omega t)}$
オイラーの関係式から
$=Ae^{-bx}\left(\cos(ax-\omega t) + i \sin(ax-\omega t)\right)$
これで虚部と実部に分けられたが,この式の意味をちょっと説明すると,
kが実数(つまり $b=0$)のとき,$e^{-bx}=e^0=1$ となり,sin と cos の項だけになる.つまり減衰も増大もしない波を表す.
kが虚数なら,$e^{-bx}$ の積が減衰や増大する波を表す.

さて,高校の数学では共役(虚部の符号が逆)は変数の上に横線だが,
波動では右肩に*をつける習慣のようである.
つまり $(2+3i)^* = 2-3i$.

$\Psi =Ae^{-bx}\left(\cos(ax-\omega t) + i \sin(ax-\omega t)\right)$ の共役は虚部の符号を変えるだけだから
$\Psi^{*} =Ae^{-bx}\left(\cos(ax-\omega t) - i \sin(ax-\omega t)\right)$
$\cos(-\theta)=\cos\theta$なので
$=Ae^{-bx}\left(\cos(-ax+\omega t) - i \sin(ax-\omega t)\right)$
$\sin(-\theta)=-\sin\theta$なので
$=Ae^{-bx}\left(\cos(-ax+\omega t) - i (-\sin(-ax+\omega t))\right)$
$=Ae^{-bx}\left(\cos(-ax+\omega t) + i \sin(-ax+\omega t)\right)$
オイラーの関係式で
$=Ae^{-bx}e^{i(-ax+\omega t)}$
指数法則で
$=Ae^{-bx}e^{-iax+i\omega t}$
$=Ae^{-bx-aix+i\omega t}$
$-1=i^2$で書き換えて
$=Ae^{i^2bx-aix+i\omega t}$
$-i$でくくって
$=Ae^{-i(-ibx+ax-\omega t)}$
$=Ae^{-i(ax-ibx-\omega t)}$
$x$でくくって
$=Ae^{-i((a-bi)x-\omega t)}$

$k=a+bi$ の共役 $a-bi$ を $k^{*}$と書けば,
$=Ae^{-i(k^{*}x-\omega t)}$

つまり, $\Psi =Ae^{i(kx-\omega t)}$の共役はi の符号を変えて共役にして,kの共役もとるという
「なぁんだ,やっぱりそうなるじゃん(^o^)」
という至極アッッッタリマエの形となる.
$\Psi^{*}=Ae^{-i(k^{*}x-\omega t)}$

以上,アタリマエの確認.

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