sin (正弦 sine) に対して cos (余弦 cosine) があるなら,tan (正接 tangent) に対して cot(余接 cotangent)は?
もちろん,余接(cotangent)もある.
で,その cot は tan の逆数なので,別に名前を知らなくていいということで,高校の教科書からは消えた.
それだったら,cos=√(1-sin^2),tan=sin/cos なので,cos,tanも無くていいじゃんと思うけど,まぁそんくらいは残したわけだ.
逆数に名前がついてるなら,sin,cos の逆数にも名前がついているのでは?
もちろんある.
1/cos=sec (正割 secant シーカント,second 秒・第2じゃないよ.カタカナではローマ字読みのセカントと書くことが多いが,発音はsiikant)
1/sin=cosec (余割 cosecant. 3文字だと余弦cosと同じになるのでこれだけ5文字)
secant とは円の割線のことをいう.
円の割線とは円を横切る直線のこと.
正弦,正接,正割は円の弦,接線,割線に由来する言葉で,江戸時代「割円八線表」という数表が出版され,そこに出ている.
あれ?正弦・余弦,正接・余接,正割・余割 だと6個しかないのに,「八線」?
実はさらに正矢(せいし)・余矢(よし)というのもある.
これは 1-cos が正矢 versine,1-sin が余矢 vercosine.
これで8個
havsin とか versine の半分もある.
それにしても,tangent→接線,secant→割線 はわかりやすいが,弦は英語で code ある.それがなぜ sine?
これには諸説があるようだが,ラテン語の(湾 sinus )が起源らしい.>三角関数の歴史
中心O半径1の四分の一円の扇形(この形を江戸時代、「象限」といった)OABに,角AOXを作りその直線(動径)OXで正弦、正接、正割、正矢を考えると,名前の由来が理解できる.
動径OXと円との交点Pから OA に垂線PSを下ろし,その垂線PSの長さ(弦の半分)を正弦という.
このとき AS を弦にかかる矢のようだから,正矢という.
Aにおける円の接線と動径OX の交点をT としたとき,接線の長さ AT を正接という.
そのとき,円を切る「割線」OT の長さを正割という.
では余~(co~)とは?
扇形OAB にもう一つの角BOX が余っている.
つまり「直角-角AOX」 である.
この余った角を「角AOX の余角」という.つまり,直角三角形でいえば、もう一つの鋭角も余角である.
この余角で,同じように正弦,正矢,正接,正割を作ったのが,「余弦,余矢,余接,余割」.
江戸時代は現代のようにボタン一つで計算できないから,「八線表」なる数表を現場で持ち歩き,計算に使った.逆数どころか引き算(正矢とか)までも.
そして,伊能忠敬は測量に使って,地図を作った.
現代では計算機のおかげで逆数などちょちょいのちょい.逆数の三角比の名前は知らなくてもよい.
25年前の数学IIIでは tan の微分は sec^2 という公式だったけどね.つまり 1/cos^2
せいぜい「分数表記が不要」程度の効用しかない.
三角関数はたくさん公式が出てきて困るけれど,結局は円の中に出てくる線の長さの比だから,よく考えれば忘れてもなんとかなる.
加法定理くらいかな,まじめに覚えないと,なんとかならないのは.
sin(α+β)=sinα cosβ+cosα sinβ
「さすってこすって,こすってさすって」
自分の高校時代は回転を表す行列の積で覚えたし,今の高校3年生までは,複素数のド・モアブルの定理で簡単に覚えられるが,その両方がなくなった高校2年生以下はほんとうに「さすって・・・」もらわないと.
前の学校(進学校)でやったら
「思いっきりうけたけど,女子に恥ずかしくて声を出して笑えない.腹がよじれて苦しい」
との苦情(?)が・・・
苦情が出たといえば
√2=1.414213562 いよいよ兄さんゴムつけた
「先生の授業はセクハラです.」
今の学校では,大盛り上がり
linked: 1 2
2009年10月31日 追記.
「正割」なんか使わないと思っていたら,電離層の反射周波数の公式に「正割の法則」なるものがあった.fm=fc secθ>1アマ国試
高校の教科書には「正割」なんか出てこないので,初めて聞くとたぶん,ものすごく高級そうに聞こえるな.でも,ただの三角比である.「法則」などという大それたものではない.
どうせなら両辺を cos 倍して,fc=fm cosθ にして,「余弦の法則」とでもすればいいのにと思うが,一度「~の法則」なんてなったら,そのネーミングの変更は難しい.
