2007年3月2日金曜日

「うなり」と三角関数

振動数の近い2つの音を同時に出すと「うなり」という現象が起きる.振幅の山と山が重なれば強めあい,山と谷では弱めあう関係である.

振動数100Hz と 110Hz の音を同時に出すと0.1秒ごとに音が強くなったり弱くなったりする.
つまりうなりの振動数は 110-100=10Hz ということになるが,これは三角関数の加法定理から計算される「和積公式」で簡単に説明がつく.高校数学のレベルである.

和積公式とは
$\sin A +\sin B=2\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}$




100Hz と 110Hz が合わさると,時刻の関数$t$に対して,
$\sin 100t +\sin 110t=2\sin\frac{100t+110t}{2}\cos\frac{100t-110t}{2}$
$=2\sin 105t \times \cos 5t$
となり,105Hz の音を 5Hzの波で強弱をつけることと同じになる.
これだと,うなりの振動数5 は,元の振動数の差110-100=10 の半分しかないんじゃないかという気がする.
うなり

ここで,「cos 5t 倍」をよく考える.
cos がプラス側の山のときは,sin505t の cos 倍の強さ.
cos が0になる瞬間は,sin505t がどんな値でも強さ0
cos がマイナス側の山のときは,sin505t は -cos 倍の強さ.
で sin 105t が強弱する.
つまり sin105t は,cos5t のプラス側とマイナス側のそれぞれで強くなるわけだ.

式を見ると cos5t 倍だが,強さはその 2倍の振動数10 で「強さの山」が来る.
「マイナス側でも強くなる」というのが味噌である.

ということで,うなりの振動数はちょうど差の 110-100=10 になるといえる.


ちなみに,音階のドの1.5倍の振動数のソを重ねる(完全五度)と
(1+1.5)÷2=1.25 の振動数は間のミ
うなりである差の 1.5-1=0.5 は1オクターブ下のド.
となり,ドミソがよく響くのはこういう理由.

ソの完全四度上のドは4/3倍だからうなりは
4/3-1=1/3 の振動数はドの2オクターブ下のド

ドの長三度上のミは5/4倍だからうなりは
5/4-1=1/4 の振動数はドの2オクターブ下のド
になる.

倍音成分の多い楽器ではなかなか難しいが,倍音成分が少なく波形が正弦波に近い笛(フルートとかリコーダー)のアンサンブルでは,うなりのベース音(ドとソがなっているとき,1オクターブ下のド)が聞こえることが多い.

AM変調と三角関数



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