2009年4月30日木曜日

直線は幅のない長さである

このタイトルは,ユークリッドの原論にある,「直線の定義」である.

ベクトルの授業の最初に
 「ベクトルの和を描け」
というのがある.升目の中にいくつか矢印があり,それをベクトルとみなして,和のベクトルを表す矢印を描くというものである.

「先生!テストでは直線じゃないとまずいですか?」
という質問.たぶん『まっすぐじゃないとまずいか』という気持ちで聞いたのだろうけど,それを承知で
「え? 円とか放物線で矢印を描くの?」
なんて聞き返す.
「そうじゃなくて,定規を使わないで,ちょっとくらい曲がってもいいですか?」
「ぜんぜん平気.そもそも,真の直線は描けない.直線には幅はないんだよ.」
「えー,幅がないなら描けないのでは?」
「う ん,筆記具では描けない.筆記具で書いたら,太さがあるから,線ではなく面になるよね.もし描くなら,カッターナイフで紙に切れ込みを入れ,その切り口な ら幅がないから直線かなぁ・・・あ.それが曲がっていない保証はないな.みんなの持っている定規を無限につないだら,本当にまっすぐかなぁ.半径10mく らいの円周でも,10cmくらいの長さならまっすぐに見えるよ.きっと.」

つまり,半径10mの扇形の弧と,弧に対応する弦との間の距離が,定規のふくらみであるから,定規の長さ=弧の長さ0.1m のときのふくらみを計算してみる.
扇形の中心Oと弦の中点Mを結ぶ直線と,弧との交点Pに対し,MPが,直線からの円周のふくらみである.
 MP=半径-OM
扇形の半径r,中心角θならOM=r cos(θ/2) なので,
 MP=r-r cos(θ/2)
ここで,半径r=10m,弧 rθ = 0.1m とすれば,
 θ = 0.01,
 θ/2 = 0.005
 MP=10-10 cos(0.005)=0.00012499974
だから,半径10mの円の10cmの弧は,直線より0.12499974mm ふくらんでいる.目で見てはわからんな.

「本当に正確な直線なんか描けないのだから,少しぐらい曲がってても大目に見るよ.」
はからずも,数学が「概念」である説明につながった.数学は概念を表現する,人間の作り出した抽象的な言語である.

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