現在,「正割」なんて語は,これくらいしか出てこないだろう.
2019年12月2日 追記.
「正矢」は鉄道の保線で使うようである。数学では「せいし」と読むが、保線では「せいや」だそう。
「新幹線の東京∼鹿児島中央間約1325kmの一点一点で,測量によって設計値との差を求めることは,建設時はともかく,列車の走る中で定期検査として実施するのは事実上不可能である.そこである長さの弦を基準とし,その中点からレールまでの離れをゆがみと定義する.この手法を「正矢(せいや)法」,ゆがみ量を「軌道狂い」と呼ぶ.」保線に携わるFBの友人から教えてもらった。
>車体装架型軌道検測装置の開発
正矢 1-cos など何に使うのだろうと思っていたけれど、たしかに、弧と弦だけからカーブの大きさを測定するには、正矢を測るのが早い。江戸時代で廃れた言葉だと思ったら、現代にも生きていた。
そうそう、そういう風なことだと、楽しく覚えるんだけど♪
返信削除うちは普通に「ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ」でした。
返信削除最近の語呂合わせっておもしろいですね^^
でも「それしか覚えていない」ともいわれる.「何がこすってさすってなんだろう」って.
返信削除覚える必要は全然なく
返信削除イチバン自然な 導出法 について メール 致しました。
誰にも明白な 回転 SO(n) (n=2)が
只今くろべえ様が 記述中の 一番易しい 線型 な
写像 である こと のみ を 使い。
曲がった空間M(多様体)上の点p に線型空間が存在するとき,それをTp で表して,p がM全体を動いたとき,まとめて TM と書く.
返信削除の記載を 覗き
M=SO(n)の恒等写像 眼には眼 歯----e--->歯
における接空間 Te(SO(n)) を 視たい!!!
dim(Te(SO(n)))=2^2-3,3^2-6,.........
Te(SO(n))
ありがとうございます.
返信削除はじめまして。
返信削除とても分かりやすい説明でした。
私は、かねてからsin π などと、π(パイ)で表記する場合は、角度ではなく、円周ではないかと思っていたのです。それとぴったり符合します(私の不確かな記憶では、私の高校ではあくまで角度でsinθのθに当たる部分を説明していたように思います)。
つまり、こういうことです。
半径1の円をxy座標のグラフに書きます。式にするならば、(sinθ)^2+(cosθ)^2=1です。^2は2乗の意味です。
一方、円周の公式は、円周の長さ=2πr(rは半径)で表されます。rは半径ですから、r=1を代入すると、2πになります。つまり、円周の長さ全体の長さは、2πです。
したがって、例えば、sin(π/4)の場合は、「円周の半分のπ」の「4分の1」という意味になります。
そのπ/4という円周の一部をsinという関数により、直線に変換するのが、πを使う場合のsin関数だと思うのです。
くろべえさんの図で言えば、円周の一部APを直線PSに変換するのがsin関数ということになります。
円周の一部APをOSに変換するのがcos関数ということになります。
ちなみに、tan(正接)は、くろべえさんの図で言えば、円周の一部APを直線ATに変換する関数ということになります。
2πは確かに360度に照応するわけですが、例えば、sin45°の場合は、45°の角度をsin関数で、直線に変換するという話になり、意味内容は違います。
なお、図にXがなかったのですが、これは何か深い意図があるのでしょうか?私は自分のイメージで勝手に補って読んだのですが、合っているのか不安が残ります。
それから、くろべえさんの図でも矢の位置が伺えるのですが、正矢の位置からすると第四象限もあったほうがより弓の形が分かりやすいように思いました。
くろべえさん紹介の記事に「約 2000 年前 ギリシャで弓の弦の長さを求める問題に、三角法の表が作られました。•A.C.510 アリヤバーター Aryabhatiya に半分の弦 ardha-jya (jya-ardha)として 正弦 sin の考え方が書かれました。」という記載があります。
> 図にXがなかったのですが
返信削除書き忘れですね.ありがとうございます.
> 角度ではなく、円周
全くそのとおり.
角度=半径1の弧長
です.
sin弧長AP=弦長PS
1周360度は,太陰暦で 1年360日に由来しています.>角度
固定相場の昔,1ドル360円だったのはたまたまでしょうが(笑
弧長1.57 の時の 弦長PS=1 を
sin1.57=1
と書くわけです.
特に,数学III の微積分は「角=弧長」の感覚がないと,真の理解につながらないと思います.
極限 x→0 のとき,(sin x)/x→1 は 弧長AP=x と弦長 PS=sinx がいくらでも等しくなることを示しています.弦長と弧長の比=弦長/弧長→1
sin3=0.14
sin2=0.91
sin1.57=1
sin1.00=0.84
sin0.50=0.48
sin0.40=0.39
sin0.30=0.30
自分は授業では,sinπ ではなく sin3.14 と書くことが多いです.>研究授業
角速度が 2π×振動数 なのは,まさに角を弧長で測っています.>宇宙エレベーター
ただし,弧長をどう定義するか,sin cos をどう定義するかは,テクニカルな問題があります.>循環論法
lim(sinx)/x =1
返信削除x→0
のことですね。
一般には、はさみうちの手法で証明するのでしょうが、テーラー展開ができる人ならば、テーラー展開して証明するのが速いように思いました。厳密な証明になるかは分りませんが、直観的な把握はできると思います。
360日の部分は、確かくろべえさんの記事だったと思いますが、読んで面白く感じたことがあります。
結局2πを1000°にしようが何とでも定義できるわけで、それを360°にしたのはくろべえさんの仰るとおりのように思います。
ありがとうございました。
すみません。くろべえさん。先ほどまでゆっくりした時間がとれないままコメントしてしまいました。あまり言い訳になりませんが。
返信削除http://kurobe3463.blogspot.jp/2004/10/circular-reasoning.htmlを全部観ていなかったのです。
くろべえさんがマクローリン展開を書かれています。私の言っていることと同じですね。ご存じない方のために書いておくと、テーラー展開のf(0)の場合を特にマクローリン展開とも言います。
私が勉強した数学者の本はテーラー展開と書いてあったので、テーラー展開と書いたまででくろべえさんに反抗したものではありません。
ご存じのないかたのために書いておくと、
sinxはテーラー展開すると、sinx=x-(x^3/3!)+(x^5/5!)-(x^7/7!)+・・・です。
ただし、^は乗の意味で、!は例えば、3!ならば、3×2×1のことです。
最初にxが出てきます。これが、くろべえさんの本文記事の図で言うと、孤長APに相当します。ただし、xですから、APが変数扱いで自由な値をとります。
xより後の項 -(x^3/3!)+(x^5/5!)-(x^7/7!)+・・・の部分は図のイメージとしては、段々と孤長APから弦長PSに近づいていっているイメージを持てばよいわけです。最終的にPSが極限値となるわけです。極限値が分からない方はネットなどで調べればすぐに分かると思います。その極限値がsinxということになります。
sinx/xを直接マクローリン展開することも考えられるところですが、そうしないで図で説明すると、分母のxは、孤長APを意味しています。sinxは、弦長PSです。このxを限りなく0に近づけると、つまり、孤長APを限りなく0の長さにすると(つまりは、円周の長さを限りなく0に近づけると)、sinx=弦長PSに限りなく接近していきます。そして、同じ長さになることでしょう。
それを是非イメージしてみて下さい。
そうすると、sinx/x=δ/δ=1となることが理解できるのではないかと思います。δはデルタと読みます。
加法定理は私の高校だと「咲いたコスモス コスモス咲いた コスモスコスモス 咲いた咲いた」で覚えました.元素周期表やイオン化傾向も高校(というか先生?)によって覚え方が少し違ったりしますね.ちなみにうちの高校では,水兵リーベ僕の船.なーに間がある シップすぐくらぁ 閣下スコッチ・バクローマン テコにドアがゲアッセブルク,でした.化学系ではありませんが,今でもたまに役に立ちます.
返信削除> 今でもたまに役に立ちます.
返信削除高校の「普通教育」はどの教科も「なんのため?」という疑問を持たれますね.それで,受験と関係ない科目が捨てられたりする.
自分は「なんのため?」と聞かれたらしばしば,「念のため」といいますw
学んだことが一生役立たないことは無いと思いますし,かならず豊かな人間を形成する一助となっているはずです.
未来を見通す力となるのは占いや呪術ではなく,豊かな教養に裏打ちされた理性です.
高校の時に先輩が元素周期表を縦に覚える方法がある、と言っていたんです。
返信削除しかし、秘法らしくなかなか明かしてくれなかったのです。
それで、やっと教えてくれたのですが、秘法のわけが分かりました。
卑猥だったのです。
He Ne Ar Kr Xe Rn ならば、「ヘイ、ねーちゃん、ある日、暗闇、キスの連続」(Arはアルゴン、Xeはキセノン、Rnはラドン。Rnは少し無理がありますね。)
F Cl Br I At ならば、「ふっくらブラジャー愛の跡」
O S Se Te Po ならば、「押すと精子、鉄砲」
横やり失礼いたしました。
他のは1つ除いて覚えていないんです。それは、これは無理あるよなぁと思ったやつで、かえって印象に残ったみたいです。
返信削除C Si Ge Sn Pb で、「釧路のゲイバーすぐ訛る」 でした。
Pbは鉛です。だから、訛るになっています。ここだけCとかSiとかではなく、日本語を対象にごろ合わせがされていて印象に残ったようです。
ただ、私はあんまりごろ合わせを重視していませんでした。歴史は年号を覚える際にごろ合わせを使ったのですが、あくまで補助的なものです(卑猥な覚え方ではありません)。英語とかはごろ合わせは使いませんでした。ごろ合わせで覚えると瞬間に単語が出てこないので役に立たないからです。
やはり理解が大切と思います。
加法定理は、ベクトルとそれに関連してsin、cosの微分がイメージできる人ならば(sin cosの微分もベクトルの微分でイメージすることができます)、次のURLが分かりやすいのではないか?と思いました。
くろべえさんが2004年10月4日月曜日「三角関数 sin cos tan」の記事で仰る「回転を表す行列の積」というのもこのベクトルを数式化したものでしょうか?
http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/category/sankakukansuu/kahouteiri/henkan-tex.cgi?target=/math/category/sankakukansuu/kahouteiri/kahouteiri-3.html
>回転を表す行列の積
返信削除行列そのものですよ.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9E%E8%BB%A2%E8%A1%8C%E5%88%97
http://www.wolframalpha.com/input/?i=%28%28cos+a%2C-sin+a%29%2C%28sin+a%2Ccos+a%29%29%28%28cos+b%2C-sin+b%29%2C%28sin+b%2Ccos+b%29%29
実は、私が一つ前のコメントで引用した金沢工業大学のURLによると、別のところで、回転行列は加法定理から導かれることになっているのです。http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/category/gyouretu/henkan-tex.cgi?target=/math/category/gyouretu/kaitengyouretu.html
返信削除その加法定理が、上記ベクトル証明により導出されています。
もし、一つ前のコメントのベクトル証明が、回転行列と全く同じということになると、トートロジーになってしまうのではないでしょうか?
ベクトル→加法定理→回転行列というのが論理の流れとして正しいのではないでしょうか?
Wikipediaha,少なくとも誰にでも編集できるしろものですから、信頼性に劣ると思います。もう一つのURLはイマイチ信頼性がよく分かりませんでした。大学とかではなさそうですが…。
くろべえさんの場合は、回転行列を加法定理以外から導かれているのでしょうか?
私の考えなのですが、金沢工業大学のURLを読む限り、ベクトルから、加法定理と回転行列が同時に証明されるという趣旨ではないでしょうか?
返信削除ですから、ベクトルが両方の証明になるのであって、加法定理と回転行列はお互いに証明方法とはならないのではないかと思うのです。
説明によっては回転行列を加法定理の先に使い、説明によっては加法定理を先に使うこともあるのですが、根底はベクトルなのではないかと。実体としては同時証明みたいな感じだと思うんです。
ちなみに、ド・モアブルでは加法定理の証明にならないということを述べている人もいます。http://okwave.jp/qa/q5961309.htmlのコメントの最後の人がそうです。
ド・モアブルの定理は加法定理から導かれるので、ド・モアブルでは加法定理の証明方法にはならないという意見ではないかと思います。
東大の入試で加法定理の証明が聞かれたことがあるみたいですが、こういう問題は、ド・モアブルで答えるならば、ド・モアブルの定理を加法定理以外で導出するところから始めないといけないのでしょうかね。
くろべえさんの記事はそういう趣旨を含んでいるのかな?と思いました。
証明ではなく,「覚え方」ですよ.
返信削除sine(正弦)の語源はアラビア語のようです。
返信削除もともと角2θの扇形の弦の長さの半分をθの半弦としていたのが、
正弦と名前が変わった、それがラテン語に音訳されたのがsine
「数学記号の歴史」という本に載っています。
たぶん本当だと思います